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誤解を恐れずに言えば、福岡第一高校(福岡県)を倒す方法は轟琉維(3年)を止めることだ。しかし、まだどのチームもそれを遂行できていない。
開志国際高校(新潟県)と対戦した今年のインターハイ決勝、轟は両チーム最多となる28得点を記録しただけでなく、2点ビハインドで迎えた最終局面では、冷静にノーマークの味方へパスをさばいて値千金の逆転シュートを演出した。この活躍には、残り5秒で試合をひっくり返された敵将の富樫英樹コーチも脱帽していた。
「やっぱりあの8番(轟)に尽きるかな。ガードの力というか、リーダーシップを含めて『自分が勝たせるんだ』という思いが向こうの方が1つ上だったかなと」
ウインターカップ県予選の決勝リーグでは、福岡大学附属大濠高校が1−3−1のゾーンディフェンスを敷き、試合開始から2メートル級の選手3人が168センチの轟に襲いかかった。だが、福岡第一の司令塔は3ポイントシュートでチーム初得点を決めると、次の攻撃では相手の間をくぐり抜けてゴール下でレイアップを沈めた。立ち上がりの2本で相手の奇襲を攻略し、試合も83−76で勝利。福大大濠の片峯聡太コーチは試合後、敵ながら轟のプレーぶりを評価した。
「うちの13番のガード(湧川颯斗/3年)と14番のエース(川島悠翔/2年)にもう少しドッシリと構えてやってもらいたかったですけど、やっぱりまだまだ轟くん方がドッシリしていますね」
轟は自身にとって最初で最後のインターハイで見事優勝を成し遂げ(1年次は未開催、2年次は県決勝で敗退)、日本一のポイントガードになった。持ち前のスピードとテクニックで相手を翻弄し、シュートとパスのバリエーションも豊富な魅惑の司令塔は、圧倒的な存在感でコート上を支配する。現在はディフェンス力にも磨きをかけ、より非の打ち所がない選手へと成長を遂げた。
だが、ウインターカップに関しては轟個人としても昨年の借りを返さなければならない。前回大会の福岡第一は、帝京長岡高校(新潟県)に敗れて決勝進出を逃した。当時の試合は残り40秒で2点ビハインドという試合展開。この状況で同点を狙ったシュートを放ったのは轟だった。しかし惜しくもリングに嫌われ、最後は61−67で終戦。「しっかり決め切らないといけなかったんですけど、 自分の力不足でシュートを外してしまいこのような結果になってしまいました。(先輩たちには)本当に申し訳ないと思っています」と、轟は力のない表情で振り返った。
「今年は全員が点を取れるようなチームを作っていきたい」と語っていた轟だが、一方で「自分が大事なところで決めるべきショットを決めきれるような選手になりたい」とも話していた。新チームがスタートした当初から宣言していた目標は、「インターハイとウインターカップの2冠」。冬の王座獲得までの道のりでは、帝京長岡と対峙する可能性も十分にある。自らのプレーで再び日本一へ導くため、高校No.1ポイントガードは最後の戦いに挑む。
文=小沼克年
写真=伊藤大允