2022.11.28

福岡第一、福大大濠がW杯に向けて得た手ごたえと課題…U18トップリーグ男子全勝対決

16得点7リバウンドの活躍で総理に貢献した福岡第一の轟 [写真]=日本バスケットボール協会
バスケットボールキング編集部

前半の貯金を生かした福岡第一が初代王者に

U18日清食品トップリーグ2022(男子)」は11月26日に最終日を迎え、国立代々木競技第2体育館では4試合が開催。最終試合にはともにここまで6戦0敗と無敗同士の福岡第一高校(福岡県)と福岡大学附属大濠高校(福岡県)が激突した。

 ケガのため先週の試合に欠場した福大大濠の川島悠翔が復帰し、互いにフルメンバーでの対戦となったこの試合、12月23日にスタートする「SoftBank ウインターカップ2022」の組み合わせが11月24日発表されたこともあり、その優勝争いにも直結するかもしれない注目マッチアップだ。

 ティップオフ直後に主導権を握ったのは福岡第一だったが、中盤の粘り合いから終盤には川島悠翔のスリーポイントシュート、湧川颯斗の速攻で福大大濠は逆転に成功。19−18の1点差で第2クォーターに。

 しかし、第2クォーターに入ると福岡第一がオールコートのディフェンスに福大大濠のボール運びにプレッシャーをかけると、福大大濠のターンオーバーを誘発。一気にリードを広げて、前半を49−28とした。

福岡第一は前線から当たるディフェンスで主導権を握った [写真]=日本バスケットボール協会


 加えて福大大濠にとって予想外だったのは、第2クォーターで湧川(颯)が右足の負傷によりベンチに下がったこと。湧川(颯)はその後、コートに戻ることはなかった。後半はさらに厳しい戦いが予想されたが、エースがいない布陣にもかかわらず、福大大濠は粘りを見せる。第3クォーターを16−16にすると、第4クォーターには芦田真人、湧川裕斗の得点で追い上げ、この10分間は25−12と福大大濠が反撃に出た。それでも前半のリードを守った福岡第一が76−70で福大大濠に勝利。U18日清食品トップリーグの男子初代チャンピオンに輝いた。

ウインターカップをにらんでのそれぞれの思惑

 試合を振り返ると、ウインターカップが約1カ月後に控えることで、それに対する準備や狙いが見えてきた。

 福岡第一の今年の武器とも言えるオールコートに暴れまわるセカンドチーム。しかし、この試合には一切コートに出ることはなかった。試合後、福岡第一の井手口孝コーチは「ウインターカップでセカウンドチームが使えないケースがあるかもしれない。その準備をしておきたかった」と語り、スターターメインのゲームマネージメントを考えていたことを明かした。それもあり後半に足が止まったとも言えるが、記者会見で質問を受けた司令塔の轟琉維は「ほぼフルに試合に出るのは久しぶりでした。改めて自分たちの足を鍛え直す必要がありますね」と分析。ウインターカップまでの課題に挙げた。

 また福大大濠の戦い方についても、ここまでマンツーマンディフェンスとゾーンディフェンスのチェンジングを使って試合を進めていたが、この日はゾーンディフェンスを使ったのは第4クォーターの終盤のみ。井手口コートは「それはウインターカップを意識した戦い方でしょう。大濠さん以外のチームもウインターカップの組み合わせが決まってから、戦い方を変えてきているチームはあった」と語った。

 福大大濠の片峯聡太コーチは湧川(颯)が抜けた苦しい状況からでも粘れたことを「収穫だった」と、試合後のメディア対応で語っている。福岡第一との対戦では「40分の中であそこまで大きな穴ができてしまうと勝負にならない」と前半を反省しつつ、「あの場面では(福岡第一のプレッシャーディフェンスに対して)ガードを鍛えようと思っていた。まだまだフィジカルもスキルアップもしなければ。そういう現実を見られたので、しっかりと準備したいと思う」と、その狙いについて言及した。

湧川(颯)が抜けたあとのメンバーで福岡第一に迫れたことは収穫と片峯コーチ [写真]=日本バスケットボール協会


 新たに始まったこの大会について、「自分たちの現在地を見るために非常に有意義だった」と語った片峯コーチ。一方の井手口コーチは「学校が福岡にあるので、レベルの高いチームと試合するチャンスがなかなかない。こういう機会をいただけるのはありがたい」と、同様にウインターカップへのチーム作りに大切な大会だったと振り返った。U18日清食品トップリーグで得た手応えと課題を持って、1カ月後に迫った冬の本番へ準備を進める。

文=入江美紀雄