Bリーグ公認応援番組
『B MY HERO!』
バスケットボールキングのコンテンツとしてBリーグ開幕前の恒例となっている「JBA審判グループに聞く!」。この企画は来るシーズンから採用される新ルールの解説やJBA審判グループの取り組みについて紹介し、リスペクト文化醸成のためにスタートした。今回で5年目を迎えるが、本編に入る前にレフェリーとしてパリオリンピックに参加した加藤誉樹氏のインタビューをお届けしたい。東京オリンピックに続いて2度目の五輪レフェリーとなった加藤氏は日本のレフェリーを代表しただけでなく、テーブルオフィシャル、バスケットボールに携わるすべての人たちを代表してパリ五輪のコートに立ったのだ。
文・取材=井口基史
――パリ五輪を終えて1カ月以上たちますが、オフはとれましたか?
加藤 昨シーズンのBリーグが終わり、すぐにバスケットボール・チャンピオンズリーグ・アジア(BCL ASIA)、オリンピック最終予選(OQT)、パリ五輪と、レフェリーをする試合が続き、ありがたいことに夏も忙しくさせてもらいました。少し休みをもらい、今はモチベーション高く、新シーズンに向けてガンガンにトレーニングをしています。
――日本から多くのファン・ブースターが活躍を見守っていました。
加藤 日本時間では深夜か早朝でしたし、4thレフェリーの発表はなかったのですが、多くのかたに応援をいただいていたのは感じました。全国のレフェリーを代表して、あの場に立てた事を光栄に思います。井口さんもXでの広報活動ありがとうございました!
――ニッポンのタカキ・カトウがビッグゲームにいてみんな大盛り上がりでしたよ!
――パリ五輪のコートに立つまでの過程を教えてください。
加藤 具体的には下記のプロセスを経て、パリ五輪選出に至りました。FIBA(国際バスケットボール連盟)の選考は、強豪国や五輪出場国のレフェリーだけが選ばれているわけではなく、個人の能力を評価されて世界の舞台でレフェリングしている方も多くいます。もちろん出身大陸ごとのレフェリー数のバランスは考慮されますが、アメリカ大陸やヨーロッパ出身レフェリーだけで担当するということではありません。今大会にユーロリーグレフェリーはいませんでしたが、NBA、Gリーグ、WNBAとFIBAの両方で活躍するレフェリーも選出されていて、世界最先端を知るレフェリーたちと過ごすことは貴重な経験です。
【パリ五輪レフェリー選考プロセス】
●ロングリスト選出:FIBAより候補者40名を指名
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●13週間準備プログラム:40名による準備期間
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●五輪レフェリー最終選考:FIBA U19ワールドカップ2024およびオリンピック最終予選にて審査
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●五輪レフェリー決定:パリ五輪レフェリー30名を選出
――パリ五輪レフェリー決定の瞬間は?
加藤 パリ五輪のレフェリーに選ばれるために、個人的には完全にコミットして準備したつもりです。13週におよぶ準備プログラムでは、実際に起きたケースを、判定とレフェリングの観点からレフェリー自ら英語のディスカッションを行うなど、入念な事前準備が欠かせませんでした。私は準備プログラムを受けたあと、OQT(ラトビア・ラウンド)で実際の試合をレフェリングし、その試合での審査を経て、日本に帰る飛行機の機内でパリ五輪レフェリー決定を知りました。
JBA審判グループ:候補者40名のロングリストに選ばれたときもそうでしたが、選出決定の報告を聞いた瞬間は、大変喜ばしいのと同時に安堵もしました。JBA審判グループだけではなく、日本全国のレフェリーやテーブルオフィシャル、バスケットボールに携わるすべての仲間にとって誇らしいことだったと思います。
加藤 私はプロレフェリーですので、30名に選ばれるのか、正直なところプレッシャーはありました。全国のレフェリー仲間のためにも「選ばれないといけない」という気持ちもありましたし、ファン・ブースターからは「選ばれて当然」という期待があったと思います。私が選ばれたということは、日本の様々なカテゴリーで、レフェリー・テーブルオフィシャルなど、ゲームに関わる多くの関係者との普段の取り組みが評価されて、その結果として関係者を代表して選出されたと思っています。今回のOQTからパリ五輪を通じて、日本のレフェリーたちの判定能力や取り組みが、FIBAから高く評価されていることを、改めて実感しました。
――実際に担当する試合の割り当ては?
加藤 日本代表が属するグループの試合を日本のレフェリーが担当することはありません。例えばアメリカはバスケ王国ですし、素晴らしいレフェリーが多い国ですが、アメリカ代表がファイナルに進むかぎり、アメリカ出身のレフェリーがファイナルを担当することはないのです。レフェリーが担当する試合の通知は試合ごとで、オリンピックの場合は初日をのぞき担当試合のおよそ24時間前に、誰がどの試合を担当するかの割り当てがFIBAからアナウンスされます。クルーが決まった時点でスカウティングのミーティングを行い、試合に向けて準備をする、という流れです。
直近の数大会においては、実際の試合ではIRSオペレーターの役割もある4thレフェリーの位置づけが大きくなった印象です。ミーティングやスカウティングから参加するなど、4thレフェリーは今後のFIBA大会で重要度が増すポジションになっていくと思います。私も4thレフェリーを2試合担当しました。準備を全員で行い、コート上の3人をいかにサポートする重要な役割でした。実際にOQTでクルーを手助けできたシーンもあり、パリ五輪では難しい試合を割り当てされたことや、4thレフェリーとしても評価をもらえたことで自信になり、大きなやりがいを感じました。
(後編に続く)
日本人レフェリーの評価:大会期間中は常に評価を受ける立場です。レフェリングによっては評価が下がり、担当試合の割り当てがなくなる可能性が常にあります。いつ担当試合がきてもいいように、常に準備しておくメンタルの強さが、FIBAトップカテゴリーの大会を任されるレフェリーには求められると思います。淡々とコツコツと目の前の仕事をこなす、多くの日本人の長所とも呼べる姿勢は、FIBAのヘッド・オブ・レフェリーをはじめ、世界のレフェリーたちからも評価いただいていることも、皆さんに知っておいてほしい点です(加藤誉樹)。