2017.12.20

【NBA COLUMNS from LA】コービーの永久欠番セレモニーを綴ったスペシャルレポート

NBA史上初となる2つの永久欠番となったコービー[写真]=Getty Images
ロサンゼルス在住。1995年に渡米、現在は通信社の通信員として、MLB、NBAを中心に取材を行っている。

 12月19日(現地時間18日)、ロサンゼルス・レイカーズのホームアリーナ、ステイプルズ・センターの周りは、久しぶりに賑わっていた。

 レイカーズの伝説のアナウンサー、チック・ハーン氏の名がつけられたストリート“チック・ハーン・コート”を挟んだ向かいにキラキラと輝く大きなクリスマスツリーがあったり、クリスマスの前後だけオープンする野外スケートリンクで子どもたちやカップルが楽しそうにスケートを楽しんでいたりしているからではなかった。

 この日はチック・ハーン・コートを通行止めにして設置された“Kobeland”に詰めかけた多くの人で賑わっていたのだ。

 2016年4月14日(同13日)を最後にNBAのコートから去ったコービー・ブライアントが、永久欠番セレモニーでステイプルズ・センターに戻ってくる。それを祝ってこの日“Kobeland”というバスケット関連の遊びを中心とした小型遊園地が作られ、かつてコービーのプレーに一喜一憂したファンらが集まり、長い列を作って乗り物やゲームを楽しんでいた。

「kobeland」と名付けられた小型遊園地には、多くのファンが集まった[写真]=Getty Images

 そしてステイプルズ・センターのメディアルームの中はというと、まるでオールスターやファイナルの会場かと思うほどのメディアで込み合っていた。ワークルームの外に出ると、コーリー・ブラント(元レイカーズほか)、ルーベン・パターソン(元ポートランド・トレイルブレイザーズほか)、スタニスラヴ・メドベデンコ(元レイカーズほか)ら、昔のチームメートたちがコービーを祝うためにかけつけ、元チームメートとの久々の再会を楽しんでいた。のちにこれらのメンバーにビル・ラッセル(元ボストン・セルティックス)、シャキール・オニール(元レイカーズほか)、アレン・アイバーソン(元フィラデルフィア・セブンティシクサーズほか)、カリーム・アブドゥル・ジャバー(元レイカーズほか)ら数えきれないほどの元選手たちが加わった。

 ステイプルズ・センターが、こんなに活気に溢れたのはいつ以来だろうかと考える。おそらく、最後はコービーの引退試合となった昨年の4月。でもこの日はファンにとっては悲しい日でもあった。

 ファンが希望に満ち、レイカーズに熱狂したのは、2010年のファイナル以来か——。つまり、ステイプルズ・センターが賑わう時には、いつもコービーがいた。

 コービーが現役時代につけていた背番号は8番と24番。8番では3度、24番では2度レイカーズを王者に導いた。シャキール・オニールとの2本柱で築いた黄金期、パウ・ガソルとレイカーズを支えて作った黄金期。2つの黄金期を築いたコービーを称えて、レイカーズは両方の番号を永久欠番にすることを決めた。永久欠番が与えられた選手はレイカーズで10人目、1つのチームで2つの番号が永久欠番になったのはNBAでは初めてのことだ。  

 試合前に会見場へ現れたコービーは、「壁に(自分の背番号が永久欠番として)かかることはこの上ないこと。レガシーは重要だ。しかしレガシーでもっと大切なことは、次の世代に影響を与えるということだ」と言った。
 子どもの時からレイカーズの伝説の選手を見ては夢を描いてきた。レイカーズのユニフォームを着てからは、アリーナに掲げられている永久欠番を見て自らを動機づけてきた。だからこそ、次世代へ繋げることの大切さを強く感じている。

試合前の会見にて。現役時代と変わらぬ精かんな表情で語るコービー[写真]=Getty Images

 ハーフタイムで8番と24番のジャージーがアービン“マジック”ジョンソン(元レイカーズ/現バスケットボール運営部門代表)やウィルト・チェンバレン(元フィラデルフィア・ウォリアーズほか)、エルジン・ベイラー(元レイカーズ)らのジャージーと同じ位置に掲げられたのを見届けたコービーは、「自分の前に永久欠番になった偉大な選手たちがいなければ、今の自分はなかった」と言い、「痩せた高校生の自分を信じてくれた」レイカーズがあってこそ自分がここまでなれたことを挙げた。そしてこのセレモニーを「ここにいる次の世代のためのもの」と話し、横で見ていたレイカーズの現役選手らを指した。最後には「ファンの期待のお陰で、時には気の向かない練習にも取り組めた」と感謝した。

 実はこのセレモニーは、レイカーズの選手のみでなく、ウォリアーズの選手も途中から加わり見ていた。

 ハーフタイムは通常ロッカールームで前半のビデオを見直し、後半への作戦を確認し合う大切な時間だ。しかしウォリアーズのスティーブ・カーHCは、「史上最高の選手の1人の永久欠番セレモニーをやる時に私たちはそこにいる」と話し、この日に限っては、作戦会議ではなく貴重な機会を持たせることに決めた。

 そして、それは現役選手たちに大きな影響を与えることになった。

 試合後、ケビン・デュラントは「あれだけのレジェンドや元チームメートがコービー1人のために集まるなんて凄い。今日はロサンゼルスの人達がみんなハッピーになっていた。日々の努力の結果、あんなふうに称えられるというのを目の当たりにしてモチベーションになった」と真のレジェンドとは何かを再確認した様子。またクレイ・トンプソンは「コービーの永久欠番セレモニーを見られるという幸運に恵まれて良かった。セレモニーの場にいられたことは、僕らみんなにとってモチベーションとなった。あれだけのレジェンドらが集まって、いかにコービーがみんなから敬意を持たれているかがわかった。いつか自分もあんなふうになりたい」と希望を膨らませた。

 またコービーから声をかけられハグをしたレイカーズのルーキー、ロンゾ・ボールは「素晴らしかった。2つの番号が永久欠番になった。この場にいられたことは絶対に忘れない」と話し、「彼が僕らを誇りに思えるようにしたい」と意欲を燃やした。

 コービーは、これまでコート上のプレーによって人々を励まし、奮い立たせてきた。その姿は、今でも多くの選手やファンの脳裏に焼きついている。
 
 アリーナの壁にかかった8番と24番のジャージーを見て、今度は誰が永久欠番セレモニーに臨み、次世代へレガシーを残していくのか。

 いつ訪れるかわからない未来を楽しみにしたい。

文=山脇明子

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