2020.12.14

マブスが“16人目の選手”としてJJ・バレアと契約し、直後に解雇した理由とは

レジェンド、JJ・バレアへリスペクトを欠かさなかったマブス [写真]=Getty Images
某ストリートメディアのシニア・エディターを経験後、独立。ひとつのカルチャーとしてバスケットボールを捉え、スポーツ以外の側面からもNBAを追いかける。

 ダラス・マーベリックスは先日、球団の最年長ポイントガードであるJJ・バレアとベテランミニマムで再契約を締結した。古くからのマブスファンは、優勝を知る唯一のプレーヤーとして、また来季もバレアがロスターに残ることに安堵を覚えただろう。

 しかし、再契約からまもなく、『ESPN』はバレアがウェイブされる可能性を示唆。そして報道のとおり、マーベリックスはバレアを解雇し、11年間を共に歩んだベテラン小兵に別れを告げた。

 NBAのロスターに登録可能な選手は、1球団につき15人までと規定されている。しかし、ベテランミニマムを提示した際、マーベリックスにとってバレアは“16人目の選手”だった。

 では、なぜマブスはバレアと再契約を結び、直後に解雇したのか。実はこの契約は、球団の名物オーナーであるマーク・キューバンから計り知れない貢献をしてくれたバレアに贈る、感謝の気持ちを込めた“最後のギフト”だったのだ。チームにとって不必要な戦力と契約を結ばない選択もある中、あえて260万ドル相当の契約を結び、退職金ともとれる大金とともにバレアを送り出した。これはマブスから功労者へのリスペクトの現れに他ならない。

 マーベリックスで球団社長を務めるドニー・ネルソンは、球団がバレアにとった対応について、こう語っている。

「我々は、バレアと共に素晴らしい時間を過ごしました。彼は何年もの間、多くの観点において我々のハートとソウルの象徴でした。そして、彼は紛れもなくプエルトリコの誇りです。しかし、私たちは多くの犠牲を払うことを余儀なくされており、この関係性は終わりを迎えようとしています」

「我々には、バックアップのポイントガード陣で若返りを図らなければならないという事実があります。我々は皆、それが避けられないことだと理解しています。ただ、私はそれ以上に、JJ本人と彼がキャリアで成し遂げたことに感謝をしており、だからこそ我々は彼を16人目の選手としてチームに迎え、感謝の気持ちを伝えたいと思ったのです」

 バレアのNBAキャリアは、ダラスから始まった。一時はNBADL(現在のGリーグ)で過ごすこともあったが、カムバックするや否やロスターに定着。特に、球団の悲願でもあった2010-11年シーズンの初優勝に、バレアは欠かせない存在だった。

 5年ぶりの再戦となるマイアミ・ヒートとのNBAファイナル。1勝2敗のビハインドで迎えたゲーム4で、ヘッドコーチのリック・カーライルはチームにカンフル剤を投与した。それが他でもない、JJ・バレアのスターター起用である。この変化がチームに上昇気流をもたらしたことは言うまでもなく、MVPに輝いたダーク・ノビツキーは当時「(ヒートに敗れた前回のファイナルとの)最大の違いはバレアが先発したこと」とコメントし、その貢献を讃えている。

初優勝に欠かせない存在だったJJ・バレアがトロフィーを手にする [写真]=Getty Images


 バレアにとっても、マブスとの別れは簡単なものではない。同選手は声を震わせ、目には涙を浮かべながら、以下の言葉をこぼしたという。

「ダラスは、プエルトリコに次ぐ、僕の第二の故郷です。ただただ、特別なのです。ここは、僕がバスケットボールをした場所でもっとも幸せな場所です」


 しかし、選手と球団の蜜月関係に終止符が打たれたとしても、その絆が切れることはない。バレアはいつか、ダラスに帰ってくることを夢見ている。

「将来、僕はまたここに戻ってきて、再びチームを助けたいと思っています。僕の目標は、最高レベルのコーチになることです。そして、僕はダラスであれば、特別でいれることをわかっています。まずは家族と束の間の休息を取りますが、今年は絶対にプレーしたいし、試合に携わっていたいです」

『ESPN』はバレアとマーベリックスの一時の別れの締めくくりとして、キューバンの言葉を添えた。

「JJは、マブスのレジェンドです。彼がコートでしてきたことは、彼が誰であるかのほんの一部に過ぎません。もちろん、タイトルは大きなものでしたが、彼がプエルトリコのためにしていること、何かを必要としている人々のためにしていることは、それ以上に特別であり続けるはずです」

昨シーズンもルカ・ドンチッチにアドバイスを与える場面がしばしば見られた [写真]=Getty Images


文=Meiji

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