2024.02.27

テイタムが“NBAの顔”になることへ意欲を示す「僕が手に入れるものだと感じている」

テイタムが“NBAの顔”になるには何が必要なのか [写真]=Getty Images
某ストリートメディアのシニア・エディターを経験後、独立。ひとつのカルチャーとしてバスケットボールを捉え、スポーツ以外の側面からもNBAを追いかける。

 時の経過は早いもので、ジェイソン・テイタムは今年で7シーズン目を迎えており、大きなケガに直面することなく、順風満帆なキャリアを過ごしている。唯一足りていないものと言えば、いずれは手にするであろうMVPの称号と、NBA最大の名誉であるチャンピオンリングだ。

 しかし、テイタムは名門デューク大学からワン・アンド・ダンでボストン・セルティックスに加入したため、年齢は若干25歳。レブロン・ジェームズ(ロサンゼルス・レイカーズ)のような鉄人レベルのキャリアを過ごすかはさておき、概算では10年以上のキャリアが残されており、選手として本当の意味で油が乗ってくるのはこれからである。

 5度のNBAオールスターは、『The Athletics』のジャレッド・バイスに対し、世間が現在の自身やセルティックスに物足りなさを抱くのはフェアではないと考えている。

「少し不公平だよ。なぜなら、みんなが僕らと同じような扱いを受けているわけではないからね。僕は、僕より年上の選手や、同じ年齢の選手とは異なる視点で見られていると感じることがある。公平か不公平か、それが何であれ、僕らが早期に成功を収めたからだと思う」

 テイタムの言うように、近年のセルティックスは名門の名に恥じることなく、若くして成功を収めた球団である。同選手は、NBA入りを果たして以来、一度もプレーオフ進出を逃したことがなく、ファーストラウンド敗退は2020−21シーズンのみ。その間に3度のカンファレンス・ファイナル進出、1度のNBAファイナル進出を成し遂げ、リング獲得は目前に迫っている。

 自他共にリーグでも指折りのプレーヤーとして認めるテイタムが、選手個人レベルで証明できることはほとんどない。当の本人もその現状を理解している。

「レギュラーシーズンで何をしようとも、僕はチャンピオンシップを勝ち取れるか否かで判断される立場にいることをわかっている。十分に認識しているよ。だから、僕はただそれを成し遂げなければならない」

 また、エースを任されているという自覚を持ちながらも、テイタムは目には見えないチームプレーヤーとしての成熟も感じているようだ。それは、自身の持ち味であるスコアリングの強弱と、ゲームを俯瞰する視点に表れている。

「JB(ジェイレン・ブラウン)とKP(クリスタプス・ポルジンギス)は、最初のクォーターからエンジンがかかるんだ。僕が囮になるわけではないけど、彼らがゲームを切り開くための自分の役割を理解している。必要なときは本質的にその役割を引き継ぐことができる。キャリアの初期は、そんなこと考えていなかったけどね」

「以前はただ、ゲームを考える代わりに、ただ試合をプレーしていた。今は試合に出場して、彼らの計画や選手のラインアップなど、対戦相手を理解しているんだ。経験からの学びだね。今の僕は少しリラックスして、一歩引いても構わない。同時に、第4クォーターになれば、20得点を挙げることができるのもわかっている」

 レブロンやステフィン・カリー(ゴールデンステイト・ウォリアーズ)、ケビン・デュラント(フェニックス・サンズ)らはキャリア終盤に差し掛かっており、リーグの主役交代は目前に迫っている。もちろん、テイタムもその候補に名を連ねているが、そのためにはヤニス・アデトクンボ(ミルウォーキー・バックス)にはあって自身にはない、リングの獲得が不可欠だ。

 テイタムには、リーグの顔になる覚悟がある。

「それは僕が手に入れるものだと感じているよ。僕たちがチャンピオンシップを勝ち取れば、より明確になるだろう。僕はそのショートリストにいると理解している」

 しかし、テイタムはこのような立場になっても、誰よりも純粋にバスケットボールを楽しんでいる。

「僕は長い間、報酬をもらうことなくバスケットボールをしてきたよ。本当にそれが好きだからね。お金をもらうのはプラスアルファのことであって、成し遂げたことによって成果を得られるのはうれしいけどね。僕はバスケットボールをプレーするのが何よりも大好きなんだ」

「僕はバスケットボールをプレーするのが何よりも大好きなんだ」とテイタム [写真]=Getty Images


 儒家の始祖である孔子はかつて、「天才は努力する者に勝てず、努力する者は楽しむ者には勝てない」と説いた。バスケットボールを心から楽しむテイタムにはいつの日か、彼が望むものが舞い降りてくることだろう。

文=Meiji

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