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富永啓生が所属するNCAA1部(以下DⅠ)のネブラスカ大学は、今季公式戦で15勝5敗(BIG10カンファレンス5勝4敗)と好調だ。さらに、インディアナ大学、パデュー大学、ノースウェスタン大学など、何年も勝てていなかったDIの強豪チームを倒している。
その理由を富永は「チームケミストリーと身体能力の両方が揃ったからだ」と分析する。
チーム力が上がったネブラスカ大で中心選手として活躍する富永は、ここまで18試合に出場し、1試合平均14.0得点(フィールドゴール成功率45.9パーセント、3ポイントシュート成功率38.0パーセント、フリースロー成功率87.2パーセント)、1.9リバウンド1.2アシスト1.1スティールを記録。そのうち12試合(1月には6試合連続)で2桁得点をあげている。
特に、1月4日(現地時間3日、以下同)のインディアナ大戦では今季自己最多の28得点をマークして勝利(86−70)に貢献。10日には全米ランキング1位(当時)のパデュー大を相手に今シーズン自己最多の5本の3ポイントシュートを沈めて19得点4アシストを記録し、歴史的勝利(88−72)をもたらした。
富永がチームの勝利に貢献できているのはなぜなのか。彼は今シーズンどんな成長を遂げているのだろうか。
自身の活躍について富永は、「今年は特に自分のプレーができる機会が増えているのも得点に繋がってる理由だ」と話す。得意の3ポイントシュートを警戒されれば、カッティングやドライブでインサイドを攻め、得点のオプションを増やすようにしている。21日のノースウェスタン大戦では、「動き続けていればいつかオープンになる」と信じた末に巡ったチャンスに決勝弾の3ポイントシュートを沈め、勝利を掴んだ。
昨夏のワールドカップの経験もその成長に大きく影響しているという。「NBA選手が多くいるチームを相手にして、フィジカルやIQの部分でも一つひとつすごく勉強になりましたし、世界の強豪が揃う大舞台でして良い結果を出せたことも自信につながっています」と、富永は振り返る。
シューターとしての知名度が上がり、今季はさらに相手チームの富永へのプレッシャーも厳しくなった。しかし、「去年に比べて自分の身体が大きくなったので、嫌だなと感じることは全然ないですね。体幹も鍛えてますし、日頃からウェイトトレーニングで身体の強化をしています。特にオフシーズンはしっかりやり込みました」と、フィジカル面でも自信をのぞかせる。
今季はボールハンドリングの時間が増え、パススキルなどプレーメイキングにも重点的に取り組んでいるという。必ずしもアシストとして数字にはならなくても、「今のところ去年よりいい感じじゃないかなと思っています」と、富永は前向きだ。
「自分がボールを持つことで相手のフォーカスが自分に向くと思うので、ダイブに対してのポケットパスとかを積極的にやっていけたら、自分がもっと色々な形で脅威になれると思っています」
富永の成長は、実は選手としてのスキルだけに留まらない。今季の彼はハドルの中で誰よりもチームメートに話しかけているのだ。リーダーとしての役割を意識しているのかと尋ねると、「今のチームで3年間プレーしている選手が少なくて、特にスターターの中だと僕1人なので、自分がチームをまとめていかないといけないと、確かに自然と意識していますね」と明かした。
リーダーとしての自覚に芽生えた富永が、パデュー大を倒した歴史的勝利に浮かれてアウェーで2連敗したことを自戒し、勝ち負けに一喜一憂せず、目の前の試合に集中することの大切さを何度も繰り返し語ったことは興味深いものがある。ネブラスカ大がNCAAトーナメントに進むためには、まだまだここからが勝負なのだ。
「もちろん勝つことは嬉しいし、負けることは悔しいですけど、それを引きずってたら良い方向にはいかないと思うんですよ。1日1日を大切にして、日頃から練習を重ねて自信をつけていくしかないですね」富永は語気を強めた。
「とにかく、自分たちの今の目標であるNCAAトーナメント出場、そして、そこで活躍できるように頑張ります」
ネブラスカ大のNCAAトーナメント進出は決して夢ではない。そこで活躍できれば、富永のNBAへの道が一気に開ける可能性もある。
ここまでを振り返り、昨年6月にNBAドラフトのアーリーエントリーを取り下げてネブラスカ大に戻る決断をしたことに悔いはないかと尋ねると、富永はこう即答した。
「ここに戻ったことに全く悔いはないし、間違いなく正解だったと思います」
彼の表情に一縷の迷いもなかったのは、NBAの夢を叶えるために自分のスキルを最も向上させることができると信じた場所で、確実に手応えを感じているからに違いない。