2017.11.02

【緊急企画】バスケ観戦の達人に聞く~第1回 アルバルク東京ファン横田晶次郎さんの場合

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スポーツ観戦の楽しみ方は様々だ。生ビールを片手に熱視線を送る人、家族連れで週末の余暇として楽しむ人、その競技自体の魅力にじっくりと浸りたい人、スタジアムグルメを満喫する人、恋人と一緒に試合そっちのけで見つめあう人…。

そんな多種多様の楽しみ方ができるのもスポーツの魅力の一つだが、その中でも最もメジャーなスタイルが“応援する”ことだろう。スポーツ観戦=“応援する”ということに必ずしも直結はしないと思うが、好きなチームを応援するためにスタジアムやアリーナに足を運ぶ人は珍しくない。応援を楽しむ人たちはバスケ観戦の達人とも言える。

11月24日(金)のホームゲーム、バスケットボール男子日本代表が駒沢体育館にてフィリピン代表を迎え撃つ大一番に大応援団を組織したバスケットボールキングでは、改めて「応援」について考えてみることにした。昨年9月に開幕し、プロリーグとしては歴史の浅いBリーグだが、バスケットボール界にも熱心にクラブへと声援を送る人がいた。その一人がアルバルク東京を応援する横田晶次郎さんだ。

A東京のホームゲームで、それは楽しそうに声援を送る横田さんは、2階席に向かって手拍子を促したり、後ろを振り返ってコールを煽ってみたり、チアのダンスに一緒になって体をゆすってみたりと、会場の一部となって、その応援を盛りあげていた。そんな横田さんに失礼ながら「なぜ、そんなに熱心に応援するのか?」と聞いてみたいと話をしてみると、とても親切に「応援」について語ってくれた。

■応援とは……?
1:他人の手助けをすること。また、その人。 「友人の-を仰ぐ」 「地元候補を-する」
2:(競技・試合などで)歌を歌ったり声をかけたりして味方のチーム・選手を元気づけること。「母校のチームを-する」「-合戦」
(三省堂「大辞林」より)

インタビュー=村上成
写真=山口剛生

――アルバルク東京の応援を始めたきっかけを教えてください。
横田 ファンクラブに入って、年間をとおして応援しようと思ったのが、NBL(ナショナル・バスケットボール・リーグ)の最終(2015-16)シーズンからです。その前までは固定のチームを応援していたわけではなく、高校生や大学生の試合を見たり、東京に来ているNBLチームの試合を見に行ったりしていました。Bリーグができるタイミングで、日本のバスケットが盛りあがる予感もあったので、新リーグが始まる1シーズン前からどこか固定のチームを応援しておいて、歴史的な切り替わりのタイミングを体感してみたいと思っていました。その中でアルバルクに決めた理由は、ホームが近くて会場に行きやすいからです(笑)。あとは、日本代表の試合で松井選手(啓十郎/現シーホース三河)がよく3ポイントシュートを決めていたことも応援する決め手にもなりました。今のチームカラーは赤色ですが、黄色よりも緑色が好きだったことも踏まえて、アルバルクに固定しました。

――元々バスケットボールをプレーしていたのですか?
横田 部活でやっていたのは中学校までで、高校は部活には入らずに昼休みにプレーする程度に楽しんでいました。NBAは中学校の時から見ていましたし、“スラムダンク世代”ということもあって、バスケットはずっと好きです。

――琉球ゴールデンキングスと対戦した2016年9月22日の開幕ゲームは、横田さんの目にどのように映りましたか?
横田 今までにない雰囲気で、演出もすごくて圧倒されましたし、NBLの試合を見ていたのですが、これまでとは比較になりませんでした。特に旧企業チームは栃木(ブレックス)さん、千葉(ジェッツ)さんを除いて集客が弱いこともあって、前日や当日でもコートサイドの指定席を買えました。あの開幕以降、Bリーグになってそういったことが少なくなり、チケットを取りにくくなったのも事実です。正直言って、開幕戦はあんなに多くの人が入るとは思いませんでした。

――A東京は国立代々木競技場第二体育館をホームアリーナとして使用していましたが、応援や雰囲気の違いなどは感じましたか?
横田 開幕戦だけではなく、明らかにNBLの時と比べて変化したと思います。

――Bリーグ元年、A東京を1年間とおして見た印象はいかがでしたか?
横田 NBLの最終シーズンはそんなに応援団ぶるつもりはなく、純粋に見に行くことを楽しもうとしていました。一緒に観戦するようになったバスケ素人の妻には、「まずは一人好きな選手を作ってみたら」と勧めました。やはりバスケットを知らない人がイチからルールを覚えるのは難しく、試合を見ていると、シュートが入った、入らなかったしかわからないと思います。好きな選手を決めることで試合にも入りやすくなるし、その選手だけを追うこともできます。そういった見方をしていると、バスケを見に行きたくなるのかなと感じます。

――ちなみに奥様は誰を応援しているんですか?
横田 ザック・バランスキー選手です。ハードワークが持ち味で、ある試合後のヒーローインタビューの時に、明らかに日本語をしゃべれなさそうなザック選手が「こんばんわ!」と挨拶して盛りあげてくれたじゃないですか。そういうところも面白いですし、メディアには“ざっくばらん”で取りあげられ、一躍時の人になりましたよね。

――ザック選手は素晴らしい選手ですよね。ところで、横田さんご自身は、最初、様子を見ていたんですね。
横田 NBL時代はトヨタさんの応援団があり、Bリーグになったらそれに続くような形でやっていればと思っていたので、自分が応援を引っ張ろうという気持ちはなかったです。

――開幕戦では応援合戦もありましたよね。
横田 それまでは「レッツゴー トヨタ!」で応援していたので、会場でどうやって応援していくか悩みました。「レッツゴー アルバルク」では言いにくいですし(苦笑)。相手は「ゴーゴー キングス」でしたので、圧倒されたとしか言えないですね。でも、あれだけのお客さんが来ていたので盛りあがったと思います。

――その後はアリーナMCが会場にいて、観客が立って応援する機会もあまりありませんでしたね。
横田 Bリーグ開幕戦のあとのホームゲームは、MCさんが煽ってくれました。しかし、全然声が出ていなくて、ファンも応援の仕方をわかっていませんでした。運営側もどうやって応援するのか迷っていたみたいで、会場に行く度に違うコールがあったりして、チームも観客も試行錯誤していたのかなと思います。

――その中で、声を出して応援を先導していこうと決めたきっかけは何ですか?
横田 前々から雰囲気が寂しすぎて声を出していこうと思っていましたが、やってやろうと思ったのが1月に行われたオールジャパンの仙台(89ERS)戦からですね。前日は筑波大学戦だったのでコートサイドで静かに見ていましたが、仙台戦はBリーグ同士の試合ということもあって、絶対に負けられないと気合いが入っていました。

――代々木第一体育館には、そんなに人が入っていたわけではないですよね。
横田 平日でしたし、かなり静かな雰囲気でした。僕はベンチ裏に座っていて、それでも、その日は声を出してみようと思いました。一発目に「レッツゴー トウキョウ!」をやりましたが、誰も反応してくれずに僕だけでした。選手たちの後ろだったので、すごいうるさい人がいると感じていたかもしれません(笑)。だけど、それで声を出すことを止めて、心が折れたと見られるのも嫌だし、自分自身との戦いのような状態でしたし、もちろん恥ずかしいですし、集中して試合も見れずにドキドキしていましたが、とりあえずやるしかないと思って、前半は声を出し続けました。そうしたらハーフタイムにアルバルク東京のスタッフの森岡(浩志)さんが、「(応援)ありがとうございます」と声を掛けてくれて。最初はこの人も熱狂的なファンかなと思っていましたが、名刺を出されてアルバルクの方だとわかりました。それで応援について、「声を出す人がいないんですよね」とか「もっと応援を盛りあげたいんですよね」と、それまで考えていたり悩んでいたことを話をして、後半もがんばろうと思えました。自分が応援している姿をしっかり見てくれている人がいたし、“応援を応援してくれる人”がいたんだと感じました。

――1人で声を出すのは大変だったと思います。
横田 すごく難しかったです。しかし、小学校の時に剣道をやっていたので、発声すること自体は嫌ではありませんでした。声出しをアウェイ会場でもやっていると、いろいろな人が声を掛けてくれたり、「一緒に応援したいです」と言ったりしてくれて、そういう人が少しずつ増えてきたと感じます。

――チャンピオンシップの川崎ブレイブサンダース戦はかなり盛りあがりましたね。
横田 初めて応援できたとみんなが思えた試合でした。残念な結果に終わってしまい、悔しい思いはありましたが、どこかスッキリした気持ちもありました。ゲーム1の時は応援の声がバラバラで、僕はその様子をベンチサイドで見ていました。試合後、森岡さんやファンの方たちとこのままではダメだと話して、「明日(ゲーム2)はどこかの応援に合わせましょう」ということになり、そこで僕が1階のベンチ後ろの指定席で応援をリードすることになりました。当日、ファンの方々に「(アルバルクは)選手はうまいし、チームはすごく強いけど、応援は降格争いくらいのレベル」だと言って、「そのままでは選手たちに申し訳ないから、チームの強さに見合う応援をがんばろう」と伝えました。試合は白熱して、ファンもかなり盛りあがってきました。僕は二ック・ファジーカス選手が終盤のとても重要な場面でフリースローを2本も落としたことがうれしかったです。ファジーカス選手が2本のフリースローを外すのは滅多にないことで、もちろんファジーカス選手にも緊張があったのだと思いますが、ささやかだけど、僕たちのブーイングが少しは影響したのかもと思いましたし、あのフリースローが外れたこともあって、ゲーム2でアルバルクが勝利できて、その勢いのままゲーム3に臨むことができました(笑)。また、試合の最後の方に、伊藤拓摩ヘッドコーチが観客を煽っていたんですよ。そのことにもビックリして、僕たちがもっと声を出していかなければと思いましたし、ファンと選手の一体感が生まれたと感じました。結局、悔しい結果に終わりましたが、そのまま終わったら意味がないので、あの試合後にファン同士でLINEのグループを作ったり、オフシーズンにみんなで集まったり、コミュニティを広げるようにしました。今では、川崎戦の応援が序盤からやれるような体制になっていると思います。

――無理に合わせるのではなく、A東京は自然にまとまる印象があります。
横田 他のチームのように応援団がいるのはすごく心強くて、合わせやすいと思うのですが、アルバルクは女性ファンが多い一方、リピーターが多いわけではないと思います。固定の応援団がいないですし、ファンも必ずしも試合に行けるというわけではないので、応援団なしで誰がリードしても、その日に来ている方々がうまく合わせることができるようなスタイルになればと考えています。

――初めて横田さんの応援を見た時、応援団というよりもコンダクターの印象を持ちました。
横田 そういうイメージで取り組んでいます。僕は指定席で見ることもありますし。先ほどもお話しましたが、たまに試合を見に来た方も合わせやすいスタイルを模索しています。最初の頃は、声を出して応援する人は2階席の上の方に行くのが暗黙の了解なのかなと思ったりもしました。NBL時代に、指定席で大声を出して怒られたこともあって(苦笑)。応援することだけに目を向けて、静かに試合を見たい人を排除するのはおかしいことです。これは難しい問題でもあって、席に座る時に「大きな声を出して、立ちあがったりしますが、すみません」と言って、あらかじめ断っておくことも必要なのかなと思います。NBAは第4クォーターに全員が立って応援していることが多く、声を出す、拍手をする、いいシュートの時に思わず立ちあがるという文化がありますよね。そういう人が日本の会場でもマジョリティになってほしいです。僕らみたいな存在はマイノリティで、どうしても嫌がる人はいると思います。それが逆転すれば、バスケットの応援はこういうもんだと伝わってくると思います。批判もあるかもしれませんが、応援も試合観戦の重要なエッセンスだと思いますので、続けてがんばっていきたいですね。

――横田さんにとって、応援って何だと思いますか?
横田 選手と一緒に戦うということです。0.1点でも選手の後押しをできたらと思っています。バスケットの場合は、それで試合の勝負が決まることもなきにしもあらずじゃないですか。

――昨季の川崎戦で、応援の結果が出たということですか?
横田 あの時に会場にいた方々は、やっぱり応援って必要なんだなと思ったはずです。他のチームにはない形もあってもいいのかなと思います。

――日本代表のワールドカップアジア予選が始まりますが、どういった応援が必要だと思いますか?
横田 Bリーグの各チームに熱いブースター、ファンがいるので、あらかじめ応援のスタイルやコールを決めるのもいいのかなと思います。来た方だけに伝えるよりも、行った時には応援できるようなイメージが持てるといいですよね。たまにしかない代表戦でも一体感を出せると思います。

――最後に、今シーズンのアルバルク東京の魅力は何ですか?
横田 ヘッドコーチが代わって、選手も入れ替わっている中、どこからでも点を取れます。田中大貴選手はエースというイメージがありますが、誰もが点を取れて、誰もがしっかりディフェンスできて、失点が少ないと思います。日本代表メンバーに名を連ねる選手が多いのももちろん魅力の一つですが、試合前、試合後のチーム一丸となった空気感というか、仲の良い雰囲気をすごく感じることができるチームですね。見ていて楽しいですし、応援したくなるような魅力がありますので、ぜひアリーナ立川立飛に足を運んでもらいたいです。