2018.01.13
11月19日、アースフレンズ東京ZがB2東地区首位に立つ秋田ノーザンハピネッツをアウェーで撃破したことに驚いた人も多いだろう。しかし、それ以上にファンを驚愕させたのが、試合後の東頭俊典アソシエイトコーチがとった行動だ。1人チームを離れ、向かった先はイタリアのミラノ。東頭自身がツイッターで報告したその行動は、あまりにも唐突なものだった。翌週は第93回天皇杯全日本バスケットボール選手権第3ラウンドの日程が組まれていたため、第2ラウンドで敗退していた東京Zはバイウィーク(試合がない週)となっていた。とはいえ、シーズンの真っ最中であることには変わりなく、通常では考えられない行動だ。
同29日に帰国し、チームに再合流した東頭。はたして彼は、何のためにイタリアへ行ったのか? 本人に直撃すると、「世界に通用する人財を輩出する」というクラブ理念の実現に向けて歩みを進める東京Zの意欲を改めて思い知らされた。ここでは、東頭本人の言葉をお届けしよう。
――今回イタリアに行かれたきっかけは何だったのでしょうか?
東頭 もともとこのチームは斎藤卓ヘッドコーチの下に1人必要という状況で、海外にコネクションを持っている人を探していました。僕も、海外視察をして情報を集めたいというのがありましたので、チームのニーズと僕の思いが一致して契約に至ったという経緯があったんです。思いつきで行ったわけではなく、初めからのプランなんです。
なぜイタリアだったのかというと、夏に行われたJBAのコーチライセンス講習に、ファブリチオ・フラテスさんという方が講師でいらして、彼は今イタリアのチームでコーチをしているんです。僕はその講習を受けながら通訳もやっていましたので、食事の時間などにいろいろ質問したんですが、「(イタリアに)来たら見せてあげるよ」と言われて、「じゃあ行くしかない」と。
我々はオールジャパン(天皇杯)の2次ラウンドで負けてしまっていましたので、3次ラウンドの日程がバイウィークになっていました。僕とヘッドコーチの中で悩んでいることがあったので、このタイミングでそれを探しに行かせていただきました。「負けたらイタリアに行く」と言っていたんです(笑)。
――もし天皇杯で勝ち進んでいたら、もっと先になっていたんですか?
東頭 いえ、勝っていてもシーズン中に行っていたと思います。それを認めてくれるところが東京Zの良いところで、またHCも懐が深いです。我々が何年かかってもたどり着けない答えを持っている人を知っているんでしょ、オフシーズンまで待ってもライブで見られないでしょ、と。日本にない答えを持って帰ってきてくれるんだったら、いつでも行ってくれと言ってくれたんです。これは斎藤HCでないと起こり得ないことだと思います。
――目的は何だったんですか?
東頭 現場のマネージメントと、練習のオーガナイズ・プランニングを学ぶことです。ヘッドコーチがいて、その下にスタッフがいるわけですが、誰がどういう知識を持っているのか、どんな役割と責任を持っているのかということを、B1のチームを中心に調べたことがあるんですが、スタッフの多いアメリカと違って、日本ではどうしても兼任しなければならないので、あまり役割が明確になっていません。ただ、ヨーロッパも少ないスタッフでやっているので、実際どうなっているのかを見たかったのが1つです。
プランニングに関しては、シーズン中の場合はスカウティングと自チームのレビューと練習があって、現状ではそれがバラバラになってしまっています。その3つが1本の線でつながるフォーマットを今回いただいてきました。例えるならば、今まで個人商店でやってきたのが、コンビニのマニュアルを入手して入荷と陳列と販売数がリンクするようになった感じですね。ファブリチオさんはスペイン代表のヘッドコーチを務めていたこともある方のトップアシスタントをされていたので、要するに世界トップのやり方そのものなんですよ。
――そういった成果は山野勝行代表や斎藤HCにも報告されているわけですよね。
東頭 32ページにわたるレポートを提出しました。時間がなくてそのページ数になりましたが、1週間イタリアにいて、毎日朝から晩まで現場で濃い時間を過ごしたので、全部書くと1冊の本になりますね(笑)。今まで見たことのないものがたくさんあって、小さい子どもが初めてディズニーランドに行ったような感覚です。僕はいろんなチームでやらせてもらってそれなりに自信もあったんですが、別世界でした。
――それをチームに反映させる手応えはいかがですか?
東頭 B1・B2含めて、我々がここから一番変わると思います。選手の入れ替えで変わるのではなく、バスケットの質が変わって純粋にうまくなるんです。その手応えは僕もHCも感じているので、毎日楽しいですよ!
インタビュー=吉川哲彦
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