2021.12.16

あれから1年…ENEOSの渡嘉敷が再び立ったコートで「いつも通りできた」/皇后杯

シャンソン戦で30得点7リバウンドと大活躍した渡嘉敷[写真]=兼子慎一郎
フリーライター

 試合後、ENEOSサンフラワーズのエース、渡嘉敷の表情は実に晴れやかだった。

「第88回皇后杯 全日本バスケットボール選手権大会ファイナルラウンド」(以下、皇后杯)。準々決勝に登場したENEOSは、長年女子バスケット界を引っ張ってきたライバルであるシャンソン化粧品シャンソンVマジックと対戦した。この両者はすでにWリーグのレギュラーシーズンでも対戦しており、結果は1勝1敗。ENEOSにとっては12試合を終えた現在で唯一の黒星を喫した相手でもある。

 だが、「そこまで意識してませんでした。しっかり準備をしてきたので、それが自信になって、いつも通りやれば勝てのではないかと思って試合に臨みました」と渡嘉敷。その言葉通り、開始早々にインサイドでバスケットカウントを奪うと、その後も高さを生かして得点を重ね、チームのロケットスタートに貢献した。第2クォーターこそシャンソン化粧品の追い上げに遭う場面があったものの、後半に再び得点ペースを上げたENEOSが92-64で勝利。46大会連続での準決勝進出を決めた。

「個人的にもこの代々木(体育館)というのは、いろんな思いがあるので、緊張したところはあったけれど、久しぶりにチームとして出だしからいい流れでできたので、まずは(準決勝の)トヨタ紡織戦になりますが、あと2つを勝ちに行きたいと思います」と渡嘉敷は、オンライン会見で試合の感想を語った。

 ちょうど1年前、皇后杯の準々決勝の試合中、渡嘉敷は同じ場所で膝の大ケガを負った。

「去年、ここでケガをしているので、そういった意味ではすごく緊張していました」と渡嘉敷。それでも、「去年は去年、今年は今年で、いざコートに立つと、そこまで気にはならなかったです。いつも通りだったと思います」とも語った。

 どうしてもマイナスなイメージは付いて回っただろう。だが、試合ではダイナミックなプレーを見せて30得点7リバウンド。前回大会の悪夢を自らのプレーで払拭した。渡嘉敷にとっては勝ったことに加えて、そのこともまた、晴れやかな表情へとつながったのではないだろうか。

「去年は初戦(準々決勝)の開始6分ぐらいで(ケガで)コートを離れて、チームとしては優勝したのでうれしかったのですが、自分自身がコートに立てない悔しさが強かったです。今大会は優勝はもちろん、最後までコートに立ち続けたいなと思いながらこの大会に臨みました」という渡嘉敷。準決勝のトヨタ紡織サンシャインラビッツ戦に向けては「リーグ戦の対戦では私も前半を0点と抑えられたので、今回は積極的に攻めます。守りに入らず、自分たちのバスケットをして勝ちます」と意気込んだ。

 前回大会では、渡嘉敷が戦線離脱した後も岡本彩也花らを中心に、チーム力で優勝を果たし、女王の座を死守した。今大会は優勝すれば皇后杯と天皇杯を合わせても史上初の9連覇となる。そんな記録のかかる大事な大会に、頼もしい選手が帰ってきた。

文=田島早苗