2021.12.19

皇后杯決勝のみどころ/ENEOSの9連覇か⁉ デンソーの初優勝か⁉

皇后杯の決勝で相まみえるENEOSの渡嘉敷(左)とデンソーの髙田 [写真]=加藤誠夫
フリーライター

 12月18日、「第88回皇后杯日本バスケットボール選手権大会ファイナルラウンド」(以下、皇后杯)の準決勝が行われ、ファイナル進出チームが出そろった。

 決勝の舞台へとコマを進めたのは、大会史上初となる9連覇を目指すENEOSサンフラワーズと2大会ぶりの決勝進出となったデンソーアイリス。両チームは、すでに始まっているWリーグの対戦はまだなく、今シーズンはこれが初の顔合わせとなる。

マルコヴィッチ体制2季目のデンソーは「チームバスケ」で頂点に挑む

 前回大会で、大会途中に渡嘉敷来夢がケガにより戦線離脱というアクシデントに見舞われながらも優勝を果たしたENEOSは、その渡嘉敷が復帰。今大会でも圧倒的な高さと強さを発揮している。

 だが、インサイドで言えば、デンソーの髙田真希も同様。強さだけでなく、テクニックを持ち合わせるエースは、強引なドライブからシュートを放ったかと思えば、相手の裏をつくような軽やかな合わせのプレーなどで得点、そしてリバウンドを量産している。この2人の対決は、実に2大会前の皇后杯以来。この対戦に髙田は「彼女がケガをしてから対戦相手として一緒にコートに立つことがなかったので、楽しみではありますが、自分たちのチームのやるべきことに集中したいと思います」とコメントした。

 これまでも幾多行われてきた渡嘉敷と髙田のマッチアップ。世界トップレベルの争いが見られることだろう。

 だが、「全員で守る、全員で攻めるというのが今までとの違い。(準決勝)も私は特別なことはしていなくて、チームメートが攻めてくれたり、ディフェンスをしてくれました。私への負担も徐々に減ってきているし、それで自分の役割に徹することができています」と髙田が言うように、マリーナ マルコヴィッチヘッドコーチ体制となって2年目。『チーム』を強調する指揮官の下、それが選手個々に浸透しており、特に今シーズンは「自分一人で身構えることも今はない」(髙田)というチームへと変貌している。

 準決勝では18得点と気を吐いた本川紗奈生も「昨年とは違うチーム。それまではリツ(髙田)さんに頼っていたけれど、今は選手個々が『自分がやるんだ』という気持ちが出ています」という。

 この本川をはじめ、東京オリンピック銀メダリストでリバウンドに強さを見せる赤穂ひまわりや、インサイドで体を張る赤穂さくらに、隙あらば積極的にシュートを放つガードの稲井桃子。また、コンスタントな働きを見せる近藤楓など、能力が高い選手がそろうデンソー。勝てば初優勝となる一戦に向けて、高田は「練習で準備してきたことをやれば勝てるという自信はみんなが持っていると思います。どこが相手でも強い気持ちで、苦しい時間も全員でやり遂げたいです」と抱負を語った。

準決勝では3本の3ポイントを含む11得点をマークしたデンソーの稲井 [写真]=加藤誠夫

ENEOSの渡嘉敷は「一戦一戦成長している」と実感

 対するENEOSは、先に挙げたように渡嘉敷が元気なところを見せており、日本代表でも今夏活躍を見せた林咲希が要所を締める3ポイントシュートで追随。また、前回大会では渡嘉敷が不在の中、チームを引っ張った岡本彩也花も、勝負強い外角シュートでチームを盛り立てている。さらにプラスとなっているのが、膝のケガで前回大会は不出場の梅沢カディシャ樹奈が今大会ではスターターを務め、準決勝では12得点10リバウンドをマーク。高さと強さで奮闘している。

 また、ガードでは、東京オリンピックに出場し、その後行われたアジアカップでは日本代表の司令塔として優勝に貢献した宮崎早織が構える。準決勝ではミスなどで本来の動きとまではいかなかったが、速さが武器のスピードスターは、これまで大舞台で存分に力を発揮しており、ファイナルでもカギを握る存在となるだろう。加えて、準決勝では、その宮崎のバックアップとして出場した同じくガードの髙田静の存在も大きい。

大舞台に強いENEOS宮崎(左)。決勝でも活躍が期待される[写真]=加藤誠夫


 キャリア豊富な宮澤夕貴富士通レッドウェーブ)らの移籍もあり、昨シーズンよりメンバー編成は大きく変わったENEOS。経験値で言えばまだ浅い選手も多いが、「私たちはリーグ戦を通して一戦一戦成長してきているチームなので、今大会でも決勝の舞台で、皆さんに成長した姿をお見せしたいです」と渡嘉敷は言う。

 また、林も「自分たちのやることを40分間徹底して、気持ちを強く持ってやるだけ。緊張感を持ちながらも、良いイメージで、楽しくやりたいです」と意気込んだ。

 ENEOSが勝てば大会史上初の9連覇。デンソーが勝てば初優勝。ともに新たな記録がかかる一戦、オリンピックイヤーを締めくくるトップレベルの頂上決戦から目が離せない。

文=田島早苗

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