2021.08.17
退路を断ってチーム運営に専念した上原和人GM。コロナ禍という誰もが経験したことのない状況の中、クラブはついにB1昇格を果たした。大きな仕事を終え、今シーズンを最後にクラブを去る上原氏はこれまでクラブに関わってきたすべての人たちに感謝の言葉を述べる。そして、最後に自身が考えるGM像を話してくれた。
取材・文=井口基史
(茨城ロボッツGM)
プロフィール
茨城県出身/1979.6.26生/土浦日本大学高校を経て国士舘大学に入学。東京日産に実業団選手と入社しながら、大塚商会アルファーズ(NBDL)アルファーズでもプレーした異色の経歴を持つ。茨城ロボッツの営業責任者とGMを兼任するもB1昇格のためにGM専任を志願し、見事悲願のB1昇格を果たした。
−−その中でチームは確実にプレーオフ進出を果たしました。
上原 実際、昇格が近づくにつれ、フロントスタッフから「こんなことをしたい」「こうしたらもっと盛り上がるのではないか」と前向きな提案が出てくることも増えました。主軸となるバスケットボールで明るい結果を残すことで熱量が高まり、一人ひとりが意思をもって仕事をする環境に少しずつ変わっていったことはうれしかったです。もちろん、今在籍しているスタッフだけでなく、これまで支えてきてくれたスタッフの存在も大きかったと感じています。特に、B2リーグ1、2年目は少数精鋭の少ない人数で苦労もたくさんありましたが、熱量はB1に負けていませんでした。そんな時代から積み重ねてきたことが形になり、B1昇格をキーワードに組織がひとつになった瞬間をみることができ、満足感を味わうことができました。
−−オーナーであり、Bリーグ理事でもある堀義人氏からは様々な批判を呼ぶSNSでの発信がありました。
上原 確かにその点の良い面・悪い面は正直ありました。選手やチームが意図しないところでクラブが批判されることは、はっきり言って不本意で悔しいとの声もチームから上がりました。そういう事象が起きるたびに、選手・スタッフとは目線をそろえるためのコミュニケーションはとったつもりです。
他チームの選手・スタッフ、ファン・ブースターさんから掛けられる言葉で、私を含めみんなが謝りながら進んだことはありますし、何よりも自分たちは競技へのリスペクトを忘れてはいけないと思っていますので、オーナーの発信で選手たちの目線を外に向けてはいけないという、一つになるきっかけにもなったと思います。
−−クラブオーナーであり、リーグ理事でもある立場だとすると、他チームやバスケを愛するファンからの批判はともかく、チームにはダメージがあったんですね。
またコロナの影響でオールスターがオンラインイベント開催となりましたが、県協会と連携して東日本大震災10年の節目に『HANDS UP PROJECT!!』(https://www.bleague.jp/b-hope/hands-up/)を実施できたことは、地域の皆さんの協力なしにはできなかったはずですので、地方創生のモデルケースを「バスケットボール」で牽引していってほしいです。
−−厳しい道のりを越えてたどり着いたB1ですが、上原さんとしては新しい道に進まれます。ロボッツに残しておきたい言葉があれば教えてください。
上原 B1の世界にたどり着くには、歴史やその背景があることを自分も含めて忘れてはいけないと思います。今も最高の環境とは決して言えませんが、この環境を創るために苦労した過去に在籍してくれた選手、スタッフ、地域の方をはじめ、地元バスケットボール協会の存在などがあってこそですので、さらに高めていくことを忘れず大事にしていってほしいですね。
−−最後に上原氏にとってゼネラルマネジャーとは何かを教えてもらえますか。
上原 自分は営業責任者とGMを兼任していましたので、チームに必要な資金を営業しながら稼いできたつもりです。そういう面ではチームの魅力を一番スポンサーさんに伝えられる立場でもあったと思います。今は社長やお金を管理できる立場の人がGM兼任しているケースが多いですが、これからの世界はある程度予算を預けて、責任を持って取り組める環境が必要かもしれません。
今シーズンは「覚悟」と「徹底的に人と向き合う」というテーマで、会議では「なんじゃそりゃ?」と思われたこともあるかもしれませんが、コロナという逆境もありながら、選手たちがこたえてくれました。ただそういうスペシャルなことがいつまでも続くかは疑問です。とは言いつつも、スポンサーやファンから預かったお金の大切さや、スポンサーやファンの現実の声を直接選手に伝えられることも大切な役目でもあるので、これからのBリーグではこの役割がどのように確立されてくるのかも楽しみではあります。
大きな役割を終え次のチャレンジに進む上原氏。ロボッツ昇格の過程には様々な登場人物が活躍する色んなドラマがあったことを知ることができた。華やかに見えるB1だけでなく、B2の世界にも地域の主人公たちがいることを改めて教えてもらう機会だった。
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