2022.05.19

ホームの大声援を受けて新たな歴史を作った島根…次は完全アウェーの沖縄決戦に挑む

島根ブースターに後押しされ、セミファイナル進出を決めた安藤(右) [写真]=B.LEAGUE
1981年、北海道生まれ。「BOOST the GAME」というWEBメディアを運営しながら、スポーツジャーナリストとしてBリーグを中心に各メディアに執筆や解説を行いながら活動中。「日本のバスケの声をリアルに伝える」がモットー。

 B.LEAGUE CHAMPIONSHIP 2021-22のクォーターファイナルで、唯一GAME3で決着がついたのが松江市総合体育館で行われた一戦。島根スサノオマジックが2度の優勝を誇るアルバルク東京を迎え撃ち、スサノオブルーに染まったブースターの前で80−62と勝利を収め、セミファイナル進出を決めた。

 勝利後の記者会見の冒頭、「本当にタフなゲームだったことに尽きると思います」と言葉にした島根のポール・ヘナレヘッドコーチ。第3クォーター終盤までは一進一退の攻防の中で、リード・トラビスの3連続3ポイントシュートを皮切りに相手を突き放し、掴み取った勝利。心の底から出てきた言葉を発したようなトーンだった。

 今シーズン、大躍進を遂げた島根ではあるが、ポストシーズンは初めての経験。指揮官はこの大一番で試合前、選手たちに多くを語らなかったことを明かした。

「正直言って、僕自身も伝えることないなというところに行きつきました。選手たちもこの状況を、もう充分に理解していた。あとは気持ちを出すだけ、その中で伝えたのは『みんな、自分の胸に聞いてみろ。自分を問い正して、あとはそのことをやるだけだ』と」

 ヘナレHCの期待に応えたのが司令塔の安藤誓哉だった。昨シーズンまで所属していた古巣を相手に20得点5アシストと結果を残してチームを勝利に導く立役者となった。印象的だったのが試合開始直後に決めた2本連続の3ポイントシュート。2本目を決めてA東京がたまらずタイムアウトを請求した瞬間、目を観客席に向け、自身でユニフォームを持ってブースターを煽った。

「実は昨日、Bリーグの公式Twitterで流れていた小酒部(泰暉)選手の会見の様子を本当に冗談抜きで50回くらい見ました。負けてアドレナリン出て、結構眠れなくなって……今日も昼寝の後に、もう一度それを見ました。屈辱では無いけど、世間的には抑えられたとなっていて、今日は絶対に負けられないと思っていた。相手ベンチにもトラッシュトークしましたし、絶対にセミファイナルに行くと自分自身を鼓舞して、最初から臨みました。それで観客やブースターを煽りながら、戦いましたね」

 そして、その煽りに呼応した島根ブースター。試合が進んでいくにつれ、持っているメガホンを叩く音や拍手の音は、次第に大きくなっていく。彼らは選手を全力で後押しした。

「今日は3クォーターの終盤くらいから一緒に戦っていたというか、ブースターからは相手を引き離すエナジーをもらいました。これはアウェーでは無いことで、本当にホームコートアドバンテージの良さを感じた瞬間でした」と安藤は語った。

 チャンピオンシップ初出場にして快進撃を進める島根、次のセミファイナルは西地区のライバルでもあり、地区優勝を果たした琉球ゴールデンキングス。完全アウェーの沖縄アリーナに乗り込み、挑戦者として戦いに挑む。

「次は間違いなく、『激闘』という一言に尽きると思います。琉球のフィジカルレベルはマックスであって、それを武器に彼らはナンバー1シードを獲得しました。僕らも充分に理解しています。まずはそこに飛び込んで、今日のようなチームでの正しい戦い方を遂行して、タフに相手に挑んでいきたいです」とヘナレHCはセミファイナルでの戦いを分析する。

「セミファイナルは激闘になる」と語った島根のヘナレHC(右) [写真]=B.LEAGUE


 一方の安藤は2018−19シーズン、沖縄の地での実体験を元に「一瞬の隙も見せない」ことが勝負の鍵と明言した。

「A東京時代に経験したセミファイナルでのアウェーの琉球戦、GAME3になると沖縄滞在が6日間くらいになります。敵地に乗り込みにいく感覚でいて、再びそういう素晴らしいチャンスを得ました。今シーズンの琉球は戦う姿勢やチームのエナジーを、本当に一番(強く)感じるチーム。だからこそ、少しでもリラックスしたら、相手に一気に食われてしまう感覚でいます。沖縄の地に着いた瞬間から気を引き締めて、環境や食事など全てに順応し、準備することが必要です。僕らは今シーズンから作り上げたチームだから、日々成長しないといけない。今日も昨日より成長できたと思っているし、琉球とのセミファイナルでも同じ。毎試合を大事にして戦い、成長することが本当に優勝の鍵だと感じています」

 初のファイナル進出、それは同時に新たなクラブの歴史を作るのと同時に、同時に西地区から初めてのファイナル進出チームになることを意味する。スサノオブルーの夢を、そして島根県民の夢を乗せて、彼らは沖縄の地に乗り込む。

文=鳴神富一

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