2023.10.02
3月26日に行われた第27節の第2戦、横浜ビー・コルセアーズは前半で背負った10点ビハインドを跳ね返し、84-74で信州ブレイブウォリアーズに勝利。今シーズン最後となる横浜国際プールでのホームゲームを2連勝で締めた。
「一人ひとりが自分の仕事をコート上で表現してくれました」。試合後、青木勇人ヘッドコーチの言葉に対し、横浜BCに4連敗を喫した勝久マイケルHCも「一人ひとりの役割が本当にしっかりしている」と相手を称えた。
両指揮官が口をそろえたように、横浜BCはチーム力で信州を上回った。主役を1人に絞るとなれば意見が割れそうだが、この日のMVPに選ばれたのはチャールズ・ジャクソン。横浜BCのゴール下に君臨する男は17得点12リバウンドの活躍を見せた。
「彼はチームのために黙々と自分の仕事をやってくれてはいたのですが、前半のアテンプトが少ない状況でした。でも、もう少しインサイドにアクセントを置いて、一度コートを収縮させてから展開していきたかったです。前半はなかなかボールが送れない状況でしたので、後半はそこをチームで強調するようにと話しました」(青木HC)
前半、ジャクソンが放ったシュートはフリースローを除けばわずか1本のみ。しかし、攻撃の起点となった後半は第3クォーターで8得点を挙げ、第4クォーターでは6得点を稼いだ。なかでも試合終了残り4分7秒、大庭岳輝のアシストから倒れ込みながらもシュートをねじ込んだバスケットカントには会場が大いに沸いた。「あそこがこのゲームのターニングポイントだった」と、この一撃には河村勇輝も自分が決めたかのように両手で拳を握り、雄叫びを上げた。
今季の横浜BCのゴール下は、格段に強くなっている。その証拠に、昨シーズンの1試合平均リバウンドはB1の22チーム中18位の34.8本だったが、現在は「40.6」。B1全体で3位の数字だ。その立役者が今季から加入したジャクソンであり、背番号10は自身としても昨シーズン以上の数字を残している。
2021-22シーズンのジャクソンは計53試合でオフェンスリバウンドを156本、ディフェンスリバウンドを286本記録した。しかし、今季は45試合を消化した現時点で昨季以上のプレータイムを獲得し、前者は178本、後者は291本。さらにはデビン・オリバーとともに全試合先発としてコートに立ち続け、信州とのGAME2では10試合連続となる“ダブルダブル”を達成した。チームの躍進を担うジャクソンの存在について、青木HCは「自分の仕事にプライドを持っているのが一番大きい」と評価し、こう続ける。
「とにかく彼はチームを助けたい選手で、『チームのためであればどんな役割でもやる』と公言しているようなプレーヤーです。その中での強みはリバウンドや、ディフェンリバウンドを取ったあとにペリメーター陣と同じ速度で走れたり、追い抜くこともあったりするくらいの走力があるということ。オフェンスリバウンドに関しても、シューター陣に対して『とにかく気持ちよく打て、外れても俺が取ってやるから』と、チームを勝たせるための強いメンタリティを持ってプレーしています。あのサイズであそこまでアクティブに動けるのは本当に脅威だと思っています」
ジャクソンは今、日本での4シーズン目を送っており、プロキャリアでは最も長い期間同じ国でプレーしている。「日本の文化や人々が本当に素晴らしくて優しい。初めて来日したとき、両手を大きく広げて暖かく迎え入れてくれた日から今日という日まで本当に好きな国になっている。バスケットに関しても競技レベルがどんどん上がってきているし、それも日本を気に入っている理由だよ」と、今では充実した日々を過ごしているという。
屈強な体格に、それと相反するような愛嬌ある笑顔。信州戦では観客席にボールが飛び込んだ際、真っ先にファンを気遣う姿も見えた。
彼のように愛される人間には、ちゃんとそれなりの理由がある。48.0パーセントという現在のフリースロー成功率が向上してくれば、ジャクソンは今まで以上にビーコルブースターの心をわしづかみにしそうだ。
取材・文=小沼克年
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