2024.09.04

Bリーグ初の欧州遠征に挑む琉球の選手、スタッフが決意…岸本隆一「責任感と向上心を持って戦いたい」

琉球ゴールデンキングスがBリーグ初の欧州遠征に臨む [写真]=琉球ゴールデンキングス
バスケットボールコメンテーター

次なる挑戦は「沖縄を世界へ」

「沖縄をもっと元気に」を活動理念に2006年に産声をあげた琉球ゴールデンキングスが、今度は世界へ打って出る!

 沖縄県はもともとアメリカ文化の影響を受けていたこともありバスケ熱の高い地域でしたが、人気があるのは高校生や中学生の試合だったこともあり、お金を払ってバスケを見る文化はないに等しい状況でした。そのため、お金を払ってバスケを見ることはもちろん、前売り券を買う習慣もまだないプロバスケ元年のころ、今では信じられない方も多いと思いますが、試合当日の入場口で、無料で試合が見られると勘違いされた方から「おまえらバスケットでお金とるんか!」とスタッフが怒鳴られていた時代もありました。

 このように当時のクラブ運営は決して順風満帆ではありませんでしたが、いろんな人たちがつないできた「地域密着」、「ファンと一体となったカルチャー創り」、Bリーグ開幕以降は、沖縄アリーナ完成、Bリーグ制覇、東アジアスーパーリーグ参戦と、「沖縄をもっと元気に」という理念を追求し続けてきた結果が形になって証明され、その凄さを目の当たりにしています。

 そんなキングスが次なる挑戦として掲げたのが「沖縄を世界へ」のスローガン。すでにいくつかの施策がスタートしていますが、今回、キングスがBリーグ初のヨーロッパ遠征を実現させます。日本のプロバスケ史上、クラブ単位でのヨーロッパでの国際大会に参戦した記録がなく、その先鞭をキングスがつけることになったのです。今回、現地で歴史あるクラブに挑む想いをスタッフ、選手に聞きました。

岸本隆一「遊びに行くわけではない」

岸本隆一(右)には得意のディープスリーに期待 [写真]=琉球ゴールデンキングス


――Bリーグ全体から注目を集める欧州遠征への意気込みを聞かせてください。
岸本
日本のクラブを代表としての戦いになります。相手はイタリア、セルビアというオリンピックでメダルを獲得した経験のある強国を代表するようなクラブなだけに、私たちはアジアの代表として臨む気持ちで挑みたいと思います。もちろん遊びに行くわけではないので、責任感と向上心を持って戦いたいですし、ファンの期待が高まるような試合をしてきたいです。

――試合会場は沖縄と同じように島となるイタリアのシチリア島にあり、岸本選手といえば、島での3ポイントシュートは得意ですね?
岸本 
自分から“ココナッツスリー”と言ったことは一度もありませんが、決めたときは何かキャッチフレーズになるようなプレーをイタリアで出せたらいいと思います。島でのスリーですか。もちろん、お任せください!

――「地中海でもディープスリー!」ですね!? 岸本選手の活躍、期待しています。

桶谷大ヘッドコーチ「ゴメン(笑)、そこは僕らにやらしてくれ(笑)」

桶谷大HCは欧州遠征の意義を話してくれた [写真]=琉球ゴールデンキングス


――歴史あるクラブが一堂に会する大会に出場します。
桶谷 
やっぱり(初戦に)勝って、勝ち上がってくるであろうパルチザン・ベオグラード(セルビア)とやりたいですよね。もちろん初戦のトラパニ・シャーク(イタリア)との一戦も簡単じゃないです。パルチザンをわざわざホームに呼んでトーナメントを開催するということは、彼らのクラブとしての気合いを感じます。だからこそ、モチベーションの高いホームクラブに勝ってパルチザンと戦う! これが今回、我々のやりたいことです。トラパニだってパルチザンと試合したいはずですけど「ゴメン(笑)、そこは僕らにやらしてくれ(笑)」と言えるようにしたいですね。

――結果や試合内容いかんではヨーロッパでのキングスの知名度を高めることにつながりますね。
桶谷 
自分たちが日本で最初にヨーロッパに行くことを本当に誇りと思います。ただ、今後も日本のクラブがこのような大会に呼ばれるようになるにも、自分たちがどういう戦いができるかにかかっています。この機会を通じて、キングス以外の日本のクラブにも、チャンスが広がるような遠征にしたいです。トラパニも沖縄と同じように島にありますし、切磋琢磨して将来沖縄アリーナにも来てもらえるようになれたらいいですよね。

――このようにキングスのチャレンジが日本バスケットボール界全体に与える影響も大きいですね。欧州のビッグクラブを沖縄アリーナへ誘うチャンスになるのではありませんか?
桶谷 
いやー! やりたいですよね! ちょっとグイグイいこうかなと思っています。この機会にパルチザンをはじめヨーロッパにもどれだけ凄いクラブがいるのかを皆さんにも知ってもらうきっかけになってほしいです。

――この大会出場が将来、沖縄アリーナでの国際トーナメント開催の足掛かりになることを期待しています。

穂坂健祐アシスタントコーチ「クラブの価値を高めるチャンス」

穂坂健祐ACはチーム一丸で戦うことを約束 [写真]=琉球ゴールデンキングス


――穂坂健祐アシスタントコーチは、これまで岩手ビッグブルズ大阪エヴェッサ、琉球と3クラブで桶谷HCを支え、自身も大阪での指揮官の経験をお持ちです。今回の欧州遠征について、大会前に準備していることを教えてください。
穂坂 
桶谷HCがチームに話をしているのは、自分たちがヨーロッパに赴き、試合をする意味についてです。ヨーロッパの歴史あるクラブと対戦できる機会をいただき、彼らがどんな場所や、どんな雰囲気でバスケに取り組んでいるかを知ることもできますし、生活や文化を知ることで、バスケだけでなく、人としての成長のチャンスでもあると思います。タフな移動ではありますが、チームで一緒の時間を共有し、チームビルディングのためにも貴重な遠征になると思います。

ーー情報の少ない対戦相手への準備は難しいのではありませんか。
穂坂 
情報の少ない相手のスカウティングは正直簡単ではありませんが、すでに準備は始め、選手にどこまで伝えるべきを選別する段階に来ています。東アジアスーパーリーグ(EASL)は同一チームと複数回の対戦があり、桶谷HCが選手に伝えやすいように、相手のシステムという細かい戦術までスタンバイしますが、今回のように1回限りの対戦では、相手個人のオフェンスの特徴を伝えることが中心になるかもしれません。また相手が激しく守ってくるミスになりやすいポイントも、事前に選手に伝えられるように準備しています。

――大会前のチームの雰囲気はどうですか?
穂坂 
新シーズン1発目の試合を、歴史あるクラブたちとできることでモチベーションは高いです。特に脇真大については、肩のケガからのカムバックゲームという意味でも、チーム全体が彼の復帰を楽しみにしています。また名古屋Dから移籍の伊藤達哉のスピードは、きっとキングスブースターの大好物のはずですし、新外国籍のケヴェ・アルマ(元新潟アルビレックスBB)はプロ3年目と、まだ注目度は高くないかもしれませんが、彼の存在がジャック・クーリーのゴール下での脅威を、さらに際立たせてくれるはずです。

 パルチザンをはじめ、歴史あるクラブと同じ空気の中でバスケができる機会もらえたことに感謝したいです。この欧州挑戦が琉球ゴールデンキングスの価値を高められるきっかけにできるように、チームスタッフも含めて全員でファイトしてきますので、ぜひチームの後押しをよろしくお願いいたします。

今度は日本のクラブが世界を驚かせる

 男子日本代表が世界を驚かせた「沖縄の歓喜(FIBAワールドカップ2023沖縄ラウンド)」。

 今度はクラブ単位で世界を驚かせる番だ! その口火を琉球ゴールデンキングスがシチリアで切れるか!? 日本を、Bリーグを代表して戦う琉球ゴールデンキングスの欧州遠征に注目だ!

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