2023.07.09
琉球ゴールデンキングスの岸本隆一が7月6日、武田薬品工業株式会社とエームサービス株式会社が共催した『IBDreamめし~アスリート編~トークイベント&試食会』に出席し、自身が抱える炎症性腸疾患(IBD)について語った。
岸本は2020年3月にIBDの一種である国指定難病「潰瘍性大腸炎」を発症。現時点では完治しない病とされているが、岸本は食生活や体調管理などで寛解し、2021-22シーズンは55試合に出場。2022-23シーズンにはクラブ史上初のBリーグチャンピオンシップ優勝の原動力となる活躍を見せた。
コロナ禍の春、“国指定難病”と診断された岸本は、病気のことを知っていくうちに「思っていた以上に重たいというか、想像を超えたものだった。バスケットボール選手としてどうなっていくのか、家族もいるのでこの先どうなるかを考えると絶望感がすごかった」と、病と向き合い始めた当時を振り返った。
治療が始まると人生初の「絶食」も経験し、75キロあった体重が約9キロ減少。コロナ禍ということで入院中の面会も制限され、家族とすら会えない辛い日々が10日間ほど続いた。それでも自身の現状を受け入れ、病と付き合っていく中で、何気ない日常に幸せを感じることができるようになったという。
「絶食というのを初めて経験したので、最初はお粥みたいな病院食から始まる。それまでお粥の味とか気にすることなかったんですけど、めちゃくちゃ美味いなって(笑)。今思えばですけど、そういう期間で自分にとって何が大切なのか、何に幸せを感じていたのかというのを整理できた期間でもあった」
家族や担当医、チーム関係者のサポートを受けながら、徐々に日常を取り戻していくなかで、「病気になったことをきっかけに何か自分にとってポジティブになれる要素を探すというマインドになれた。今となっては良かったのかなと言えるくらいまできたと思います」と岸本。「些細なところですよね。普段はなかなか気づきにくい部分で幸せを感じたことが僕の中では一番大きかったと思います」と感慨深げに語った。
今回のイベントにともに登壇した元ラグビー選手の加藤広人や総合格闘家の征矢貴(パラエストラ松戸)、プロ野球・中日ドラゴンズの田中幹也など、プロアスリートの中にもIBD患者は多数おり、千葉ジェッツの原修太もその1人。岸本と原はライバルチームに所属している関係だが、共同でチャリティーTシャツを販売するなど、IBDの認知拡大を目指す社会貢献活動も行っている。
岸本は「病気をきっかけに距離も縮まって、今ではお互い会ったらまずお腹を擦り合う」と笑顔で原との関係を明かし、「自分たちの活動やプレーを通じて、少なからずいろんな方に良い影響があったら」と、IBD患者のプロアスリートとして第一線で活躍することの意義についても話した。
また、今なお潰瘍性大腸炎と向き合う患者の1人として、「病気の症状の一つでトイレの回数がすごく多くなる。できるかぎり色んな場所でトイレを貸していただけると、すごくありがたいなというのが正直なところです」と普段の生活で感じていることを明かし、「中にはお店でトイレをお借りして、たまに嫌な顔をされることもあるので、まずは病気を知ってもらうこと、病気を知った上で何か“歓迎していますよ”という目印になるものがあれば、僕たち含め病気の方は暮らしやすいのかなと思います」と、今後の社会に期待することについても話した。
この日、IBD患者の“食べたい”を叶える「IBDreamめし」を実食した岸本は、「普段気を使う食事となると味が薄い傾向になるんですけど、どの料理も美味しいですし、ケーキもクリーミーですごく幸せを感じています」と笑顔。脂質をカットした「カツ」や「ケーキ」などのレシピは、武田薬品工業の特設サイト「IBDステーション」にて公開されている。
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