2019.08.04

河村勇輝、インターハイ制覇は「通過点」…これからも続く福岡第一の挑戦

プレッシャーに打ち勝ち、夏の全国タイトルを手にした福岡第一[写真]=佐々木啓次
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 チームに勢いを与える渾身のガッツポーズだった。

 第1クォーター開始3分53秒、福岡第一高校の河村勇輝(3年)が相手のパスをカットすると、一気にトップギアに入った。バックコートからスピードに乗った河村は、誰にもパスすることなく、ファウルを受けながらもレイアップを沈めてバスケットカウントをマーク。「自分としても手ごたえを感じる点を取れた」こともあり、拳を振り下ろし雄叫びを上げた河村だが、このガッツポーズにはもう1つの意図があった。

「チームのみんなに向けてもやりました。試合前に井手口(孝)先生から『今日はMAXでいけ』と言われたので、自分もチームメートに『出だしから飛ばしていくからついてきて』と言いました。なので、前半から雰囲気をよくするためにやろうと思っていました」

河村のワンプレーは、チームに勢いを与えた[写真]=佐々木啓次

 このワンプレーで早くも10点リードを作った福岡第一は勢いに乗った。その後も北陸高校(福井県)を圧倒し、河村は縦横無尽にコートを駆け抜けて得点、アシストを積みあげ、チーム最多の21得点6アシストをマーク。他の先発メンバーが交代を繰り返しながら試合に出る中、河村は開始から約33分間コートに立ち続け、絶対的司令塔として試合を支配した。最終スコアは107-59。「令和元年度全国高等学校総合体育大会バスケットボール競技大会(インターハイ)」のチャンピオンに輝くとともに、福岡第一は今年最初の全国タイトルを手にした。

 インターハイ2位以内になれば、今年のウインターカップで福岡県に与えられる枠を3つにできることから、「枠を取らないといけないという緊張感もあって、準決勝までは勝つことに慎重になりすぎていた」という河村。「今日は優勝するだけということで、純粋にバスケットを楽しもうという気持ちが、うまくチームに貢献できたのがよかったかなと思います」と、決勝戦を振り返った。

決勝ではチーム最多の21得点6アシストをマーク[写真]=兼子慎一郎

 河村はこうも話す。「素直に嬉しいですけど、自分たちが目指しているのはウインターカップも優勝して2冠を取って終わることです。これは1つの通過点」。それは、井手口コーチも一緒だ。「(インターハイは)新人戦みたいなものですから。やっぱりウインターカップですね」。

 指揮官は今後へ向けレベルアップしなければいけないポイントを問われると、「全部ですね」と真剣な眼差しで返す。「小川(麻斗)はディフェンス。内尾(聡理)は自分でアタックする姿勢。神田(壮一郎)はもっと走ってほしい。(クベマジョセフ)スティーブ(いずれも3年)はダンクに行くのかステップを踏んでやるのか、もう少し個のレベルを上げた方がいい」と続けたが、河村についてだけは「背が伸びてくれればいいんですけど(笑)」と冗談交じりで答えた。きっと、井手口コーチの目から見ても、河村の実力は“申し分なし”ということなのだろう。

ウインターカップで再び歓喜の輪を作れるか[写真]=佐々木啓次

 今冬のウインターカップは、これまでの男女各50校から60校に出場校が増えると言われている。つまりは、出場校が減った今夏のインターハイよりも険しい道のりが待っているということだ。

 苦杯をなめたチームは今大会の福岡第一の映像やデータをもとに、さらなる対策を練って冬に備える。福岡大学附属大濠高校(福岡県)や洛南高校(京都)など、夏を逃した強豪校たちもウインターカップには出場する可能性が大いにある。

 勝って当たり前——。未だ無敗を誇る今年の福岡第一は、常にそのプレッシャーと戦っている。それは河村も例外ではない。

「プレッシャーは常に感じていますし、勝っても競ることはダメとか、他のチームが頑張ったなっていう感じになる。追われる立場ですけどチャレンジャーという気持ちを持ってウインターカップに戻ってこれればいいなと思います」

 福岡第一、そして河村勇輝の挑戦は、まだ5合目にきたばかりだ。

文=小沼克年

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