2020.12.06
米須玲音(2年)、河村勇輝(3年)の両ポイントガードよる勝負は、河村に軍配が上がった。
“勝負”というのは、どちらの方が多く得点を取るか、それを演出するアシストをどちらが多く出せるかではない。単純に、司令塔としてチームを勝利へ導けるかどうかだ。
決勝進出をかけて臨んだ12月28日の「SoftBank ウインターカップ2019 令和元年度 第72回全国高等学校バスケットボール選手権大会」、東山高校(京都府)は福岡第一高校(福岡県)と対戦。前半はインターハイ王者相手に主導権を握る試合運びを見せた。
チームの中心でタクトを振るう、2年生ポイントガードの米須。「前半はリードされるかもしれないと思っていたんですけど、思っていたよりも自分たちが走れて前半を気持ちよく終われました」と振り返ったように、東山は相手のお株を奪うような速攻を展開。逆に福岡第一には速攻を出させず、38-28で前半を終えた。
しかし、第3クォーターに流れは一変。この10分間で11-30とされてしまい、最終スコア59-71で東山は敗戦を喫した。
その第3クォーター、ゲームを支配したのは福岡第一の河村勇輝だった。
開始2分40秒、3本連続でフリースローを決めると、そこから3ポイントも沈めて連続8得点。ギアを上げたスピードスターの活躍に引っ張られるかのように、周りのメンバーの足も動きだす。福岡第一は、お家芸の高速バスケットを立て続けに披露して試合をひっくり返した。
この間、大澤徹也コーチからもゲームメイクをするよう促された米須だが、「言われてからはでき始めたんですけど、その時にはもう遅かったです。ガードとして失格、全然ダメだったです」と唇をかんだ。
「司令塔としてゲームをコントロールをしなきゃいけなかったですけど、第3クォーターは周りを頼りすぎて。フリーオフェンスを選択しすぎたのが流れを変えてしまった大きな原因だと思います」
1年生の頃からスタメンポイントガードを務める米須は、昨年のウインターカップでも河村と対峙しており、当時は「何もできなくてすごく反省した」。そこから河村をライバル視するようになり、今夏のインターハイで再びマッチアップ。チームは敗れるも「五分五分とまではいかないけど、戦えた」。
そして、交歓大会という位置づけではあったものの、10月にチームは福岡第一から白星を奪う。「ウインターカップで勝てば、本当の勝ちになる」。米須はそう意気込んで、今大会での“再戦”を心待ちにしていた。
しかし、集大成にかける“3年生の意地”は、米須の予想を遥かに超えていた。「河村さんはメンタルがすごくて、僕の上の上をいっていました。完敗です」
チームの司令塔として劣勢を自らのプレーで跳ね返した3年生の河村。それに対し、流れを食い止められなかった2年生の米須。2人によるマッチアップは、高校生活ではこの日が最後となった。
試合が終わり、互いに健闘を称え合う。河村が米須に言った。
「来年、絶対優勝しろよ」
福岡第一の河村が、ライバルチームに言う言葉ではないかもしれない。だが、きっとそれは河村がそれだけ米須のことを認めているという、一種のエールだ。
米須も河村の気持ちは十分伝わった。試合後、ブザーが鳴った時のことを思い出すと、言葉を大いに詰まらせた。「河村さんから『来年優勝しろよ』という声をかけられて、その一言で、やっぱ、あの、何て言うんですかね…………」
インタビュー中は目を真っ赤にしながらも、決して涙は流さなかった。
「来年は自分がキャプテンになると思います。ゲームコントロールだけでなく、コート外でもキャプテンらしく仲間を引っ張っていけるよう、生活面も一つひとつ見直して、強豪校らしく戦っていきたいです」
来年、日本一のポイントガードになるために。
文=小沼克年
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