2019.12.27

初の徹底マークに苦しんだ黒川虎徹「人生で一番悔いが残る」…高校3年間は「自分らしくできた」

大会屈指のポイントガードは2回戦で姿を消した[写真]=伊藤 大允
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「僕が相手の監督だったら虎徹をフェイスガードするんですよ。でも、3年間ずっとされてこなくて、最後の最後で久夫先生がやってきました」

 東海大学付属諏訪高校(長野県)と明成高校(宮城県)による「SoftBank ウインターカップ2019 令和元年度 第72回全国高等学校バスケットボール選手権大会」の2回戦。試合開始直後、東海大諏訪の絶対的司令塔・黒川虎徹に対し、明成の佐藤久夫コーチは12番の木村拓郎(ともに3年)をフェイスガードでマークさせた。

 この時点では東海大諏訪の入野貴幸コーチも「想定内」。しかし「それに対する練習が今までできたかというとできていなくて、この全国の大舞台で初体験になってしまった」。「やっぱりそうだよな……」と気が回り、指揮官はベンチでも動揺を隠せなかった。

 これで自由を失った東海大諏訪。6点ビハインドで試合を折り返すも、後半は相手の高さと機動力を前に突き放されて78-104で敗れた。

「入野先生とも自分がフェイスガードされたら嫌だなと話はしていたんですけど、今までされたことはなかったですね。その状況でも自分が打破しなければいけなかったですけど、後半は相手も強く当たってきて決めきれなかったです。自分の意志の弱さだと思います」

試合後、黒川は目を潤ませながら試合を振り返った。

黒川をマークした明成の木村[写真]=伊藤 大允

 入野コーチの熱心な指導に憧れて東海大諏訪の門を叩いた黒川は、1年次から冷静なゲームメークを武器にチームの先発ポイントガードを担ってきた。「自分が闘争心を持ってやらないとチームの雰囲気ものらない」と、学年が上がるに連れてリーダーとしての自覚も芽生え、昨年はインターハイでベスト4、ウインターカップはベスト8の成績を残した。

 しかし、キャプテンとして臨んだ高校ラストイヤーは夏、冬ともに2回戦敗退。この3年間を「自由にやらせてもらった分、自分らしいバスケットが体現できた」と話す一方で、不完全燃焼で終わったことについては「チームを勝たせられなかったのは3年間で一番……、この人生で一番悔いが残る試合だったような気がします」と言葉を詰まらせた。

厳しいマークに遭いながらも28得点をマークした[写真]=伊藤 大允

 3年間、互いに信頼し合った恩師を胴上げする夢は叶わなかった。しかし、この悔しさを糧にこれからも成長し続けることが、入野コーチへの恩返しにもなる。

 将来はプロになる夢を抱く黒川は、「プロになって先生が自慢できるような選手になれれば、先生も誇りに思ってくれると思います。この3年間は無駄じゃなかったですし、これからの糧にしてやっていきたいです」とさらなる飛躍を誓う。

 入野コーチも「彼が入学した時は物静かな子でしたが、去年の先輩たちの想いを受け継いであれだけ闘争心むき出しにやってきたことを考えると、虎徹のおかげでチームも成長できましたし、自分も成長させてもらえました。虎徹自身も大きく成長できたと思うので、次のステージでこの悔しい思いをぶつけてもらいたいです」とエールを送った。

文=小沼克年

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