2023.07.26

【WUBS開幕特集】東海大は2年連続の舞台…『原点回帰』で泥臭く、ひたむきに戦い抜く

昨年のインカレ王者、東海大がWUBS初優勝を目指す [写真]=WUBS
フリーライター

8月10日から13日の期間、国立代々木競技場第二体育館にて「Sun Chlorella presents World University Basketball Series(WUBS)」が開催。同大会は昨年、アジアの大学バスケ界がより高みを目指すために創設された国際バスケットボール選手権大会であり、第2回目となる今回は計8大学が2代目WUBSチャンピオンを目指す。『大学バスケの新時代』と銘打たれた真夏の祭典を前に、注目チームをピックアップした。

取材・文=小沼克年
写真=兼子愼一郎

■『原点回帰』を掲げ、昨年以上の守備力で勝利を目指す

 計4チームによる総当たりで行われた第1回大会は、準優勝に終わった。惜しくもWUBS初代王者の称号を手にすることはできなかったが、昨シーズンの東海大学は1年を締めくくるインカレ(全日本大学バスケットボール選手権大会)を2年ぶりに制覇。陸川章ヘッドコーチは、WUBSでの経験が日本一奪還の要因のひとつになったと振り返る。

「ここ数年はコロナ禍でチームでの海外遠征ができませんでした。その中で昨年、選抜チームではなくアジアの単独チーム同士が国際ゲームで戦えるという経験をさせていただきました。日本の試合だけでは味わえない貴重な経験ができたことは非常によかったですし、あの経験が最後のインカレ優勝にもつながったと感じています。本当に感謝しかないです」

WUBSに向けて練習を重ねる東海大 [写真]=兼子愼一郎


 指揮官が特に手応えを感じたと口にするのは、東海大のアイデンティティであるディフェンスだ。前回大会、チームは国立政治大学(チャイニーズタイペイ)との初戦を90−74で制すと、続くペリタハラパン大学(インドネシア)戦では91−35で完勝。優勝決定戦となったアテネオ・デ・マニラ大学(フィリピン)戦は59−68で競り負けたものの、陸川HCは「大会を通じてそこまで得点を取られたわけではなく、海外のチームにも機能したと思っています。シュートが入らない時間帯でも『どれだけ得点を与えないか』ということにフォーカスできました」とポジティブに捉える。

 選手たちも陸川HCと同様、ディフェンス面で好感触を得たと口をそろえた。今季のキャプテンを務める黒川虎徹が「ディフェンスのボールマンプレッシャーやインテンシティは本当によかったと感じています」と言えば、同じく4年生の西田公陽も「チームとしても個人としても成長できた大会でした。個人としては自分の持ち味のディフェンスが結構ハードにできましたし、当たり負けもしなかったです」と前回大会を回顧。

 今シーズンの東海大は、昨年のインサイドを担った張正亮(現・富士通Red Wolves)と金近廉(現・千葉ジェッツ)が抜けたため、よりサイズダウンした布陣を敷く。その状況下で『原点回帰』というテーマを掲げ、陸川HCを筆頭に紡いできたディフェンス、リバウンド、ルーズボールを徹底し、どのチームよりも泥臭く勝ちを掴みにいく。昨年以上のディフェンス力とハッスルプレーを貫き通すことが、WUBS優勝のためにも必要となることは間違いないだろう。

■春の悔しさをぶつける西田公陽「エースとして点を取る」

 とはいえ、相手よりも得点を取らなければ試合に勝つことはできない。今年の得点源は誰なのか――。そう問われたとき、「自分がエースとなって得点を取れるようしたい」と意欲を示すのは西田だ。

 前述した堅い守備に加え、思い切りのいい3ポイントシュートを武器とするシューティングガードである西田。だが、5月に行われたスプリングトーナメント(関東大学バスケットボール選手権大会)では準々決勝の専修大学戦で8本中1本成功という3ポイント確率で試合にも敗れると、翌日の大東文化大学との順位決定戦で放った9本の長距離砲は1本もリングを通過しなかった。

東海大の得点源として期待される西田 [写真]=兼子愼一郎


「どん底を味わった」

 西田はそう感じるほどにショックを受けた。しかし現在は「どん底を味わった分、ここからは這い上がっていくだけ」と気持ちを切り替え、WUBSでも自身の仕事を全うすることに照準を合わせる。

「得点に波があるようではチームのエースは務まらないと思っているので、 コンスタントに得点を取れるように頑張りたいです。でも、春のトーナメントの経験も踏まえて気負いすぎると空回りしてしまうと思うので、まずはやるべきことを徹底して、試合を振り返った時に自分が一番得点を取っていたという形が理想的ですね」

■「チャレンジャー精神」で初舞台に挑む即戦力ルーキー

 チームとしては2年連続の出場となるが、今春に加入したルーキーたちにとっては今大会が初めての舞台となる。さらに現在の1年生はコロナウイルスの影響をもろに受けた世代だ。福岡第一高校時代、世代屈指のポイントガードとして日本一にも輝いた轟琉維でさえもチームでの海外遠征は実施できず、初の国際大会を経験できたのは昨年8月にU18日本代表として出場したアジア選手権だった。

 東海大進学後は即戦力ルーキーとして活躍中の背番号2は、「スピードはある程度通用しているとは思うんですけど、フィジカル面がまだまだです。身長が低い(169センチ)ので相手にポストプレーをされてやられてしまうことが多いので、もっとフィジカルを鍛えていかなきゃいけないなと感じています」と現在の課題を口にする。

スピードが武器のPG轟 [写真]=兼子愼一郎


 初めて海外の単独チームと対戦するWUBSへ向けては、「相手を60点以下に抑えることをチームの目標にしているので、まずは自分たちのディフェンスがどれだけ通用するか」をポイントに挙げ、オフェンスについては「個人的には3ポイントの確率を上げることとターンオーバーを減らすことを意識して、チャレンジャー精神を持って臨みたいです」と意気込む。

■初戦から山場、ラドフォード大との対決なるか

 WUBSは、バスケットを通して国境を超えた交流を図れる貴重な場だ。陸川HCも「まずはいろんな国の選手たちと友好関係を築いてほしいと思っています」と大会の意義を説く。しかし、その中でも「コートに立てば国際ゲームです。その点に関しては真剣勝負」と言い切り、「選手たちには日本代表というプライド持って戦ってほしい」と奮起を促す。

 チームは2年連続で国立政治大と初戦で当たることが決まった。昨年のリベンジに燃える相手なだけに、いきなりの山場を迎える。それを乗り越えた2回戦、チームとしてはアメリカから参戦するラドフォード大学との対戦を熱望していると陸川HCは言う。

「国立政治大も当然いいチームですし、昨年は我々に負けているので初戦に懸けてくると思います。でも、私自身も選手たちも、そこに勝ってラドフォードとやりたいです。本場アメリカのディビジョン1にいるチームと対戦できることは滅多にないことですし、その中で我々のバスケットのどの部分が通じて、どの部分が通じないかを体感したい。そのチャンスを掴むには、やはり初戦が大事だと思っています」

ラドフォード大に挑戦するためにも「初戦が大事」と陸川HC [写真]=兼子愼一郎


 国立政治大との初陣へ向け、士気は高まっている。8月11日の11時、両者が代々木第二体育館のコートに立つその瞬間が、早くも待ち遠しい。

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