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8月10日から13日の期間、国立代々木競技場第二体育館にて「Sun Chlorella presents World University Basketball Series(WUBS)」が開催。同大会は昨年、アジアの大学バスケ界がより高みを目指すために創設された国際バスケットボール選手権大会であり、第2回目となる今回は計8大学が2代目WUBSチャンピオンを目指す。『大学バスケの新時代』と銘打たれた真夏の祭典を前に、注目チームをピックアップした。
取材・文=小沼克年
「HIGHLANDERS」の愛称で親しまれる同大は、昨年、仙台大学附属明成高校のOB・山﨑一渉が進学したチームだ。所属するビッグサウスカンファレンスでは昨シーズン3位の成績を収めた。
指揮を執るのは、2023−24シーズンで就任3年目を迎えるダリス・ニコルズヘッドコーチ。指揮官は今回の来日にあたり、「バスケットボールを通して世界を知ることができるのはとても光栄なことです。チームのレベルアップを図るとともに、日本という国、新しい文化を学び、深堀りできるようないい機会にしたい」とコメント。ラドフォード大にとって8月はプレシーズンとなるが、今大会をシーズン開幕へ向けての貴重な場と位置づけ、さらなるレベルアップを見据えている。
「昨シーズンよりもスピード感のあるチームづくりをしていきたいと思っています。特にガード陣は素晴らしい選手が多いので、彼らを中心に、より自由なオフェンスを展開したい。もちろん、ディフェンスにおいても昨年よりレベルアップしたチームを目指します」
「違う国の選手たちと対戦できることを楽しみにしているよ。勝ちに行くことももちろん大事だけど、新しい選手も入ったので(開幕へ向けた)チームづくりも大事にしたい。あとはやっぱりイブ(山﨑)の母国でプレーできること、文化を体験できることが非常に楽しみだね」
ジャイルズもスミスと同様、「イブと日本でプレーできることをすごく楽しみにしているよ。ラドフォード大にとってはプレシーズンなので、自分たちのチームづくりを大事にして大会に臨みたい」と意気込みを語った。
そして、チームの誰よりも日本のファンから熱い視線を浴びるであろう山﨑一渉は、渡米後はじめての凱旋試合となる。
仙台大明成でのキャリアを振り返ると、山﨑は入学当時から6月にこの世を去った佐藤久夫コーチに背番号8を託された。憧れの八村塁(ロサンゼルス・レイカーズ)が背負った偉大な番号だ。
1年生の頃から199センチの上背がありながらも、最も得意とするのは3ポイントシュート。次代を担う大型シューターとして大きな注目を浴び、2年次のウインターカップ決勝では同点で迎えた残り5秒に自身25点目となるジャンプショットを沈め、仙台大明成に6度目の冬の日本一をもたらした。
世代別に日本代表にも選ばれ、高校3年の夏にはラトビアで開催されたU19ワールドカップにも出場。最終戦となった韓国との一戦では32得点を記録し、大会を通じて平均14.6得点、3ポイント成功率に関しては同43.9パーセント(41本中18本成功)という高確率で射抜いた。
高校時代は頂点にも立ち、世界でも印象に残る活躍をしたと言えるだろう。だが、新たなチャレンジとなった昨シーズンは「本当に苦労した1年」と振り返り、山﨑はこう続ける。
「周りと一番違うなと感じたことは、熱量です。チームメイトのみんなは日頃から『勝ちに行くぞ』っていう気持ちが本当に出ていて、常に試合を想定したシリアスな雰囲気の中で練習をしています。毎日自分よりも上手い選手たちとプレーすることで成長できたとも感じていますけど、自分としては自信を持ってプレーすることがあまりできなかったです」
フレッシュマンとして臨んだ昨季は、全36試合中33試合で出場機会を得た。しかし、プレータイムは平均8.8分、3ポイント成功率も22.9パーセント(35本中8本成功)に留まり、山﨑は「まず、試合のスピード感が違いました。オフェンスでもディフェンスでもどんどんスピーディーに展開されていくので、最初は慣れなることができなかったです。あとはフィジカルやジャンプ力といった運動能力の面でも、やっぱりアメリカは本当にすごいんだなと改めて実感しました」とレベルの高さを身にしみて感じたようだ。
それでも、山﨑をラドフォード大へ迎え入れたニコルズHCは「フレッシュマンでいつ試合に出られるかわからない状況でも自分をコントロールし、日々闘争心を燃やして努力し続けていた」と評価。山﨑自身も「英語をできるだけ早く完璧に近づけて、自分の持っている強みに対して自信を持ってプレー できればもっとチームに貢献できると思います」と話し、来たるWUBSへ向けては「もちろん優勝を目指す」と答えた。
ラドフォード大は初戦で韓国の高麗大学校と対戦。勝敗次第では東海大学、白鷗大学と激突する可能性もあり、東海大にはU19でチームメイトだった元田大陽(4年)とハーパー ジャン ローレンス ジュニア(3年)、白鷗大には高校時代の同期・丹尾久力(2年)や後輩の八重樫ショーン龍、内藤晴樹(ともに1年)もいる。
「自分は今、たくさんの方々の支えがあって夢であるアメリカでプレーできています。日本の方々の前でプレーすることは自分にとって特別なことですし、他の国のチームも参加するので、色々なものを吸収して成長につなげたいと思います」
日本でのプレーが山﨑のさらなる進化の引き金となり、ラドフォード大をより高みへと押し上げる原動力となるはずだ。