2023.05.19

山﨑一渉インタビュー…コーチ、チームメートに恵まれた1年目を終え、さらなる飛躍を目指す

ラドフォード大1年目のシーズンを終えた山﨑一渉にインタビュー [写真]=Rob Simmons/Radford Athletics
ロサンゼルス在住ライター

 昨年、仙台大学附属明成高校(宮城県)から全米大学体育協会(NCAA)1部(以降DⅠ)のラドフォード大学に進学した山﨑一渉。ポストシーズンも含め全36試合中33試合に出場、1試合平均8.8分の出場で2.2得点1.2リバウンドのスタッツを残した。毎試合のように出場時間を得たが、ベンチからの出場でプレー時間も少なかったことは、山﨑にとってこれまでにない経験で、精神的な苦しみが大きかったようだ。

 しかし、コーチのはからいでシーズン前にワシントン・ウィザーズの練習場に連れて行ってもらい、当時同チームに所属していた高校の先輩で憧れの八村塁(現ロサンゼルス・レイカーズ)と対面できた経験が、山﨑を大きく後押しした。

 シーズン中盤とシーズン後、ラドフォード大での1年目について山﨑に聞いた。

取材・文=山脇明子

高校の先輩、八村塁からのアドバイス

――1年目のシーズンは、ポストシーズンのカンファレンス・トーナメントのあと、“カレッジバスケットボール・インビテーショナル”にも出場し、結構長いシーズンでした。この1年を振り返っていかがですか。
山﨑 全てのことが新しくて、NCAAのDⅠのレベルだったり、英語の面だったり、すごく苦労した1年間でした。数分でも試合に出場するチャンスをもらえましたが、そのチャンスをうまく活用できた試合もあれば、できなくてそのまま終わってしまった試合もありました。やはり本当に苦しんだ1年間だったと思います。

――そんな中で、自分がすごくできたと思うところはどんなところですか。
山﨑 自分としては、試合に出られないという経験があまりなかったので、最初はメンタルが結構やられていました。そんな時、ウィザーズの練習場に行って、塁さんと会えて、「1年目が一番辛いよ」という話をしてもらいました。自らが経験していることを乗り越えたから今の塁さんがあると思いますし、「NBA選手になりたいならコートの中では、日本人でいちゃ駄目だよ」と言われたので、自分なりに意識して、そこでやめないで、練習や自主練で継続して頑張られました。

――当時ウィザーズに所属していた八村塁選手に会いに行ったのは、大学のシーズン前ですよね?
山﨑 はい。シーズン前です。ジェームズ・ハリングアシスタントコーチとティモシー・ピートACと一緒に練習場に行かせてもらいました。(ラドフォード大のあるバージニア州はワシントンD.C.と隣接しているため)最初は日本大使館に行くと言われていて、着いたらウィザーズの練習場で、サプライズみたいな感じでした。その時に塁さんから「ここまできたいならコートの上では日本人でいちゃダメだ」と言われて、本当にそれが自分の心に響いて、日本人らしさを持ちながら、アメリカ人みたいにもっとガツガツいけるようにコートの中ではやろうと思いました。

「コートの上では日本人でいちゃダメだ」という八村のアドバイスが山﨑を後押し [写真]=Rob Simmons/Radford Athletics


――その八村選手がプレーオフですごい活躍をしていますが、試合は見ましたか?(インタビューは西地区ファーストラウンドの対メンフィス・グリズリーズ第1戦で八村がチーム最多の29得点を挙げたあと)
山﨑 見ました。ルームメートもみんな塁さんのことを知っていて、僕が同じ高校出身ということも知っているので、みんなで塁さんの話で盛り上がりました。

――初めての大学のシーズンで苦しんでいる時、キャプテンのジョシア・ジェファーズ選手が励ましてくれたのですよね?
山﨑 はい。彼はコロナとかトランスファーとかいろいろ本当に苦労して、一時期(コロナ感染の影響で)プレーができないかもしれないというとこまでいったので、自分のそういう経験とか話してくれました。「考えすぎないで。まだ1年生なんだから思い切ってやっていい」と言ってくれました。

――シーズンが終わった時にキャプテンから何か言われましたか?
山﨑 僕がこの1年間、どれほど成長したかということを言ってくれました。僕があまり試合に出られていなくても、チームのために力になろうとしているところをずっと見てくれていて。英語の部分の上達もそうだし、「本当に一渉を誇りに思うよ」と言ってもらって、「みんなの上からダンクして、自信を持ってプレーすれば、NBAにいけるポテンシャルがあるから」と励ましてくれました。

山﨑を支えてくれたキャプテンのジェファーズ(右) [写真]=Rob Simmons/Radford Athletics


――それはうれしいですね。シーズン後、コーチと来季以降について何か話しましたか?
山﨑 全員のコーチ一人ひとりとミーティングがありました。一緒に塁さんに会いに行った(ハリング)コーチからは、「塁さんが言ったこと覚えているか?」と言われて、「1年目が一番辛い。でも、その中でもやめずにコツコツ頑張ったことは、これからの糧になるし、次からは主力として、もっと試合にガンガン絡んでいってほしいから、ハードワークを続けてやっていれば、次のシーズンはすごく大きなシーズンになる」と言われました。

1年目のシーズンで得た成果と課題

――アメリカの大学で初めてのレギュラーシーズンを終えて、その後、カンファレンス・トーナメントがありラドフォード大も頑張っていましたが、1試合負けたら終わりというトーナメントの経験はどうでしたか。
山﨑 日本だとトーナメントが多いんですけど、アメリカで初めて経験して、相手のチームも自分たちのチームも熱量が今までとは全然違っていて。何もわからないことだけで、ついてくだけみたいな感じになってしまったんですけど、競争心とかそういうところを間近で見られて、すごくいい経験ができました。

――コーチも言っていたように、今後はその舞台にもっと立つことになると思いますが、練習などで、その辺をイマジネーションしながらやるようなことはありますか?
山﨑 年齢が上がるごとにプレッシャーがかかった場面で自分がやらないといけないという立場になってくると思います。そこで結果を出すために日頃の練習だったり、ワークアウトだったり、そういうところで毎日こなすことが大事だと思うので、そこは意識しながらやっています。

――カンファレンス・トーナメント後のカレッジバスケットボール・インビテーショナルでも熾烈な戦いをしていましたね。準決勝で敗れて全試合が終わったあとには、みんなでビーチに行って楽しそうでした。1シーズン全ての試合を戦い終わったあとはどうでしたか。
山﨑 全員が、僕のことをすごく気にかけてくれて、一人ひとりと濃い思い出があるぐらい、本当に充実した時間を過ごせたので、次のシーズンで戻ってこない選手たちのことを考えると本当に寂しいというのはありました。試合が終わったあとは、みんな涙して…。

――山崎選手も泣いてしまった?
山﨑 はい、泣きました。濃い1年でした。本当にチームメートとコーチに恵まれていると感じます。

――チームで一番仲がいいのは誰ですか?
山﨑 一番一緒にいる時間が多いのは、やはり同じところに住んでいるフレッシュマン(1年生)のみんなです。ワークアウトとかは(背番号)3番のケニヨン(ジャイルズ)とよく一緒にします。彼はシーズン中、僕がうまくいかなかった時に毎日シューティングに誘ってくれました。

――ジャイルズは身長180センチで、本当に努力をしてDⅠの大学に入る道を掴んだと思いますが、一緒にいてそういうのを感じますか?
山﨑 彼は、身長は低いんですけど、すごくオフェンスの力があって、ゾーンに入ったら本当に止まらない選手です。アメリカに来て、サイズだったりスピードだったりというのは本当にすごいと思いましたが、アメリカ人はみんなハートを持ってプレーしていると気づいたきっかけになりました。

――1月に話を伺った時、練習でのチームメートの競争心について、「日本にいた時は、自分もそうやってやろうと意識していたんですけど、こっちに来てみんなもっとすごくて、気持ちで引いてしまう部分とかがすごくあって、そこはまだまだです」と話していました。その後、大分慣れましたか?
山﨑 そうですね、大分。僕が負けたらめちゃくちゃ「イエーイ」って言われるし、そういうので悔しい思いを結構するので、もう本当に負けたくないなって。

――自分はかなり負けず嫌いな方だと思いますか。
山﨑 そうですね。結構あおられると(笑)。

――アメリカの選手ってチームメートでも、練習ですごくあおるじゃないですか(笑)。
山﨑 そうなんです。だからみんな、僕があおられると入っちゃうってわかっていて、わざと面白がってというのはあります(笑)。

――山﨑選手のこれからが楽しみです。来シーズンまでにどういう面に取り組み、どういう面に気をつけていきたいと思っていますか?
山﨑 アメリカの選手には技術がすごくあるので、そこに重点を置いて取り組まないといけないということと、安定したプレーをしてミスを少なくすること。やはりそれらがカギだと思います。

8月、山﨑が所属するラドフォード大が来日。日本のファンの前で雄姿を披露する [写真]=Rob Simmons/Radford Athletics


*ラドフォード大は、8月10-13日に国立代々木競技場第二体育館で行われる「Sun Chlorella presents World University Basketball Series」に参加する

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