2024.01.31
みんなと一緒に、コートで全てを出し切るはずだった。しかし、西田公陽は大学生活最後の舞台に立つことができず、東海大学もあと一歩のところで日本一を逃した。
『第75回全日本大学バスケットボール選手権大会(インカレ2023)』の準決勝終盤、西田にアクシデントが襲った。わずか1点リードという状況でのリバウンド争いで、右足首を負傷。最終的にチームは勝利したものの、西田はこのプレー以降コートには立てず、ベンチへ下がった直後にシューズの紐を解いた。
「明日は気合いで出てくると思いますよ」
専修大学との準決勝後、そう話したのは西田陽成。公陽の1つ下の弟であり、ポジションも同じシューティングガード。ある意味チームの誰よりも兄の気持ちがわかる人間だ。だが、足首の状態は思っていた以上に深刻だった。
「昨日の時点で『明日の決勝は出られないかも』という感じはしていました」。公陽の言葉に対し、陸川章ヘッドコーチは決勝当日までの様子をこう明かした。
「試合後にトレーナー陣がケガをしたシーンを見返してくれました。もうその時点で、『これはダメだと思います』と。彼自身も今日の朝にいろいろと治療したようですが、私の部屋に来て『ダメです』と伝えてくれました。公陽のお父さんも心配していましたので、連絡を取り合って『次(のステージ)もあるので無理はさせません。陽成がやりますから』と伝えました」
公陽の気持ちが沈んでしまったのは言うまでもない。しかし、「今まで一緒にやってきたチームメートがいますし、自分の分まで仲間がやってくれると信じました」とすぐに切り替えた。決勝前夜には兄の優大(シーホース三河)からも電話がかかってきた。「陽成に託せ。あいつならやってくれるだろう」。公陽は「あとはやるだけだ」と、陽成の背中を押した。
「チームメートは全部出しきってくれました。結果はついてこなかったですけど、本当にこのチームでよかったなって思います」
ベンチからチームを鼓舞し続けた公陽は仲間をねぎらい、「自分が出られなかったこの悔しさというのは、次の舞台で晴らせるようにまずはしっかり治したいです」と前を向いた。キャプテンの黒川虎徹は、最後のコートに立てなかった同期についてこう話した。
「公陽は本当にエースとしてチームを引き上げてくれました。練習から誰よりもハードワークしてくれたので、そういった部分でもリスペクトしています」
昨年のインカレでは、全試合でスターターを担い2年ぶりの大学日本一に貢献。「入学した直後はコロナもありました」と言うように、なかなか思うようにプレーできない日々もあった。公陽としては怪我にも悩まされ、結果的にインカレ決勝の舞台には昨年しか立てていない。
「1、2年生の時はケガでインカレに出られなくて、去年は優勝できて、でも、今年はまたけケガしてしまって…。悔しい思いはあります」
それでも公陽は言う。「今までやってきたことは間違いではなかったですし、東海に来てオフコートの部分でも『人としてどうあるべきか』をたくさん教えてもらいました。ここまで来られたのもたくさんの方の支えがあったからですし、そういったことにも感謝して次のステージに生かしたいなと思います」
まずはケガを治すことが最優先。そこからまた立ち上がり、公陽は新たなチャレンジをスタートさせる。目標として追いかけるのは、尊敬する兄・優大の背中だ。
取材・文=小沼克年
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