2024.10.03
12月17日に行われた『第75回全日本大学バスケットボール選手権大会(インカレ2023)』男子決勝戦、白鷗大学は東海大学との激闘を制し、2年ぶり2度目の大学日本一に輝いた。
まだまだ試合の行方がわからない第3クォーター序盤、脇真大には劣勢の場面でも「勝てる」と感じた瞬間があったようだ。
この大一番で17得点6リバウンド4アシストの活躍を見せた脇は、今大会の大会得点王と最優秀選手賞にも輝いている。しかし、決勝戦では後半開始1分25秒に3つ目のファウルを宣告され、我慢の時間帯が続いた。この瞬間、コート上の脇とベンチで指揮を執る網野友雄ヘッドコーチが互いの顔を合わせた。
「3つ目のファウルしてしまったんですけど、 あそこで交代されても他のメンバーがやってくれます。その中で網野さんが自分を出し続けてくれたので、もう一度気持ちを切り替えて冷静にプレーすることができました」
白鷗大は第3クォーターでペースを握られ、最後の10分を前に7点ビハインドを背負った。「自分がリバウンドに行けていたんですけど、ファウルが混んでしまったので思い切ってコンタクトができない状況になってしまいました」。4つ目のファウルを避けなければいけなかった脇は、がむしゃらにリバウンドへ飛び込めなかった。
だが、今の白鷗大には頼もしい仲間がいる。4年間ともに戦ってきたシソコ ドラマネや嘉数啓希、後輩では2年生で先発を担った佐伯崚介と佐藤涼成、陳岡流羽、ポーグ健らの3年生もコート上で脇を支える存在だ。ハドルを組んだ際、脇はチームメイトを頼った。
「『リバウンドで助けてほしい』とだけ伝えたら、みんなが『ファウルが混んでるからね』という感じで(自分の気持ちを)察してくれました。あの時点で『あ、このチーム勝てるわ』って思ったんですよね」
今のチームは多くの意見を交わさなくても状況や一人ひとりの気持ちを汲み取り、共通理解を持ったうえでコート上で戦うことができる。それが白鷗大の強みであり、「今年のチームで勝てた要因だと思います」と脇は言った。
下級生の頃からエースと言われてきた脇の性格は、良くも悪くも顔に出るタイプだ。悪い方では審判の判定に不満をあらわにする場面が今まで何度もあり、網野HCも「分かりやすくていい部分はあるんですけど、感情が顔に出ることがある」と話す。
4年間、指揮官がエースに伝え続けた言葉は、「いい顔をしてバスケットをやりなさい」。脇は学年を重ねるごとに内面でもステップアップし、プレー面ではガードとして的確なアシストをさばけるようになった。筑波大学との準決勝の最終盤では自らドライブで切り込んだが、最後はノーマークになったモンガ バンザ ジョエルにパスを送り決定打を演出。網野HCは「あれは脇の判断でしたし、本当に落ち着いて対応してくれました」とビッグプレーを称えた。
得点を取ることだけがエースではない。チームを勝たせる方法は、他にもある。日本一獲得のために自分ができることを追求し続けた脇は、先輩たちのように「とにかく背中を見せたかった」。そしてこの1年、「何としてでも後輩たちに2年前の景色を見せてあげたい」という一心で駆け抜けた。
「いろんな選手が支えてくれたおかげで今の自分がある」。優勝後は初の日本一を経験させてくれた松下裕汰(レバンガ北海道)や角田太輝(佐賀バルーナーズ)、関屋心(岩手ビッグブルズ)、杉山裕介(神戸ストークス)などの名前を挙げ、OBへ向けても感謝を述べた。
2021年のインカレ優勝後は「自分のプレーには全く納得できていない」と話し、あくまでも「4年生のおかげ」と強調した。昨年は準優勝。2年かかってしまったが、脇はようやく言葉にすることができた。
「こうして見せてあげることができて本当にうれしいです」
チームを勝たせる――。その想いは、2度目の日本一を獲得することでしか満たされないものだった。
取材・文=小沼克年
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