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「あれは誤算。前半の13番は計算外でした」
「SoftBank ウインターカップ2019 令和元年度 第72回全国高等学校バスケットボール選手権大会」2回戦の注目カード、福岡大学附属大濠高校(福岡県)vs開志国際高校(新潟県)は福大大濠が勝利を飾った。最終スコアは82ー76。
各クォーターごとの得点を見ると、第1クォーターは同点。後半の第3、第4クォーターはともに2点差と僅差ではあるものの、開志国際が上回った。
期待を裏切らないクリスマスの激闘。大きく差がついたのは第2クォーターのみであり、この10分間は開志国際の19得点に対し、福大大濠は一挙29得点を積みあげた。
冒頭に書いたのは、開志国際の富樫英樹コーチの言葉。“13番”というのは、前半だけで21得点を挙げた福大大濠のルーキー・岩下准平のことだ。
岩下は第1クォーターに途中出場を果たすと、この日放った1本目の3ポイントが綺麗にリングを射抜く。同クォーター終了間際には体勢を崩しながらも再び長距離砲を沈め、「1、2本目が入ったので『今日はノッているなと思った』」。
そして、第2クォーターでも引き続きコートに立つと、この10分間は5本中4本という高確率で3ポイントをマーク。外した1本でさえもシュート中にファウルを受けて、それで得た3本のフリーフローをしっかり得点につなげた。
中学時代も大舞台を経験している岩下だが、福大大濠の一員として臨む高校の全国大会は今回のウインターカップが初。100点ゲームを演じた23日の1回戦では、2得点にとどまり2つのターンオーバーを犯した。
「今日は自分に自信を持ってプレーしよう」
この日はそんな気持ちの切り替えが功を奏した。ベンチスタートながら約33分間のプレータイムで24得点。2ポイントでの得点はなく、計7本の3ポイントでチームを救った。
もっとも、岩下の活躍だけでこの勝利を手にしたわけではない。気迫のこもったプレーで30得点を挙げたエースの横地聖真、終始守りに徹し相手の歯車を狂わせた西田公陽ら3年生の活躍も見事だった。「聖真さんも公陽さんも先輩として憧れの存在。一緒にこのウインターカップのコートに立てて本当に幸せだと思います」。
シュートは水物——。今日入ったからといって次の試合も入るという保証はどこにもない。「今日は当たったけれど、それが毎日毎日続くわけではないです」と、岩下も十分理解している。
それでも、この注目カードで自らの存在を示し、高校バスケ界でも岩下准平という名を知らしめた。「自分の持ち味でもあるスピードを活かして、ドライブでもアシストでもチームに貢献できるようにやっていきたいと思います」。
福大大濠のルーキーは、決して3ポイントだけの男ではない。
文=小沼克年