Bリーグ公認応援番組
『B MY HERO!』
試合終了残り5秒、2点ビハインド。この場面で藤枝明誠高校(静岡県)の金本鷹コーチが託したのは、3年生の上野幸太だった。
フロントコートのスローインからパスを受けた上野は、右45度の位置から同点のミドルシュートを放った。だが、惜しくもリングに嫌われ、「SoftBank ウインターカップ2022 令和4年度 第75回全国高等学校バスケットボール選手権大会」の男子準決勝は76−78でタイムアップ。開志国際高校(新潟県)を最後の最後まで苦しめたが、藤枝明誠はインターハイと同じベスト4で大会を終えた。
「勝てた試合だったと思いますし、最後のシュートを自分が落としてしまったので正直悔いが残っています。絶対に決めきる気持ちでいたんですけど、外してしまいました」。試合後の上野の口からはやはり反省の言葉が出たが、「赤間とか霜越ではなく(金本)先生が自分を選んでくれたところに意味がありました」とも話した。
上野が言うように、今年の藤枝明誠は主に霜越洸太朗(3年)と赤間賢人(2年)の2人が得点源としてオフェンスをけん引する。ラストプレーの場面では“相手の裏をかく”という側面があったかもしれないが、上野は最後のシュートを放つに相応しい存在だった。この1年、藤枝明誠を先頭で引っ張り、夏と冬を通じて全国ベスト4へ導いたキャプテンだからだ。
この試合は第3クォーター終了時点でエースの赤間、センターのボヌ ロードプリンス チノンソ(1年)がともに4ファウルに追い込まれている。それでも両選手は最後までファウルアウトにならずに踏ん張った。試合終了までベストメンバーで戦い抜けたのは、チームが1つになっていたからであり、その中心にいた上野は「どうしても下を向いてしまう時間帯があったんですけど、ずっと『前向け! 前向け!』『まだ終わってないぞ!』という声かけを続けて、集中が切れないようには意識していました」と明かす。
ウインターカップでもベスト4の壁は破れなかった。しかし、「たまたま結果が出た」と感じた夏とは違い、今大会の準々決勝では昨年の覇者である福岡大学附属大濠高校(福岡県)を倒し、のちに優勝を果たした開志国際とも互角の戦いを演じた。藤枝明誠の主将は確かな手応えを口にする。
「この1年間、自分がキャプテンになって本当に不甲斐ない部分が多かったんですけど、チーム一丸となって谷(俊太朗/3年)や霜越がまとめてくれました。1人に頼るのではなく、チームで戦うのが今の藤枝明誠の良さだと思うので、この1年間チームで戦えて良かったです。目標の全国制覇はできなかったんですけど、まあ、勝つべくしてここまで勝てたのかなって思います」
藤枝明誠にとって、この1年は飛躍の年となった。キャプテンとして仕事を終えた上野は、成し遂げられなかった全国制覇の夢を後輩たちへ託した。
「今年以上の練習量と高い意識を持たないとダメだと感じました。来年は『全国4強の藤枝明誠』として見られるわけなので、過度な自信じゃなくて、全国で戦えたというしっかりとした自信を持って、来年は戦ってほしいです」
取材・文=小沼克年