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2月11日と12日の2日間、「令和4年度 第54回北信越高等学校新人バスケットボール選手権大会」が開催された。昨年はコロナウイルス感染症の影響により中止を余儀なくされたが、今回は長野県を舞台に男女各16チームによるトーナメントを実施。女子の部は新潟県1位の開志国際高校が3大会連続の優勝を飾った。
ベスト4に残ったのは開志国際に加え、石川県1位の県立津幡高校と2位の日本航空高校石川、福井県1位の県立足羽高校。決勝戦には津幡と開志国際が勝ち上がった。決勝は序盤から1ケタ点差の中で試合が進み、開志国際の7点リードで最終クォーターへ。最後まで拮抗した展開が続くと思われたが、開志国際は第4クォーター中盤から一気に流れをつかんだ。曾根妃芽香(2年)と小林由奈(1年)のガード陣が持ち味のスピードを生かして速い展開に持ち込むと、2人のアシストから周りの選手が連続得点を奪取。中だけでなくアウトサイドからもシュートが決まりだし、最終的には74-54の大差で粘る津幡を振りきった。
12月のウインターカップに出場したチームにとっては、まだ新体制がスタートして間もない。そのため、些細なミスや連携不足が頻繁に起こりがちだが、この時期だからこそチャレンジできることも多くある。開志国際を率いる伊藤翔太コーチは「今大会はあまり戦術的なことはやっていない」と明かし、こう続けた。
「チームでバスケットをすることを大前提にしつつも、オフェンスもディフェンスも何かのセットプレーを作ってきたわけではありません。スカウティングに関してもまずは子どもたちがビデオを見て、彼女たちが『こういうプレーをしたい』って言ってきたところに私が少しアドバイスをする程度でした。決勝戦のマッチアップも子どもたちが決めて戦っていたので、本番は夏ですけど、そういった意味では今回の優勝も価値があると思います。そこは自信にしてもらいたいです」
選手たちに自主性を求めた指揮官に対し、求められた側の感触はどうだったのだろうか。今シーズンのキャプテンに就いた川崎小珠(2年)に話を聞いた。
「今まで戦術のことはほとんど伊藤先生に指導していただいていました。けど、今回は自分たちに選択肢が与えられたなかで、まずは自分たちの強みをみんなでしっかり考えました。練習でも何か意見があればプレーを止めてみんなで話し合ってきましたし、この大会も要所でどういうディフェンスをするのかなどを自分たちで判断してやりました。決勝でも点差を詰められて苦しい部分はあったんですけど、最後は人任せにせずにチーム全員で走れたことが引き離せた要因かなって思います。大変でしたけど、伊藤先生に成長した姿を見せられたのはよかったです」
2023年の開志国際は、昨年からの主力メンバーである川崎と曾根がチームの軸を担う。190センチを誇るファール アプサトゥ(1年)の成長も大きなカギを握るだろう。留学生を中心メンバーに加えて挑むのは2018年以来となるが、チームはその間、豊富な運動量とアウトサイドシュートを武器に全国のライバルたちと凌ぎを削ってきた。
一方、準優勝で終えた津幡の東山耕平コーチは、1日2試合を強いられた今大会を「いっぱいいっぱいでした」と表現。「スタートのメンバーは初日からほぼ休みなしでコートに立っていました。でも、それが今のチーム力ですし、普段から一緒に練習を頑張っている子たちも含めてレベルアップしていかないといけないです」。そう語ったように、決勝戦では第2クォーターで背番号4の橋本悠杏(2年)が一時ベンチへ下がった途端、相手に9点リードを奪われたことも悔やまれる結果となった。
「県大会からずっと戦ってきて、これが初めて負けでした」。東山コーチによれば、開志国際との試合が新チームでの初黒星だという。指揮官は「よくここまで来た」と評価する一方で、選手たちが「この負けをどう感じているか」が重要だと話す。決勝戦直後のミーティングでは、「感情を出せ」と選手たちを鼓舞する指揮官の言葉が聞こえてきた。
「子どもたちには、もっと感情を表現できるようになってほしいです。悔しいなら素直に『悔しい!』、しんどい時は『頑張ろう!』、よかった時は『よっしゃー!』とかね。勝負は勝負ですけどやっぱり高校生らしく戦ってほしいので、これからはそういった部分も表現できるように育ててあげたいなとは思っています」
優勝こそ逃したものの、東山コーチは「体力的にも精神的にも鍛えられましたので、非常に収穫のある大会でした」と、スッキリした様子で今大会を総括した。「うちは小さいチームなので、足を使って粘り強く守るというところをもう1回見直したいと思います」と、今後を見据えていた。
取材・文・写真=小沼克年