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「第78回東北高等学校男女バスケットボール選手権大会」が6月24日、25日の2日間、青森市にて開催された。今年の東北男子は、県内で切磋琢磨をして力をつけてきた福島勢が急成長。東北新人戦に続き、決勝は福島東稜高校(福島県1位)と帝京安積高校(福島県2位)の顔合わせとなった。
福島勢の台頭が目立つなか、今大会、大一番となったのが準決勝の福島東稜と仙台大学附属明成高校(宮城県)の準決勝だ。前半は福島東稜がリードしたが、第3クォーターになると、仙台大附属明成のゾーンディフェンスが効いて佐藤晴と小田嶌秋斗の3ポイントシュートで逆転。しかし第4クォーターに福島東稜は仙台大附属明成のディフェンスを割ってミドルシュートやアデバヨ オニロルワ ジョセフの高さと幅を活かしたインサイドの得点で再逆転に成功した。残り0.7秒、1点ビハインドでフリースローを得た仙台大附属明成だったが、これを決められずに57-56で福島東稜が初の決勝へと駒を進めた。
決勝は福島東稜と帝京安積の対戦。手の内を知り尽くした福島勢同士の対戦は、帝京安積が出足から走って第1クォーターを27-16とリードした。福島東稜は準決勝での激闘が響いていたのか、足をつる選手も出たが、第2クォーターからは高さを活かした攻めで逆転。帝京安積は最後まで菅野陸、緑川知也の3ポイントで対抗したものの、あと一歩が届かなかった。福島東稜が74-67で東北初制覇を遂げた。
福島東稜の渡部浩一コーチは、選手たちと初優勝の喜びを分かち合ったあと「優勝もあるけれど、1回戦負けもあると考えていました」と心境を明かした。アデバヨの高さとパワーは絶対的な武器であったが、2年生を主体に3年生が支えるチームなだけに不安定要素もあったからだ。しかし、急激に強くなった背景には、チームの信頼関係が高まっていることが挙げられる。東北新人の頃は、渡部コーチが采配をするようになってまだ3カ月のところで大会を迎えた。現在は渡部コーチが指導して半年以上が過ぎ、遂行力が徐々に浸透。「まだまだですが、だんだん個からチームになってきている」と渡部コーチは手応えを語る。
一方、敗れた帝京安積は、インターハイ予選に続いて福島東稜に敗戦。東北新人戦ではコンビネーションの良さで東北に新風を巻き起こしたが、その後は「生活面から見直さなくてはならない問題があり、乗り切ることができませんでした」と水野優斗コーチは課題を挙げた。ただ、インターハイ予選では27点差で完敗した相手に対し、再度奮起して点差を1ケタまで縮めた点では成長が見られた。
今年、東北大会で福島勢が台頭したのは、決勝に進出した2校がライバルとしてしのぎを削り合ってきたからだった。福島東陵の東北制覇によって、福島県のウインターカップ出場権は2枠に増加。今後はさらなる切磋琢磨によって、福島県内のレベルアップが図られていくことだろう。
仙台大附属明成はチームを全国屈指の強豪へと導いた佐藤久夫コーチが6月8日に逝去。チームは計り知れない悲しみのなかで大会を迎えた。左肩には喪章をつけ、ベンチには佐藤コーチ自身が「コートネーム」というほど愛着を持ち、戒名にもなった『籠久』の名前が刻まれたTシャツが置かれ、恩師が見守るなかで試合が行われた。選手たちは様々な思いを抱えていたのか、1回戦から集中できない様子も見受けられた。粘り強さが見えたのは、惜敗した準決勝の福島東稜戦からだった。
今大会の仙台大附属明成は、アスレティックトレーナーを兼任する髙橋陽介コーチが指揮を執り、今シーズン限りで現役引退を表明した畠山俊樹コーチを迎え入れ、Bリーグなどでコーチ経験がある仙台大学所属の金田詳徳コーチがベンチ入りしてチームを支えていた。
佐藤コーチは生前、2月の東北新人戦での準決勝敗退を受けて、「チームを変えるならば今だ」との方針のもと、春休みの交歓大会では多くの1年生を積極的に起用してチーム内の競争を促していた。いわば、改革中の発展途上チーム。準決勝敗戦後に髙橋コーチは「選手に落ち着きと思い切りを与えられなかった私の未熟さが敗因」と語っていたが、粘り強さの芽は確実に出てきている。
東北新人戦に続き、東北にさらなる新しい風が吹き始めていることを感じさせる大会だった。2回戦では、著しい成長を見せていた能代科学技術高校(秋田県1位)に対し、思い切りのいい3ポイントで対抗してベスト4へとステップアップした八戸学院光星高校(青森県1位)の健闘が光った。
前年の東北大会準優勝校である羽黒高校(山形県1位)はエース小川瑛次郎を同時期開催の「FIBA U19バスケットボール ワールドカップ2023」出場で欠いたこともあり、2回戦で帝京安積に完敗。東北大会には出場はできなかったが、世界舞台での経験を持ち帰ってくることだろう。
取材・文・写真=小永吉陽子