2023.12.23

ノルマは「1試合40点」…岡豊の2年生エース、36得点を挙げるも「まだまだ」

東京成徳大戦で36得点9リバウンドをマークした岡豊の伊藤知里 [写真]=バスケットボールキング
フリーライター

 12月23日、東京体育館で行われた「SoftBank ウインターカップ2023 令和5年度 第76回全国高等学校バスケットボール選手権大会」の第1試合は、最後までもつれる熱戦が繰り広げられた。

 先手を取ったのは、3年連続出場の県立岡豊高校(高知県)。5年連続43回目の出場を誇る東京成徳大学高校(東京都)相手に、第1クォーターで25-17とリードを奪った。しかし、次の10分間では相手の激しいディフェンスに対し、岡豊が積み上げた得点はわずか「8」。

 後半は互いに譲らず、第4クォーター残り28秒でスコアは61-59。タイムアウト明け、フロントコートから再開した岡豊は藤岡由名(2年)がフリースローライン付近でルーズボールを保持すると、そのまま迷わずドライブで切り込み、決勝点を沈めた。4点差で東京都1位の強豪校を倒した岡豊メンバーは、試合終了のブザーが鳴ると、抱き合って喜びを爆発させた。

 大活躍を見せたのは2年生の伊藤知里だ。岡豊が誇るエースは第1クォーターから17得点を稼ぎ、40分のフル出場で36得点。持ち味であるスピードを活かしたドライブからのジャンプショットを軸にスコアを重ね、初戦突破の立役者となった。

 大舞台でもエースと呼ぶに相応しいプレーを披露した伊藤だが、本人は納得していなかった。自身の活躍ぶりを問うと、「いや、自分は40点取らないといけないので。まだまだかなと思います……」と首をかしげた。

 今年からエースを担う彼女に川井文雄コーチが課したノルマは「1試合40点」。それだけではない。チーム内では高身長となる169センチの高さを活かし、オールラウンドな働きを求められていると伊藤は言う。

「川井先生からは、『オフェンスが大変なのはわかるけど、ディフェンスとかリバウンドもサボらずにやらないといけない』と言われています」

 東京成徳大戦では9リバウンドを挙げるなど、ゴール下でも体を張った。しかし、攻撃に目を向ければ8個のターンオーバーを犯したことも記録には残る。エースとしてボールを託されるという証でもあるが、伊藤は「今日も所々でフリースローを落としたり、ゴール下のシュートを落としたりと、甘さが出てしまいました。40点取りきれなかったことは、まだまだ自分の課題かなと思います」と悔しさを漏らした。

チーム内では高身長の169センチ。ゴール下での仕事も多い [写真]=バスケットボールキング

 それでも、自身2度目のウインターカップで初勝利を手にした伊藤は終始笑顔だった。夏のインターハイ予選決勝では、ライバルの高知中央高校に43-62と大差をつけられて敗戦。「夏以降は全員で守るディフェンスを徹底して、一つひとつのシュート精度を上げることにも取り組んできました」(伊藤)と、岡豊はその悔しさを糧にレベルアップを図ってきた。そして、11月の県予選で高知中央を4点差で破り、見事にリベンジ成功。ウインターカップに戻ってこられた喜び、勝利できた喜びもひとしおだった。

「やっぱり(東京成徳大は)東京1位なので、ベテラン感というか、レジェンド感みたいな雰囲気がありました。試合中に厳しい時間帯もあったんですけど、日頃の練習から先生を中心にしっかり対策してきましたし、それを活かしたことが勝利につながったのですごくうれしいです」

 2回戦の相手は、岡豊と同じく接戦の末に初陣を飾った鵠沼高校(神奈川県)に決まった。自他ともに認める2年生エースの役目は変わらない。

 40得点。さらには攻守の要としてチームを勝利へ導く。

文=小沼克年