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昨年、日本航空高校(山梨県)はインターハイ初優勝を飾って一際脚光を浴びたが、冬のウインターカップではベスト8で涙をのんだ。日本一奪還を目指す2024年は、今までほとんどプレータイムをもらえなかった選手がチームの明暗を分けるかもしれない。
「昨年も試合でどんどん使いたかったですけど、ちょっと力不足な面がありました。でも今年はいろんな経験を積んで成長してくれると思いますし、今大会も張り切って頑張ってくれたので期待しています」
山本裕コーチから大きな期待を寄せられるのは、インサイドを主戦場とする三村デールアンソニー(2年)だ。
2月3日と4日に開催された「令和5年度 第34回関東高等学校バスケットボール新人大会」で、日本航空は計4試合を危なげなく戦い抜いて優勝を達成。三村は全試合で先発出場を果たし、初戦から順に25得点19リバウンド、15得点6リバウンド、18得点9リバウンド、25得点13リバウンドと気を吐いた。
身長は190センチ。それに加えて長い腕と高いジャンプ力、さらには「速攻の先頭を走ってくれるので相当助かります」(山本コーチ)と、ゴール下から一気に駆けあがる走力も備える。けれど、昨年は思うように出番を得られず、全国大会では点差が開いた試合でさえ5分以上コートに立つことはなかった。
それでも三村は、日々の練習では先輩たちからアドバイスをもらい、スクリーンプレーやフックシュートなど、コツコツと自分の引き出しを増やしていった。「去年はあまり試合に出ることができなかったんですけど、先輩の藤野仁喜さんとかが鍛えてくれたおかげでいろんなプレーができるようになりました」。
今年の日本航空は、昨年も先発を務めた司令塔の大道一歩と大黒柱のオルワペルミ・ジェラマイア、シックスマンとしてチームを支えた中西哲太(いずれも2年)の3人が健在。指揮官は「昨年から中心になる選手は変わっていません。戦力がダウンすることもなく、逆にサイズアップしたポジションもあるので、これからさらに精度を高めていきたいと思います」と自信をのぞかせる。サイズアップできた要因は三村の台頭が大きく、試合中もゴール下でコンビを組むジェラマイアと積極的にコミュニケーションを取っていた。
「ジェリーとは英語交じりの日本語で話していて、僕がファウルをしたら『ノーファウル!』とか『ちゃんとやれ』とか言われます(笑)。ジェリーもチームのことで感じることがあると思うので、普段からお互いが理解できるまで話すように意識しています」
そう明かす三村は、チームメートから「デール」と呼ばれている。“ジェリーとデール”の連携に磨きがかかれば、日本航空の新たな武器になることは間違いない。「もっとジェリーとの合わせのプレーができるようになることと、リバウンドやハードワークでもチームに貢献できるように頑張りたいです」と、三村はさらなる飛躍を誓う。
「周りがあんまりそういうタイプじゃないんで、自分が盛り上げようかなと。そんな感じです」と軽い口調で話す三村は、明るい性格で笑顔を絶やさない根っからの“陽キャ”である。
今回の関東新人では中西が主将を務めたが、山本コーチによれば正式なキャプテンはこれから決めるという。チームのムードメーカーにキャプテンにも向いているのでは、と尋ねると「いやいや、キャプテンは哲太くんで問題ないと思います。僕は盛り上げ役だけで大丈夫です」と遠慮がちだった。
だが、山本コーチは真面目な選手が多い今年のチームにおいて、ダブルキャプテン制も検討しているようだ。三村の主将就任にも期待が高まるが、まずはゴール下を支える柱の1人として、盛り上げ隊長として日本航空に欠かせない存在になれるか。三村デールアンソニーのこれからの活躍に目を凝らしたい。
文・写真=小沼克年