2024.08.14

双子の姉の思いも背負った準々決勝…大会を通して成長の跡を見せた聖和学園の阿部友愛

チームとして積極的にシュートを放った聖和学園の阿部友愛 [写真]=佐々木啓次
フリーライター

 その気迫は初戦から見てとれた。

「令和6年度全国高等学校総合体育大会バスケットボール競技大会」の2回戦。この試合が初戦となった聖和学園高校(宮城県)は、いきなり前回大会の準々決勝で敗れた大阪薫英女学院高校(大阪府)と対戦する。

 しかし、聖和学園のポイントゲッターである阿部友愛(3年)は出だしから積極的にシュートを放ちチームをけん引。第1クォーター序盤から先行する中、大阪薫英女学院に幾度となく点差を詰められたものの、その度に阿部がシュートを沈めて大阪薫英女学院の反撃の芽を摘んだ。終わってみれば阿部は34得点19リバウンドの活躍。勝利の立役者となった。

 その後も鳥取城北高校(鳥取県)との3回戦では14得点21リバウンド7ブロックショットで勝ちに貢献。京都精華学園高校(京都府)との準々決勝では敗れはしたものの、30得点9リバウンドと気を吐いた。

 前回大会に続いてベスト8入りの原動力となった阿部は、「前半は点を取られても取り返すということで相手に上手くついていけたと思います。でも、後半に失速してしまって。相手の高さに対して自分たちが勝るものを出せなくて離されたかなと思います」と、準々決勝を振り返った。また、自身については「相手が大きいので、外からのペリメーターのシュートは積極的に狙っていきました。それはできていたとは思いますが、もっと確率を上げていきたいです」と、課題を挙げた。

 京都精華学園に敗れた後、指揮を執る小野裕コーチは「薫英さんと鳥取城北さんに勝たないといけないという重圧があって、そこをクリアするための緊張などで普段のプレーができないというのはありました。でも、そこを乗り越え、今日は思い切ってできるぞということで、阿部選手などは『自分にボールよこせ』というような感じで、果敢にアタックしていました。ああいったことが主体的に出るというのは、教えたいこと、私が考えるバスケットに近づいているのかなと思います」と、大会を振り返りつつ、阿部の名前を出して健闘を称えた。

 まさに指揮官の言葉のどおり、「自分が決める」と言わんばかりの攻め気を3試合で貫いた阿部。そこには、ベスト4というチームが掲げた目標に向けた想いに加え、「心愛と対戦することが一つの目標でした。そこに行くまでも何がなんでも自分が勝利をもぎ取ると思ってプレーしていました」と、堅い決意がにじみ出ていた。

 心愛とは、桜花学園高校(愛知県)で主力を担う双子の姉のこと。今大会は互いに勝ち上がれば準々決勝での対戦となる組み合わせだった。だが、桜花学園は京都精華学園の前に3回戦で敗退。翌日にその京都精華学園と対戦したのが聖和学園だったため、心愛からは、「絶対に勝ってね」と、電話が来たという。

 惜しくも京都精華学園を倒すことはできなかったが、阿部は3試合を戦って1試合平均26点を挙げるなど文字通りエースとして頼もしい働きを見せた。その彼女について小野コーチは「中学時代はどちらかというと姉のリバウンドを取っていたようなリバウンダーでしたが、(ボールを持ったら)前を向くようにして3ポイントシュートまでしっかり打てるようにと育ててきました。彼女の打開する力はこれからもっと成長させていきたいと思っています」と、これまでの取り組みを語る。また、「今日(準々決勝)で良かったのはしっかりプルアップのジャンプシュートを丁寧に打てていたということ。それとアシストが上手になってきたので、内田(理香/3年)との連携というのはなかなか質が高いなと、成長したなと思います」と、目を細めた。

 7月の「FIBA U17女子ワールドカップ2024」など下級生の頃からアンダーカテゴリーの日本代表として国際大会をいくつか経験したことも大きく、阿部自身は「苦しいときにどれだけ周りに奮い立たせられるような声掛けができるか」ということをインターハイでは意識していたという。ほかにも、「以前はまだ1対1の技術が足りなくて自分で攻め切るということができなかったのですが、去年1年を通して自分で攻め切る力を付けることができたからこそ、周りが見えるようになったかなと思います」と、プレーの成長も感じている。
 

阿部(右)は周囲への声がけも意識していたという [写真]=佐々木啓次


 だが、目指す先はより上の方にある。「自分の持っている力は出し切れたと思うのですが、ペリメーターのジャンプシュートもそうですけど、もっと3ポイントシュートの確率も上げていかないと身長の高いチームには対抗できないので、対抗できるような力をつけていきたいです」と、語る言葉には力がこもる。

 福岡の地で戦った3試合での達成感と悔しさを持って、次は冬のウインターカップ。聖和学園のエースのあくなき挑戦はまだまだ続く。

文=田島早苗