2022.08.14

シューターとして完全覚醒…須田侑太郎は攻防両面でホーバスJAPANの中核に

須田は16分33秒の出場で6本の3ポイントを含む20得点をマーク [写真]=伊藤 大允
スポーツライター

 13日、男子日本代表がFIBAワールドカップ2023アジア地区予選 Window4へ向けたイランとの強化試合、「SoftBaank カップ 2022」に臨み、82−77で勝利した。

 先月のFIBAアジアカップで1試合に33得点を挙げるなどで一躍、“トム・ホーバスJAPAN”の中核メンバーとなりつつある須田侑太郎名古屋ダイヤモンドドルフィンズ)が、この試合でも7本放った3ポイントシュートを6本決めるなどでチームトップの20得点をマーク。今度は母国のファンの前で再び存在感を示した。

 第4クォーターにはベナム・ヤクチャリ、モハマッド・ジャムシディの自慢のガード陣らの得点によってイランも得点を重ね、状況は一進一退となったが、須田はこの10分間だけで4本の3ポイントをヒットしただけに、とりわけ勝利に貢献する価値のあるプレーぶりだった。

「僕自身やりやすいし、迷いなく思い切り積極性を出せるので、やっていても楽しいと思うし、見ている人も楽しいと思います。もっとこのバスケを極めていきたい」

 試合後のコート上でのインタビューで、須田はこう口にした。そのトーンの強さからは、ホーバスHCのスタイルへの順応が進んでいる充実度がうかがえた。

 もともと万能な選手でホーバスHCが就任してからの代表への招集実績もあったが、アジアカップ前の合宿で同HCから「須田の役割は3ポイント」と明確に指示されたことで「迷いがなくなった」(須田)。

 その成果は、アジアカップのシリア戦で8本試投した3ポイントのうち7本を決めるという神がかったパフォーマンスとなって現れた。

 これだけ活躍をし続ければ当然、相手からの警戒は強くなるが、須田は練習から相手の「ちょっとしたずれ(隙)」や「ディフェンスの気の緩み」を見逃さずにシュートへ行くこと、また3ポイントラインから少し離れたいわゆる「ディープ」なところからでも打てるようにというところを意識しているという。

 また、長距離砲だけでなく優れたディフェンダーであることも須田がホーバスHCから重用されている理由となっている。例えばイランのジャムシディはSGながら198センチで当たりも強いジャムシディがエース格の一人で、アジアカップでも今回の試合でも日本を苦しめているが、世界の舞台ではアウトサイドでもこのような選手を相手に守りきらねばならない。

 河村勇輝(横浜ビー・コルセア―ズ)や馬場雄大のようにスピードを生かしてスティールを多く記録するタイプではないものの、須田は自身のフィジカルで激しく当たり続けるディフェンスには自信を示しており、13日の試合でもそういった姿勢でチームを引っ張っている。

「僕はフィジカルにファイトできるし“ヒット・ファースト”(相手ディフェンダーに体を当てていやがらせること)も持ち味で、Bリーグでもそれをやっていますし、誰にも譲れないところです。なので、世界だとサイズの大きな相手も多いですが、簡単にボールをもらわせない、フィジカルにプレーさせない、フィジカルなディフェンスをやり続けて、相手にコンテストさせて、それで入れられたらしょうがないというマインドです」

 須田は自身のディフェンスに矜持を見せ、力強い言葉を続けた。

「だから自分にサイズがないなら、相手に対してフィジカルに、足元にしっかりヒットして嫌がらせて、フラストレーションを溜めさせてというのをやりつづけていきたいと思います」

 就任以来、ホーバスHCは来年のワールドカップ本戦やその先のパリオリンピックを見据え、数多くの選手を代表候補に呼び、試合で起用しながら、どの選手がよりフィットするかを見極める作業を重ねてきた。

 その中で、それまではさほど目立った印象を残していなかった須田の存在が、アジアカップを境に突如、増してきた。そして、今回のイラン戦でも再度、際立った活躍を見せた。

 こうなると、須田がホーバスHC率いる日本代表に欠かせない選手になりつつあるという認識はますます強くなっていきそうだ。

井上(左)とともにホーバスJAPANの中で存在感を大きくする須田 [写真]=伊藤 大允


取材・文=永塚和志

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