2023.08.01

【インタビュー】西田優大「なんとしても残りたい」ワールドカップ日本代表への思い語る

日本代表への強い思いも口にした西田優大[写真]=伊藤大允
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 8月25日に開幕を控えるFIBAワールドカップ2023。開催国の1つとして大会に臨む男子日本代表は、来たる決戦の日に向けてすでに候補選手たちを集め強化合宿を実施している。

 選手たちはこの大舞台に向けて、どのような思いを胸にトレーニングに励んでいるのか。幼少期の思い出から今大会にかける思いまで、一人ひとりに話を聞いていく連載。その5人目として、ホーバスジャパンに継続的に招集されている西田優大に話を聞いた。

インタビュー=入江美紀雄

■ “日本代表”を意識したのは高校進学のタイミング

――子供の頃はバスケ男子日本代表が世界大会に出場する機会が少なかったと思いますが、記憶に残っている“日本代表の思い出”はありますか?
西田 僕が小学生の頃に北京オリンピックのアジア予選(2007年 FIBA男子アジア選手権)が徳島であったので、それを観に行った記憶があります。ちょうどキミさん(鈴木貴美一)がヘッドコーチで、佐古(賢一)さんや折茂(武彦)さんがまだ入っていた頃でした。柏木(真介)さんとか(五十嵐)圭さんもいましたね。

――日の丸をつけて選手がプレーする姿を見て、 将来的な日本代表への思いが湧いたことはありましたか?
西田 その時は、全然そんなことも考えてなかったです。ただ代表戦が徳島でやっているから見に行こうぐらいの気持ちでしたね。

当時の日本代表はアジア選手権8位に低迷[写真]=fiba.com

――それはミニバスのチームみんなで観に行った?
西田 家族で行きました。

――会場の徳島市からだと西田家からはちょっと遠いんじゃないですか?
西田 ちょっとどころかだいぶ遠いです(笑)。父が連れていってくれました。弟たちはただ見に行ったくらいの記憶しかないですね。

――その後、中学から高校へと進学していくなかでアンダーカテゴリーの代表にも選ばれました。いつ頃から日本代表を意識し始めたのでしょうか?
西田 高校に入るタイミングで、初めてU15日本代表に呼んでいただいて、そこからですね。

――実際にアンダーカテゴリーの日本代表に入ってみて、周囲のレベルの高さだったり、感じたことはありましたか?
西田 その時は、もう「レベル高いな」しか思わなかったですね。正直、徳島でやっているときは、僕に優る選手って高校生とか、そういうレベルでしかいなかったので。初めて同じ年代で自分より高いレベルの選手を目の当たりにして、すごく圧倒されたというか、ビックリしました。

――そうした経験も当時の西田少年にとっては良い刺激になったのでは?
西田 はい、もちろんなりました。最初の方はちょっとビビってるぐらいだったかもしれないですけど。でも高校も(福岡大学附属)大濠高校に行かせてもらっていましたし、そこはもう頑張るしかないな、という思いでやっていました。

――高校進学後は世代別の日本代表として国際大会にも出場しました。国内の高校生同士の大会との違いも感じましたか。
西田 なんだろう…。フル代表とかになってくると、スピードのミスマッチがあっても突けるほどの差はないなと感じています。でも、アンダーカテゴリーだと、同じポジションでも速さのミスマッチがあったので、ダイブで攻めたり、3ポイントシュートを打てたり、今考えたらそういう差があったんじゃないかなと思いますね。

――当時はトーステン・ロイブルがヘッドコーチでした。ヨーロッパ遠征で世界の厳しさを感じたこともありましたか。
西田 全然やれないなというのは、あんまり感じなかったですね。

――高さやウィングスパンがある海外選手との対戦は、若いうちに経験しておくといいのかなとも思います。
西田 はい。それは思いますね。それこそ初めて海外の選手にパスカットされて、「あ、これがみんなが言っているやつか」と、実感した思い出があります。

2017年のU19ワールドカップは10位[写真]=fiba.com

■ 海外組との交流も刺激に「言葉というよりは姿勢」

――大学進学後はフリオ・ラマスHCが率いる日本代表合宿に招集されるようになりました。当時はどんな心境だったのでしょうか。
西田 代表合宿に呼んでいただいても、練習に参加しなかったこともありますし、できなかったこともあります。でも参加させていただいて、めちゃくちゃ緊張はしましたけど、そこまで物怖じせずにやっていた記憶はあります。

――日本代表ではBリーガーのみならず、渡邊雄太選手や馬場雄大選手ら、海外組ともプレーするようになりました。
西田 2022年のアジアカップは一緒に戦って、それこそGリーグとか海外はどんな環境でやっているのかとか、富永(啓生)も含めて、数人でいろいろと話したりしました。

――海外組との会話の中で印象的に残っている言葉はありますか?
西田 言葉というよりは、バスケに取り組む姿勢とか、そういうのですごく見せてくれているなと感じています。普段の練習であったり、周りに対する声かけとか、チームを引っ張っていく選手はこういう存在でなきゃいけないんだなと、見ていて感じる部分もありました。

2022アジアカップでは海外組の渡邊雄太、富永啓生と共闘[写真]=fiba.com

――2022-23シーズンはBリーグの公式戦とワールドカップ予選を両立していく難しさもあったと思います。コンディション調整の面では代表に“慣れてきた”部分もあったのでしょうか?
西田 慣れてきたとは思います。シーズン序盤はほとんど休みがなくて、シーズン最初がコンディション最悪だったんじゃないかなっていうくらいの状態でした。終盤の方がむしろコンディションが良かったので…。去年しんどかったからこそ、今年はトリートメント(体のケア)の部分とか、パーソナルで雇って変えた部分もあるので、そういう取り組みが目に見えて結果に出ました。こういうのは継続していこうかなと思っています。

――ホーバスHCが就任した当初の日本代表は、選手たちが戦術に慣れるのに必死な部分も見受けられましたが、ワールドカップ予選が進むにつれてHCも「すごく良くなった」と評価していました。ホーバス体制で継続的に招集されている西田選手も“ホーバスバスケ”が馴染んできている感覚はあるのでしょうか?
西田 それはすごい感じています。それこそ、チームの共通理解が深まってきたというか。チームメイトや自分の役割を一人ひとりが理解して、何をすべきかというのがちゃんと遂行でき始めてきています。最初は何をしたらいいか分からなかったですし、難しい部分もありましたけど、今は噛み合えば噛み合うほど楽しい面白いバスケ。プレーしている自分自身も楽しいです。

――戦術的な部分でも選手同士で次に何をやらなきゃいけないか分かり合えるようになったということですね。
西田 そうですね。例えば須田(侑太郎)さんが3ポイント得意だから、そのために動くムーブであったりだとか。このバスケは正解が一つじゃないし、間違いもなければ正解もないので。その中で共通理解を深めていくのはすごく難しいのですが、ちょっとずつ変わってきているのかなとは思います。

――連係がハマった時は相手を出し抜きノーマークでシュートを打てる場面も。
西田 そういうタイミングでチームが盛り上がったりとかするので、見ていて面白いバスケはしているんじゃないかなと。

――西田選手は最初の段階からチームにフィットしていたような気がしますが、プレーしやすいような状況だったのでしょうか。
西田 やりやすいというよりは、(所属チームでのプレーと)そこまで大きく役割自体が変わらなかった。シュートだけ打っていればいいわけでもないですし、ドライブだけというわけでもないので。比較的どちらもできるのが僕の強みではあると思うので、そういった意味で役割がフィットしたのかなとは思います。

ホーバス体制では継続的に代表招集されてきた西田[写真]=伊藤大允

――2022-23シーズンはホーバスHCがBリーグの試合を視察する場面もありました。選手選考を意識されることもあったのでしょうか?
西田 トムさん(ホーバスHC)が見に来ているから頑張ろうとかは別にないですけど、数字を見る人なので、3ポイントのパーセンテージとか、シューティングパーセンテージはシーズン通して意識しながらやっていました。

――そういったホーバスHCからの視線はプラスに作用しましたか?
西田 シーズンを通してみたら、去年よりパーセンテージが上がりましたし、取り組み方の部分で良かったところもあるのかなと思いつつ、それでも代表に来るとどうしても気にしちゃう部分もあるし、なかなか入らなかったりもあったので、そこが難しいなとは思います。

■ 目前に迫る大舞台「なんとしても残りたい」

――ライバルが多いウイングの選手として、ワールドカップ日本代表の12人に残るためにアピールしたいのはどこでしょうか。
西田 やっぱりペイントアタックじゃないですかね。シュート入れば勝てるし、入らなければ負けるみたいなのが、すごく嫌というか。あそこを打開できるのがたぶん僕であったり比江島(慎)さんであったり、ドライブできる選手かなとは思っているので、そこの部分で貢献したいなと思います。でも、それだけじゃダメなので、3ポイントはだいぶ意識して取り組んでいきたいなとは思います。

――ディフェンス面ではどうでしょうか。
西田 相手がドイツ代表だったら、同じ2番ポジションの選手で3ポイント成功率50パーセント、3番で40パーセントとか、なかなかBリーグにはいないというか…。本当に何をつかみに行くにも全力で行かなきゃいけないですし、その道のりはどれも楽ではないので。本当に一生懸命頑張るしかないのかなと思っています。

――具体的な数字が出てきましたが、ドイツ代表に関してはデータ等も選手に配られているのでしょうか。
西田 データが配られているわけじゃないですが、耳にタコができるくらいトムさんからたくさん言われています。「負けられないよ」、「うちの3ポイントパーセンテージも上げなきゃいけないよ」と、本当にしつこく言われているので、それをしっかり体現したいと思います。

――いま出てきたドイツも含め、ワールドカップのグループステージではいずれも格上のフィンランド、オーストラリアの3カ国と対戦します。対戦国の印象はどうですか?
西田 みんな強いなと思いました。

――もう少し楽な組み合わせだったら…という思いも?
西田 それはちょっと思いますね。開催国なんで(笑)。

――そんな厳しい対戦相手の中でも、特にマッチアップしたい選手はいますか?
西田 対戦相手に誰がいるかとかはもう全く考えず、チームのこと、自分たちのことにフォーカスしないと。もちろん楽しみではありますが、そういう気持ちだけが先走っちゃうと難しいところがあると思うので、あんまりそこを気にせず、今は取り組んでいます。

ワールドカップ日本代表の候補として熾烈な競争を続ける西田[写真]=伊藤大允

――日本でも開催される今回のワールドカップには強い思いもあるのではないでしょうか。
西田 日本自体は出場できますが、まだメンバーが決まってないので、まずはその競争に勝ってメンバーに残るところからなので。最初からメンバーに入ってきた身としては、なんとしても残りたいなという気持ちもありますし。最近トムさんの前で良い活躍というか、自分の役割的な部分で言うと、そこまで求められたことができてないんじゃないかなという思いがあるので、トムさんを見返すぐらいの気持ちで頑張っていきたいと思います。

――西田選手らウィングポジションの選手は、ホーバスHCが率いる日本代表において潤滑油のような役割でもあります。
西田 そうですね。僕たちが相手ディフェンスにズレを作って、そこからまたさらに大きいズレを作るというのが、たぶんトムさんがやりたいバスケットの一つでもあると思うので。そうしたら(井上)宗一郎だったり、(渡邊)雄太さんだったりが簡単に3ポイントを打てると思いますし、逆にそこにボールが集まれば、僕らにもまたチャンスがあると思います。そうやって上手くボールを散らしながら得点を取れればなと思います。

――最後にファンへ向けてメッセージをお願いします。
西田 まずはメンバーに残るところからです。応援してくれている方々がたくさんいるので、その方々のためにも、まずはしっかりメンバーに残れるように頑張ります。残った時には、8月25日に開幕する沖縄でのワールドカップ本大会、熱い声援をよろしくお願いします。

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