2023.09.25

連日繰り広げられた渋谷での熱狂、大学バスケ界の”チャンピオンズリーグ”となるか/第2回WUBS総括

第1回を上回る盛り上がりを見せたWUBSを振り返る(写真は最終日の表彰式の模様) [写真]=兼子愼一郎
元バスケットボールキング編集部。主に国内バスケ(Bリーグ、高校・大学バスケ)を中心に取材活動中。バスケでオウンゴールしたことあります。

2023年8月、「Sun Chlorella presents World University Basketball Series(WUBS)」の2代目王者を決めるべく、世界7つの国と地域から8大学が東京・渋谷に集結した。昨年行われた第1回大会を遥かに超える大成功を収めた真夏の祭典を、戦いの足跡と現地の声を中心に振り返る。

文=小沼克年

2022年に誕生した大学バスケ界の”チャンピオンズリーグ”

 WUBSはアジアの大学バスケット界がより高みを目指すため、2022年に産声を上げた大会だ。日本発となる国際バスケットボール選手権大会は、近い将来、大学バスケ界の”チャンピオンズリーグ”と呼ばれる可能性を秘めた大イベントと言える。

 記念すべき第1回大会はアジアの国と地域から4大学が参戦。東海大学(日本)、ペリタハラパン大学(インドネシア)、国立政治大学(NCUU/チャイニーズ・タイペイ)、アテネオ・デ・マニラ大学(フィリピン)が国立代々木競技場 第二体育館を舞台にしのぎを削り、アテネオ大が初代チャンピオンの称号を手にした。

 昨年はコロナ禍での開催を強いられたものの、試合の模様は世界中で放送・配信された。その結果、累計約400万回も視聴され、目的の1つに定める『最後の瞬間まで勝利を目指す姿に観客やコミュニティが熱狂、感動する場を創ること』に関しても確かな手応えをつかんだ大会となった。

 試行錯誤を重ねながらも上々のスタートを切ったWUBSは、今年開催された第2回大会でさらなる進化を遂げる。参加チームは新たに北米とオセアニアの大学を招へいして加え、2022年の2倍となる8大学が集結した。

 第1回大会の優勝校であるアテネオ大を筆頭に、日本からは「第74回全日本大学バスケットボール選手権大会(インカレ)」の頂点に立ち再び出場権を手にした東海大、準優勝校の白鷗大学が参加。アメリカからは山﨑一渉が所属するNCAAディビジョン1のラドフォード大学が来日したほか、新たにシドニー大学(オーストラリア)、高麗大学校(韓国)などの強豪校が第2回WUBSチャンピオンを目指した。

今大会はNCAAディビジョン1のラドフォード大(赤のユニフォーム)、韓国の強豪、高麗大学校(白のユニフォーム)など4チームが追加された [写真]=WUBS

エキシビションマッチから好ゲーム連発の大盛況

 今大会は8月11日から13日の3日間で、計12試合のトーナメント方式にて開催。10日には“Opening Night”として日本学生選抜(JUBF選抜)vs初代王者・アテネオ大が実現し、試合はラスト1秒までもつれた末に70-69でアテネオ大が勝利。エキシビジョンマッチという位置づけながら、第2回大会の先陣を切るに相応しい大熱戦を繰り広げた。

日本学生選抜とアテネオ大のエキシビションマッチで大会はスタート [写真]=伊藤大允


 迎えた本戦は、東海大と国立政治大の一戦から戦いの火蓋が切られた。この初戦を優勝への山場と捉えていた東海大だったが、先手を取ったのは前回大会で東海大に敗れ、リベンジに燃えていた国立政治大。最初の10分間で11点差をつけることに成功すると、最後までリードを守りきり、81-73で勝利を収めた

 一方、初出場となった白鷗大は、東海大と逆側のブロックからトーナメント初戦に臨み、インドネシアのペルバナス・インスティテュート相手に97-49で快勝。前半をわずか13失点に抑えて好スタートを切った。

 大会2日目からは週末開催となり、会場には多くのファンが訪れた。コート上のプレーもヒートアップし、12日に行われた4試合のうち3試合は1ケタ点差という競り合いに。東海大vs高麗大学校は59-50、ペルバナス・インスティテュートVSシドニー大は60-56、国立政治大はラドフォード大を4点差で退けた。

 また、準決勝でアテネオ大と顔を合わせた白鷗大も、第3クォーター終了時点でのスコアは43-40と拮抗。それでも最後の10分間で30得点を稼いで突き放し、国立政治大の待つ決勝戦へと進出した。

ハイレベルな戦い制したのは国立政治大

 2代目王者が決まる最終決戦は、ティップオフからいきなり動いた。国立政治大が先制の3ポイントシュートを皮切りに14-0のランに成功し、前半で19点リードを獲得。しかし、後半に入ると白鷗大がディフェンスの強度を上げて徐々に点差を詰め、第4クォーター序盤には5点差まで迫った。

 勢いのまま逆転を狙った白鷗大だったが、最終盤に勝負強さを発揮したのは国立政治大。10番のソン シンホウと背番号7のユー アイチェが貴重なジャンプショットを沈めて逆転を許さず、最終スコア90-84で初の栄冠に輝いた。

 大会MVPには、決勝戦でファウルアウトとなるも計30得点13リバウンドの活躍で優勝へ導いたムハマド・ラミン・バイェが選出。初戦から順に東海大、ラドフォード大、白鷗大を倒しての優勝を飾った国立政治大のチェン ツーウェイヘッドコーチは、「大会を通じていいゲームができ、とても勉強になりました。東海大学と白鷗大学とも対戦することができましたし、大学バスケットでもチャイニーズ・タイペイと日本の交流を図ることもできて嬉しく思います」と3日間の激闘を振り返った。

大会MVPに輝いたムハマド・ラミン・バイェの活躍もありチャイニーズ・タイペイの国立政治大が優勝 [写真]=兼子愼一郎

WUBSは異文化を体験できる「一流の大会」

 惜しくも初出場で初優勝とはならなかった白鷗大。だが、エースの脇真大は「チームとして初めての大会でしたけど、海外の選手たちとプレーできたことで日本では感じられない高さや身体能力、フィジカルの強さなどをこの3日間で感じることができました」と手応えを口にする。

白鷗大の脇真大(右)は多くのチームと戦えたことの収穫を語った [写真]=兼子愼一郎


 計4日間にわたって開催された2度目のWUBSは、日本のみならず海外からのファンも声援を送り選手たちを後押しした。東海大の主将・黒川虎徹は「コロナも落ち着いたことで、去年と比べて観客の数が違いましたし、アウェーのような声援も聞こえたなかでプレーできたことは今後に向けてもいい経験になりました」と述べ、白鷗大を率いる網野友雄HCは「インカレの決勝でしか味わえないような熱気」と決勝戦の雰囲気を表現。

2度目の出場となった東海大の黒川虎徹は去年以上の盛り上がりを感じたという [写真]=兼子愼一郎


 この大会のために来日した海外チームの選手やHCからも、次のようなポジティブな言葉が並んだ。

「WUBSのすべてが一流の大会でした。本大会の参加を通じて、他国との対戦はもちろん、文化的体験、そしてチームとしての絆を深める機会という恩恵を強く感じています」

「WUBSは素晴らしい経験でした。チームとして一緒に戦うことができたし、海外の対戦相手に自分のスキルを試すこともできた。東京での滞在で、試合に出場し異文化を体験する機会を与えてくれたWUBSに感謝したいです」

「WUBSでのプレーは、私自身にとってもチームにとっても非常に素晴らしい経験でした。世界中のさまざまなスタイルのバスケットボールと対戦できたのは楽しかったですし、チームに一生忘れられない経験を与えてくれたWUBSに感謝したいです」

エンタメも充実。この熱狂はどこまで拡大するか

 試合以外にも様々なイベントが実施され、国内外の選手やパフォーマーがWUBSを盛り上げた。12日の全試合終了後には、アーティストのクリス・ハートさんの美声が代々木第二体育館に響きわたり、最終日には東京オリンピックで銀メダル獲得に大きく貢献した町田瑠唯(富士通レッドウェーブ)が来場。11日から13日にかけては「世界のカブトムシ・クワガタ展」や「バスケ縁日」といった夏休みならではのイベントも実施されるなど、家族連れでも楽しめる空間を生み出した。

8月12日の全試合終了後、アーティストのクリス・ハートさんのライブが行われた [写真]=WUBS


 大会を主催した全日本大学バスケットボール連盟と運営協力のRakuten Sportsをはじめ、タイトルパートナーの株式会社サン・クロレラや多数のスポンサーがひとつになって作り上げた第2回のWUBS。観客動員数も昨年比でプラス260パーセント超えを達成し、エンタメ的側面でも昨年を超える大成功を収めた。

 大会スポンサーからも「バスケの、スポーツの本来持っている力でしっかり盛り上がっている感じが素晴らしく日本のバスケにとっても一石を投じるレベルの意味のある大会でした」、「来年はさらに注目度が増した大会になるよう私どももサポートして参ります。WUBS2024が今から待ち遠しい限りです※」といった声が寄せられている。
※WUBS2024の開催については、現時点では大会側からの発表はされていない

『大学バスケの新時代』と銘打たれたWUBSは、その言葉通りバスケ界の新たなプラットフォームとなるポテンシャルや熱量、本気度を大いに感じられるものだったと言えよう。日本の選手たちから「また出たい」という声があがったように、今後は世界各国のチームから逆オファーをもらうような祭典になるかもしれない。

 そして、男子日本代表が歴史的快挙を成し遂げた沖縄での「FIBAバスケットボールワールドカップ2023」のように、バスケ界のみならず、日本を、世界を熱狂の渦に巻き込む一大イベントになることを願っている。

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