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「今大会は調子が悪く、それまでの3試合は納得のいかない感じだったのですが、(決勝は)何も考えずに自分ができることをチームのためにやろうと思っていました。そうしたら前半は積極的に攻めることができたので、多少ですが自分のプレーを出すことができてホッとしています」
12月10日に行われた『第75回全日本大学バスケットボール選手権大会(インカレ2023)』の女子決勝。7年ぶりに優勝を飾った白鷗大学の田中平和(4年)は、決勝戦をこう振り返った。
東京医療保健大学と5年連続で顔を合わせることになった決勝は、第1クォーターから白鷗大が先行。しかし、第3クォーターの序盤に追いつかれると、そこからはシーソーゲームに。その後も幾度となく白鷗大がリードを広げるのだが、その度に東京医療保健大の追い上げに遭う。それでも第4クォーターには司令塔の樋口鈴乃(4年)が適時にシュートを沈めて勝負あり。最後は79-69で白鷗大が勝利した。
「昨年はリーグ戦を勝ったのですが、最後のインカレで負けてしまいました。この舞台は普段と少し違うというのは分かっていて、4年生の気合いをチームにうまく伝達できたから勝てたのかなと思います」と、田中は笑顔で優勝の感想を語った。
名門・桜花学園高校(愛知県)の出身。3年次には平下愛佳(トヨタ自動車アンテロープス)や東京医療保健大の岡本らとともにインターハイとウインターカップで優勝を経験した。だが田中は、大学でつかんだ優勝は、高校とは違うものだという。
「正直、高校のときは自分がまだ未熟というか。心の面でも頼り切った形で、決勝も自分自身は試合に出ずに頼もしい同期と後輩が(優勝を)取ってくれました。優勝はうれしかったのですが、自分の中では貢献できていないなと感じていました。大学では試合に出る機会が増え、自分の中で自信が付いてきての優勝だったので、すごくうれしいです」
「高校時代のプレータイムは多くなかったけれど、体(の強さ)があり、シュートタッチも良かったので、オコエ桃仁花選手(女子日本代表)のようにインサイドもアウトサイドもできるようなってくれればいいなと思いました」
下級生の頃は「とにかくリバウンドだけ頑張れと言っていました」という佐藤監督。「そうしたら結果が付いてくるので自信が付き、どんどんと貪欲になっていった。最後は3ポイントシュートも自信を持って打てるようになったので、成長の幅、ものすごい成長率だと思います」と、佐藤監督は田中の成長に目を細める。
田中自身も白鷗大で充実した4年間を過ごしたようで、「高校のときは基礎。あのときに指導していただいた基礎があった上で、大学では次のステップとして佐藤監督からさらにプラスのことを教えていただきました。4番ポジションとしての動きを学び、それが今の自分のプレーを作って、中も外も少しずつできるようになったと思います」と言う。
中でも高校時代の仲間、岡本との対戦はいつも気持ちを昂らせてくれたようで、「お互いに意識していたと思います。特に私はいつも負けていたので、すごく意識していた選手。この舞台でマッチアップできることは楽しみだったし、試合前に『頑張ろうね』と話す仲なので、岡本選手がいたからこそ、ここまで頑張ることができた。本当に感謝しています」と、熱い思いを語った。
ベンチを温めることが多かった高校時代を経てオールラウンダーへと大きく成長した4年間。「バスケットに対してすごくいい取り組みをしていました」とは佐藤監督。すでにWリーグから発表があったとおり、卒業後はトヨタ自動車アンテロープスへと進む。アーリーエントリーしているため、早ければ12月29日の試合から出場が可能だ。そこでは岡本と再びチームメートとなり、さらには一足先に入団している平下も待っている。
「楽しみですね。でも、桜花のときより自分自身が成長していると思うので、みんなに負けずに頑張りたいです。(大学4年間で)少しだけ自信が付きましたが、まだまだだと思うので、これからもレベルアップしていきたいです」と田中。
「日本代表にからむ、もしくは日本代表で活躍するような選手になってほしい」という指揮官の期待を受けながら、田中は新たなステージでの挑戦の一歩を踏み出す。
取材・文=田島早苗