2020.02.28

【2020へと続く道#4】町田瑠唯(富士通レッドウェーブ)「東京五輪予選を経て『これが今の実力』と受け止め、前を向く」

フリーライター

 東京オリンピックイヤーとなった2020年。日本女子のトップリーグでもあるWリーグに身を置く選手たちは様々な思いを抱いてこの1年を過ごしている。

 バスケットボールキングでは女子日本代表の一人である富士通レッドウェーブ町田瑠唯にクローズアップ。

 第4弾は日本代表の一員として出場した2月の「FIBA 東京 2020 オリンピック予選大会」のことや今後のことを聞いた。

取材・文・写真=田島早苗

OQTでは流れを変える働きで貢献

「何て言えばいいんだろう…。難しいですね…」

 2月6日~9日の期間、ベルギーにて開催された「FIBA 東京 2020 オリンピック予選大会」(以下OQT)に出場した町田瑠唯富士通レッドウェーブ)。OQTでの3試合について問われた第一声はこうだった。

 今大会、町田は本橋菜子(東京羽田ヴィッキーズ)、吉田亜沙美(JX-ENEOSサンフラワーズ)に次ぐ3番目のガードとして起用された。そのため、初戦となるスウェーデン戦で初めてコートに立ったのは試合開始から17分経ってのこと。結局、この試合はトータルで僅か6分29秒の出場に留まった。その後、第2戦で10分05秒、第3戦では15分38秒と、出場時間こそ伸ばしたが、試合によって出場時間はまちまちで、さらに出場のタイミングも様々。所属する富士通レッドウェーブでは不動のスターターで平均出場時間は30分を超える町田にとって、いつ出るのか、どれくらい出るかが分からないといった状況の中でパフォーマンスを意地し続けることは難しかったといえるだろう。

 それでも、結果的には町田は役割をしっかりと果たし、日本代表の中での存在意義を十分に示した。

 中でもスウェーデン戦は、日本が初戦の堅さからかリズムに乗れずに接戦を強いられていた中、前半残り約3分でコートに入ると重い空気を打ち破る働き。日本の得意とするスピードあるバスケットを展開し、約3分間ながら前半をリードで終えるキッカケを作った。

 その後のベルギー、カナダ戦でも日本の特長を生かしたアップテンポなオフェンスを組み立て、さらには仲間へ好パスも配給し、シュートを演出した。

 限られた時間の中で結果を残すことができたのは、「いつ試合に出られるか分からないけれど、いつでも出られる準備はしていました。私がコートに入る時は、オフェンスのリズムを変えるなど、テンポを上げたい時。それが役割だと思って臨みました」と、どんな状況でも準備を怠らなかったから。

 特に気持ちの面での準備は大変だったはず。実際、取材中に「3番手の難しさというか、スタートがいて、その後に2番手が出る。また交代で1番手が出て、2番手が出て、最後に3番手が出るという中で結果を残すのは正直難しかったですね」と本音を漏らした。

 だが、『心が折れることはなかったか?』という問いには「そこは、今大会は心が折れないように、何秒でもいいから出た時は常に『自分のやることをやろう』と決めて入っていたし、ベンチでもそういう準備をしていたので、折れることなくできたと思います」とキッパリ。強い気持ちを持ち続けたことを伺わせた。

OQTでは果敢にリングへとアタックした町田[写真]=fiba.com

勝利へと導くガードになるために

 とはいえ、「2試合目(ベルギー戦)の1点差まで追い上げた時と(接戦となった)カナダ戦の勝ち切れなかったところが、今の自分の実力かなと思っています」と町田は冷静に語る。

 接戦の中で試合の最後を託されたポイントガードとして、チームが勝たなければ意味がないという思いは強いのだ。

「2試合とも勝ち切るところまで行けていたら、チームの勝ちだけでなく、自分自身の成長にもつながったのかなと思います。でも、そこを勝ち切れなかった、逆転まで持っていけなかったことがすごく悔しいし、今の実力だと受け止めないといけないと思っています」

 トム・ホーバスヘッドコーチは、町田に関しベルギー入り前の国内合宿でのパフォーマンスが「少し落ちていた」と語っていた。初戦の出場時間はそれが影響していたのかもしれない。

 大会を終え、町田は、まだまだ指揮官の信頼は勝ち得ていないと言い、この先もサバイバルの意識は変わらないと強調した。

「私が入るとボールが良く回る、速いバスケットにつながっているということを周りから言ってもらったので、そこは自分の持ち味として武器にしようと改めて思いました。

 3戦目はターンオーバーが多かったです。パスも上でひっかけられたというか。アジアとは違う高さとジャンプ力、腕の長さなので、もっと注意してプレーしないといけないなと感じました」と町田。

 芯が強くチームの勝利を最優先する司令塔。「自分のカラーを出しながらというのは難しいけれど、富士通でも点を取りに行くことを求められているので、そこは継続してやっていきたいです」と決意を新たにする。

 取材後、その場を去ろうとした町田は、最後にこちらに向かってこう言った。

「私の心は折れないですよ」

 その言葉は、強い覚悟を感じさせるとともに、これからも続く争いに向けて自分を奮い立たせているようでもあった。

スピードと的確なパスでチームメイトの得点を演出する[写真]=fiba.com