2020.04.25

【トッププレーヤーの高校時代】林咲希「高校生には『きつい』のもう一つ先、『しんどい』まで頑張ってほしい」(後編)

「長所を伸ばすことは大切」と高校生にアドバイスを送る林[写真]=バスケットボールキング
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春は出会いと別れの季節、特に中高生にとっては入学や進級などで環境が大きく変わる時期だ。
新たな生活に大きな期待を抱く一方で、同じくらいの不安を抱く生徒も多いだろう。
そこでバスケットボールキングでは、BリーグやWリーグの選手たちに、高校時代を振り返ってもらうインタビュー特集をスタート。
トップリーグで活躍する選手たちの高校時代の話を、今後の学生生活の参考にしてほしい。
第3回はJX-ENEOSサンフラワーズでも日本代表でも活躍を見せる林咲希が登場。日本を代表するシューターへと成長した彼女の原点とは。福岡県の精華女子高校での3年間を全3回のインタビューで振り返る。

インタビュー・文=田島早苗
写真=バスケットボールキング編集部、FIBA

2019年は日本代表としてもしっかりと存在をアピールした年になった[写真]fiba.com


――部活漬けの高校時代でしたが、精華女子高校の校舎は博多駅近くにあります。通学中にどこかに寄ったりなどしたのですか?
 学校は住宅街の中にあったし、遊ぶということはなくて、博多の街もただの通学路でした(笑)

 その時は遊びたいとも思わなかったけれど、高校を卒業してから「もう少し世間の遊びを知っておけばよかったかな」とは思いました(笑)

――女子校の中で強豪・バスケット部の人気はあったのではないですか?
 どうですかね…。友だちは多かったし、クラスで中心になってやってはいました。吹奏楽部も実績があり、どのクラスもバスケット部と吹奏楽部が中心だったような気はします。

――卒業してから約8年。精華女子の後輩たち試合を見て、変わっていないなと思いますか?
 思いますね。がむしゃらさもそうですし、後輩たちが一生懸命に跳んだり、走ったりする姿を見るのは楽しいですね。それにベンチも応援席も一緒になって戦っている感じは、やっぱり『精華だなぁ』と感じます。

――これまでの話を聞いていると、大上晴司コーチの指導は個を伸ばすといった印象を受けます。
 潜在能力を引き出してくれるんです。精華ではミーティングがあるのですが、その時にしてくれる話は、『氷山は下の隠れている方が大きい。外からは見えていないところが大切なんだ』といったようなバスケットの技術ではない、考え方などの話も多くて。私の人間性は高校時代に作られたと言ってもいいぐらい、多くのことを教わりました。

 精華の横断幕に書かれている文字は『努力は人を作る』なのですが、その考えは今でも自分の中にあって、努力の大切さを高校で学ぶことができたと思っています。

――おそらく、ミニバスや中学時代から努力を続けてきたと思いますが、高校に入って大上コーチと出会ったことでまた取り組む姿勢が変わったと。
 激変しましたね。体作りの基礎から考え方など何から何まで。本当に濃かったです。だからこそ、今振り返ると試合よりも日々の練習での記憶が強くあるのだと思います。

――高校時代に「自主練習が楽しいと知った」と言っていましたが(前編)、それはなぜですか? 自主練習をすることで成果が見えるからですか?
 成果が見えるというのは一番にあります。大上先生が「これどうだ?やってみたら」と言ってくれたことをやると、本当に成功するんですよ。それが不思議でたまらなくて。でもやれば成功するから、また頑張ろうと思えて。褒め方も上手で、本当にすごい先生だなと思います。

――卒業した今、どういったところで大上コーチの教えが生きているなと感じますか?
 全てですね。体力面、走り勝つこと、シュートといったことや、仲間を信用する大切さなど、全ての面で感じます。

――改めて精華女子に行って良かったと感じますか?
 はい。精華に行かなかったら、また道が違ったと思います。

――高校で一番思い出に残っている試合などはありますか?
 この試合というよりは、中村学園女子高校と対戦する時は緊張したし、モチベーションが上がりました。それは、安間(志織/トヨタ自動車アンテロープス)がいたこともそうですし、中村という伝統校だったからということもあります。

 何度も言うように、試合は3年生の時の記憶しかないぐらいで(笑)。3年生の時は中村、福岡大附属若葉には負けたくないと思っていました。

 あとは試合中、流れを自分たちの方に持ってくる、引き寄せる時の雰囲気を覚えています。「今だ!」みたいな。その時は私とガードの栗原祥美が頑張る時だって思いながらやっていましたね。彼女とはコンビネーションプレーを結構やっていたので。

――では最後に、現役の高校生にメッセージをお願いします。
 私は中学から高校に上がる時にケガをしていたこともあり、入学当初はどうやったら高校のレベルの体になるか、また環境になれることができるかを考えていました。

 その中で、「私の長所は走ることだからそれを伸ばそう」と思い、毎日走りました。走ることが好きだったということもあるのですが、長所を伸ばすことは大切。苦手なことを克服するのも大事ですが、自分の中で光るものや『ここは負けない』と思っているものを伸ばすことで、そこを見てくれる人がいます。『自分の長所はなんだろう?』と考えた時、パッと思い浮かんだものが長所だと思うので、是非、今の高校生たちにも自分の長所や好きなことを伸ばしていってもらいたいと思います。

 あとは練習などを『きつい』で終わらせるのではなく、『きつい』のもう一つ先の『しんどい』までいけば、だいたい次のステップで耐えられます。

 どれだけ自分で追い込んで、準備できるかが大切。それを私も高校時代に学んだので、練習はきついとは思いますが、追い込んでおけばその後が楽なので、頑張ってほしいです。

PROFILE
林 咲希(はやし・さき) JX-ENEOSサンフラワーズ
高確率の3ポイントシュートで勝利を呼び込む日本代表のシューター。また、それだけでなく、走力も持ち味で、速攻など速い攻めにも積極的に絡む。精華女子高校を経て、進学した白鷗大学で4年生の時にはインカレ優勝を達成。ユニバーシアードの日本代表として2大会連続で出場しており、2017年大会では準優勝を果たした。昨年から日本代表としても本格的に国際大会で力を発揮している。

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