2021.06.28
BリーグやWリーグの選手たちに、高校時代のことを振り返ってもらうインタビュー企画、
第10回は愛知県の中部第一高校出身の張本天傑だ。
両親が中国人で自身も中国生まれ、さらに父はバスケットボール選手、母はバレーボール選手とスポーツ一家に生まれた張本選手が中部第一に進んだわけ、
練習がとにかく厳しいと噂されていた同校でどのように3年間を過ごしたのか。前編・後編にわたってお届けする。
インタビュー・文=山田智子
写真=B.LEAGUE
――1年生の頃から主力として試合に出場し、8年ぶりにインターハイに出場しました。
張本 1年生のインターハイでは市立船橋に負けたんですけど、神佳希さん、遠藤 (祐亮/宇都宮ブレックス)さんがいて、全国にはこんなうまい選手もいるんだって驚きましたね。
――高校3年間で一番印象に残っている試合は?
張本 3年生のインターハイ前の東海大会の決勝です。藤井祐眞(川崎ブレイブサンダース)がいた藤枝明成高校に勝って、初めて東海大会で優勝したんです。僕が47点で、宇都が42か43点で、藤枝明成も祐眞と鈴木友貴がそれぞれ40点くらい取って、本当に点の取り合いでしたね。
――ウインターカップには3年生の時に初出場しました。
張本 ウインターカップは苦い思い出しかないですね。3年のインターハイの3回戦で負けた延岡学園とウインターカップの3回戦でも当たって、また負けてしまいました。なんで毎回同じ相手とやらなきゃいけないんだと、くじ運も含めて悔しかったです。
――張本選手と宇都選手がいても、全国大会で勝ち上がるのは難しいんですね。
張本 延岡学園戦で永吉(佑也/現京都ハンナリーズ)とマッチアップしたんですが、彼は当時から身体が重くて、力強くて。逆に僕はめちゃくちゃガリガリで体重差が20キロくらいあり、全くかなわなかったです。
――そうした厳しい練習や全国大会での経験を通して学んだことは?
張本 やっぱりあきらめないことが一番じゃないですかね。相手をリスペクトしながらも、最後の最後まで試合をやり切ることが大事ですし、高校生ってそういう熱いところが一番の魅力だと思います。技術うんぬんじゃなくて、やっぱりバスケットに対しての情熱や諦めの悪さ、ルーズボールなどの泥臭さ、そこが一番面白いんじゃないかなと思いますね。どこも手を抜かず、最後まで一生懸命やること、それは今でも自分のバスケットに生きています。
――最後まであきらめないと言えば、ウインターカップ2回戦の八王子高校戦はオーバータイムの末1点差での勝利でしたね。
張本 そうです。最後は僕がブロックして、本当にギリギリで勝ちました。相手のキャプテンの橋本(貴智)は愛知県出身で、ジュニアオールスターで一緒だったんです。だからすごく思い出深くて、楽しい試合でした。
――中部第一の常田監督から教わったことで、今でも役に立っていることは?
張本 「常に自分の進化を求め続けること」ですね。試合で負けてもいいんだけど、それをしっかりと反省して、次の自分の成長にどうつなげるか、そこが一番大事だといつも言われていました。それは今でも心に響いています。
――常に進化を求め続けた3年間だったんですね。
張本 本当にキツかったですね。もう一度高校に戻れと言われたら絶対に嫌(笑)。でも、あの練習を耐え抜いたからこそ、今の自分がいる。3年間やり切った自分を褒めてあげたいし、結構誇りに思っています。フィジカル的には走れるようになりましたし、人間的にもたくましくなれました。
――U-18の日本代表に選ばれたことも、進化の過程で大きな経験になったのではないですか?
張本 すごく大きかったですね。永吉や、(畠山)俊樹(現越谷アルファーズ)、(田中)大貴(現アルバルク東京)と一緒で、今まで経験したことのない高いレベルでバスケットをさせてもらって、学ぶことがたくさんありました。周りを見ながら勉強をして、それを自分のチームに持ち帰って、「代表ではこういうことをやってるよ」とか、「この子はここがうまい」とか、みんなで経験をシェアしていました。ただ僕の年はちょうど大会がなくて、代表で試合をすることができなかったのは残念でした。
――ご自身の経験を踏まえて、部活生へアドバイスはありますか?
張本 今の子たちはSNSなどで上手い選手たちのプレーをたくさん見ることができるので、それを真似して、僕もびっくりするぐらい1対1やドリブルが上手いんですよね。だから技術面は問題ないと思うので、あとは常に感謝と謙虚の気持ちを持ってバスケットをやってもらいたいです。
――最後に、コロナ禍で思い切り部活ができない時期を過ごしてきた中高生へのメッセージをお願いします。
張本 僕が今の状況に置かれたら、本当に辛いと思います。でもこの3年間練習してきたものは絶対に無駄にはならない。それをどうやって今後に生かすかは自分次第だと思います。今年インターハイに出られなかった3年生は、その悔しさを大学の部活にぶつけてもらいたいですし、下級生は来年もっと上手くなって、先輩たちの悔しさを晴らしてもらいたいですね。バスケットは本当にやればやるほど楽しい。その楽しさを忘れずに、今後もどんどんチャレンジしてほしいと思います。
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