2021.02.04
BリーグやWリーグの選手たちに、高校時代のことを振り返ってもらうインタビュー企画、
第10回は愛知県の中部第一高校出身の張本天傑だ。
両親が中国人で自身も中国生まれ、さらに父はバスケットボール選手、母はバレーボール選手とスポーツ一家に生まれた張本選手が中部第一に進んだわけ、
練習がとにかく厳しいと噂されていた同校でどのように3年間を過ごしたのか。前編・後編にわたってお届けする。
インタビュー・文=山田智子
写真=B.LEAGUE
――まずはバスケットボールを始めたきっかけから伺わせてください。
張本 父がバスケットをしていたので、その影響で小学校2年生の時に始めました。当時は中国にいたので、最初は中国のクラブチームで始めて、小学校6年生の時に日本に来てからは、岐阜県の小学校のスポーツ少年団に入りました。中学校の時に愛知県みよし市に引っ越して、地元の三好町立北中学校(現みよし市立北中学校)の部活でバスケットを続けました。
―—三好町立北中学校は強かったのですか?
張本 地区大会で1回戦、2回戦進出というレベルで、県大会にも出たことはないです。僕もそこまで上手くはなかったのですが、バスケットをするのが楽しくて、とにかく一生懸命やっていたという感じです。
――張本選手のチームでの役割は?
張本 ゴリゴリのセンターですよ。当時、すでに身長が185センチくらいあったので、ゴール下、リバウンド要員でした。
――高校は中部第一高校に進学しますが、ジュニアオールスターを経験したことは大きかったですか?
張本 そうですね。ジュニアオールスターに選ばれたことをきっかけに、中学3年生から豊田市のシェンロンという、愛知では強いクラブチームにも入りました。高校に進学するにあたっていろいろと声を掛けてもらったのですが、中部第一高校から一番熱く誘われたので、進学を決めました。
――ジュニアオールスターでは、のちに一緒に中部第一へと進学する宇都直輝選手(富山グラウジーズ)と初めてプレーされました。第一印象はいかがでしたか?
張本 宇都がいた中学は、全中や東海大会に行くような愛知の強豪校で、そういうレベルの高い選手を見たことはなく、ビックリしましたね。でも当時は僕も調子に乗っていたので(笑)、「俺の中学校のほうが強いよ」とか言って、張り合っていましたね。
当時の中部第一は愛知県でベスト4に入るか入らないかぐらいで、それほど強くなかったんですよ。練習がキツいことでは有名でしたが……(苦笑)。僕としてはやりがいのあるチームが良かったので、宇都ともう一人ジュニアオールスターの同期と3人で一緒に行って、中部第一を強くしようという話をしましたね。
――自分たちで強くしようという気持ちで入学したんですね。
張本 そうです。僕らが入って1年目に、8年ぶりにインターハイに出場できて、そこから段々強くなっていったという感じですね。
――歴史を作ったのですね。
張本 僕はそう思っています。常田(健)監督からも「感謝している。お前らのおかげで今の中部第一がある」といまだに言われるんですよ。
――練習がキツくて有名だったということですが、実際はどうでしたか?
張本 キツかったです。試合よりも練習のほうが緊張するくらい。僕と宇都は1回も練習を休んだことはなかったんですけど、同期や後輩の中には練習が怖すぎて、実家に帰ったりとかする人もいました(笑)。
内容的には、バスケットの技術よりは、どちらかというとメンタルの強さや脚力を鍛えるという練習が多かったです。陸上部と一緒に山を走りに行っていました。それも、きちんと整備されていないボコボコの山だったので、すごく足腰が鍛えられましたね。それが終わってからは体育館に戻ってフットワークをやったり、とにかく走ることがメインでした。ボールを使った練習は午後からで、午前中は一度もボールに触らなかったです。バスケットのスタイルとしても、ラン、ラン、ラン、ランって感じでした。
――噂どおりの厳しさですね。それでも張本選手と宇都選手は逃げ出さなかったと。
張本 僕らは練習から逃げたことはなかったです。すごくメンタルを鍛えられましたね。
――名物練習はありましたか?
張本 一番キツかったのは、インターバルといって、決められた秒数でバレーコートをグルグル走る練習もあるんですけど、カーブが多いので足にすごく負担がかかるんですよ。あとは1分間ダッシュという、サイドラインとサイドラインを1分間に17回タッチする練習があるんですけど、切り返しがすごく多いので、1年生の頃は気持ち悪くなってしまって、全くついていけませんでした。2年生になってようやく走れるようになって、努力すれば何でもできるようになるんだと自信になりました。
――辞めたいと思ったことはありませんでしたか?
張本 やめたいと思ったことはないですね。ただ1日1日の練習をどう乗り切るかということしか考えていなかったです。僕はすごい負けず嫌いなので、自分が日に日に上手くなっていく、走れるようになっていくのを実感できることがうれしくて、それを常に求めるようになりました。宇都も負けず嫌いなので、練習中に喧嘩することもしょっちゅうでしたが、お互いに切磋琢磨してうまくなっていこうという気持ちがありました。
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