Bリーグ公認応援番組
『B MY HERO!』
スターターとして戦い抜いた22試合
「昨シーズンよりも、今シーズンの方が終わったときの感覚として手応えを感じています。ただ、手応えはあるけれど、同時に課題がめちゃくちゃあって…。今、終わったけれど、早くバスケがしたいって思っています」
3月20日、プレーオフ進出をあと一歩のところで逃した東京羽田ヴィッキーズは、レギュラーシーズン最終戦となったこの日が、2021-22シーズンの終わりを告げる試合となった。
その試合終了後、充実感と少しの後悔をにじませた表情でシーズン振り返ったのが軸丸ひかる。新型コロナウイルス感染症の影響で2試合が試合中止=不成立となったが、全22試合をスターターとして出場し、一試合平均で7.5得点2.5アシストという数字を残したポイントガードだ。
「本橋(菜子)さんのケガによって、プレータイムが必然的に増え、そこで経験を積むことができたのはすごく良かったです。後半戦はあまり点を取れていないのですが、点にからめるんだという手応えや、しっかりゲームメイクができたという手応えもあるので、昨シーズンは何もできなくて悔しい思いしかなかったけれど、今シーズンは手応えを感じて終わることができました」
同じポジションで絶対的エースの本橋が、一昨年11月に負った膝のケガの影響でコンディション調整もあったため、今シーズンはバックアップとして出場。その分、軸丸が先発の司令塔として奮起し、チームをけん引した。
2年目で巡ってきた大役だが、「ありがたいことにこれまで(中学や高校など)各カテゴリーでスタートとして出る機会が多かったので、個人的にはその方が試合に入りやすく、プレッシャーはあまり感じなかったです。それよりも、やるしかない、やりたいという気持ちが強かったですね」と軸丸は言う。
今シーズンからスタッフが萩原美樹子ヘッドコーチと佐藤謙介アシスタントコーチの体制となり、「やりたいことが明確になった」ことも大きかったようで、「消極的な気持ちよりも積極的でポジティブな気持ちの方が強かったです。『あれをやりたい』『もっとこうしたい』と思うことが多かったので、逃げる気持ちはなかったですね」と声を弾ませた。
来季につながるたくさんの収穫と課題
「オリンピックで銀メダルを獲得した選手が相手にいることはワクワクしたし、何より『今年のヴィッキーズは違うぞ』というのを自分から出していきたかった」という富士通レッドウェーブとの開幕戦では、マッチアップの相手である町田瑠唯にハードなディフェンスを仕掛けるなどタフな動きでチームを盛り立てた。そういった攻め気のプレーには、軸丸自身、満足はしながらも、「ただ、その思い切ったプレーが後半になるにつれて悪いクセとしてで出ちゃったので…」と反省の弁。取材中、軸丸は幾度となく課題や反省点を口にした。
「ここ一本ほしいときに決めることのできる得点力。それとヴィッキーズは、上位チームに対して下から食っていく立場なので、そこで私がキッカケの一つになるべきだと思うし、一本を積み重ねていく力というか、絶対的な力をもっと付けていく必要があるなと感じました」
それでも、応援してくれるファンの話になると、「(コロナ禍により)直接交流する機会はなかったのですが、SNSを見ると、『何より思い切りやってほしい』『笑顔でやってくれることが一番』という投稿がたくさんあって。もちろん、勝ち負けも大切だけど、それ以前である“バスケットに対する姿勢”は、今シーズン、示すことができたのではないかと思います」と満面の笑みを浮かべた。
ただ、やっぱりここでも、もっと良いプレー、もっと元気な姿をファンの方に見せたいとコメント。
そんな軸丸がシーズンを通してブレなかったもの、やり通したものとは?
「逃げなかった」
時間を開けずに返した答えについて軸丸は、「昨シーズンは気持ちも弱くて、ガタガタと崩れてしまいました。でも、崩れたことによって得られたこともありました。(逃げないということは)今シーズン、(自分自身に)言い続けてきたことだったかなと思います」と付け加える。
ルーキーイヤーのさまざまな経験を経て、たくましくなって再びコートに立った2年目。全日程を終えた軸丸は、最後に、こう言って会場を後にした。
「もっとできるんです。もっと頑張りたいと思うんです!」
その渇望が彼女をまた強くする。
文=田島早苗