2022.08.17

女子日本代表の現在地…三井不動産カップを経て見えてきた実力とW杯への課題

開幕が迫るワールドカップに向けて強化を進めている女子日本代表 [写真]=伊藤 大允
フリーライター

ゾーンディフェンスに対する攻撃とリバウンドが課題に

 8月11、12日にゼビオアリーナ仙台にて行われた「三井不動産カップ2022(宮城大会) 女子国際強化試合」は、女子日本代表(FIBAランキング8位)が女子ラトビア代表(同24位)を相手に2連勝を飾った。

 第1戦は83ー54、第2戦も74ー48と、いずれも30点近い差をつけての勝利であったが、この国際強化試合は、9月22日からオーストラリアのシドニーで始まる「FIBA女子バスケットボールワールドカップ2022」に向けて内容も問われる試合だった。そのため、恩塚亨ヘッドコーチも、2戦目を終えたコート上のインタビューでは今後に向けた課題を語っていた。

 その課題の一つに挙げていたのが「リバウンド」。190センチ以上の選手を3人擁するなど、高さではラトビアに分があるとはいえ、リバウンド本数では第1戦が相手の44本に対して34本。第2戦も日本が35本で、ラトビアが50本と、2試合ともに2ケタの差をつけられた。

 また、記者会見の席でキャプテンの髙田真希(デンソー アイリス)が課題として語ったのはゾーンディフェンスへの攻め。恩塚HCもマンツーマンに対してのオフェンスは「状況に応じて適切に判断できる機会が多くなった」としながらも、ゾーンディフェンスに対しては「クローズアウトが横からきたり、隣からヘジテーションがあったりした時、判断に迷うというか、『ここで打つべきなのか?』といった感じで処理がうまくいってなかった」と振り返った。

 相手のゾーンディフェンスに対しては、オフェンスの動きでの修正点もあるだろう。加えて髙田は、「相手にシュートゲットされてしまうと、どうしてもスローインからのスタートになって、ハーフコートでの(攻撃の)展開が増えてしまいます。相手がゾーンでも、日本がディフェンスで相手のミスを誘ったり、タフショットを打たせたりすることで自分たちのブレイクにつなげていきたいです」と、得意とする速い攻撃を仕掛けるためにも、自らのディフェンスがポイントだと強調した。

日本代表をけん引する髙田 [写真]=伊藤 大允

3ポイントシュートの確率は上がらずも、攻撃の幅の広さを見せた2試合

 スピードに加え、オフェンスで日本の特長となるのが3ポイントシュート。ここに目を向けると、この2試合で決めた本数は、第1戦は36本中8本(22.3パーセント)に留まり、第2戦は36本中14本(38.9パーセント)と決して満足のいくものではなかった。「(成功率)40パーセント以上が一つの目標値だと考えているので、その点は引き続き強化していきたいです」と恩塚HC。

 3ポイントシュートを得意とする宮澤夕貴(富士通レッドウェーブ)も、「3ポイントシュートを打てるシーンは多々あったと思っています。今は、自分の役割が3ポイントシュートだけではなく、いろいろな選択肢があるからこそ迷うところはありましたが、(今後は)最初に3ポイントシュート、次にドライブという選択ができるように(攻撃を)磨いていきたいと思います」と語った。

 一方で、第1戦のように3ポイントシュートが入らない時でも、「恩塚HCが以前から『シュートが当たらない時はペイントアタックするように』と言っていました。私もシュートが当たっていなかった分、ペイントアタックから得点につなげることができました」と東藤なな子(トヨタ紡織 サンシャインラビッツ)が第1戦後に言っていたように、外角シュートにこだわることなく、ディフェンスを見ながらドライブをきっかけに得点を奪うシーンが多かったのは、恩塚HC体制となったチームの新たな強みでもある。

 また、7月から本格的に日本代表活動に参加し、久しぶりの国際強化試合に出場した渡嘉敷来夢(ENEOSサンフラワーズ)がインサイドで果敢に1対1をアタックしていたこともプラスだ。「インサイドで1人で打開できる力があり、1対1でフィニッシュや守り抜くことができるのは大きな存在」(恩塚HC)と、3ポイントシュートにドライブ、そしてインサイドプレーと日本の得点パターンは豊富だったといえる。

東京オリンピックの中心メンバーに渡嘉敷などが新たに加わった [写真]=伊藤 大允

 その渡嘉敷をはじめ、20歳の平下愛佳(トヨタ自動車 アンテロープス)が第1戦で6スティールを挙げるなど攻守において奮起。ポイントガードの安間志織(ウマナ・レイェ・ベネツィア)も2試合を通してアグレッシブなプレーを見せるなど、「東京2020オリンピック競技大会」不出場の実力派や若手選手たちが躍動した。加えて、東京オリンピックでは最年少だったが、現在は必要不可欠のポイントゲッターとして気を吐いた東藤など、それぞれが持ち味を発揮していたことも明るい材料だ。

「いろいろな選択肢がある中で、相手が何をしてくるかによって自分たちがいい選択をしないといけない。『これをやろう』といったことを選手間で話していかないといけないのですが、少しずついろいろな選手から声が出てきています」と髙田。さらに「コミュニケーションを取ることで相手に適応できる能力が高まっていると思います。今、その最終段階に向けて毎日練習しているところ。少しずつそれができていると感じます」と、チームの現状を的確に語った。

「(ワールドカップでも)相手は日本の持ち味であるスピードを抑えようとしてくるので、今回の試合はすごくいい機会だし、しっかりと修正していきたいです」と髙田は、チームメートの思いを代弁。2021年に続き、コロナ禍により海外遠征など対外試合が少ない中、ラトビアを相手に戦った三井不動産カップは、日本の力を測る上でも、価値ある、意味深い2試合となった。

ワールドカップ開幕まで約1カ月となった [写真]=伊藤 大允

文=田島早苗

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