2022.08.13

渡嘉敷来夢、復帰戦で大きな存在感…理想のプレーに向けてさらなる高みを目指す

結果を残したものの、「もう少しできてもいい」と自身のプレーに満足していないようだ [写真]=伊藤大允
フリーライター

 8月12日、ゼビオアリーナ仙台で「三井不動産カップ2022(宮城大会) 女子国際強化試合」の第2戦が行われた。

 試合は、14本の3ポイントシュートを沈めた女子日本代表が女子ラトビア代表に74-48で勝利。9月22日から10月1日にかけてオーストラリアのシドニーで開催される「FIBA女子バスケットボールワールドカップ2022」前の日本国内で行う最後の国際強化試合を2連勝で終えることとなった。

「悪くはなかったのかなというのが一番の印象というか……。良かったところもあるんですけど、なんか……って感じです。(説明が)難しいんですけど、良くも悪くも、こんなものかなという感じですね」

 この2戦を振り返り、自分自身のパフォーマンスをこう表現したのは、7月より日本代表活動に本格的に参戦した渡嘉敷来夢(ENEOSサンフラワーズ)。久しぶりに日本代表のユニフォームを着て、日本のファンの前で堂々のプレーを見せたが、本人のハキハキとした口調とは裏腹に、少しスッキリしない言葉が並んだ。

 渡嘉敷は、第1戦を16分45秒の出場で15得点5リバウンド、第2戦は17分05秒の出場で6得点4リバウンドを記録。限られた出場時間の中でしっかりと仕事を果たした。

 それでも、本人は、「自分自身で思い描いていることが高すぎるからなのか、もう少しできてもいいのかなと思っています」とコメント。その真意を「ディフェンス面ではチームが求めていることをもう少しできたのではないかと思っていて、特にローテーションが複雑だとかいろいろあるのですが、そこをクリアにできたのではないかなと思います。得点面でもう少し中(インサイド)に入れたかなと。中でボールを呼んだ方が良かったかなとか、細かいところが結構気になっています」と語った。

 もちろん、渡嘉敷は現状のプレーで満足していないだろう。もっとできるという気持ちは強いはずだ。それでも、試合ではリング下での力強いパワープレーや高さと跳躍力を活かしたリバウンドなど、渡嘉敷ならではのプレーを随所に発揮。渡嘉敷がいることでインサイドに強さが増し、また安心感も生まれた。

193センチの高さを誇る渡嘉敷の存在は日本にとって大きい [写真]=伊藤 大允

 日本代表はもとより、2020-21シーズンまでENEOSでチームメートだった宮澤夕貴(富士通レッドウェーブ)も、「ずっと一緒にやってきたでの、プレーしやすいのもあるし、心強さもあります」と言う。

 そんな渡嘉敷は、第2戦、前半の終了間際に鮮やかなパスでチーム最年少の朝比奈あずさ(筑波大学1年)への得点を演出した。好プレーに会場も盛り上がったが、あのシーンを「自分で(シュートまで)いこうと思っていたけど、ロール(ターン)した瞬間にディフェンスがきたので、『開いてるな』という感じで、ロン(朝比奈)は合わせが上手なので信じてパスを出しました」と、本人は振り返る。

 それと同時に、「(そのプレーで)リズムをつかんでくれたらなと思っていました。彼女が高校生の時に、(試合を)結構見ていたので、そういう選手にパスしたり、同じコートに立ったりするのはめちゃくちゃうれしいですね。少しでも(朝比奈が)日本代表に対して熱くなってくれたらうれしいなと思います」とも語った。

 朝比奈は、渡嘉敷の出身校でもある桜花学園高校を卒業して1年目の選手。渡嘉敷自身もかつて高校2年生で日本代表候補入りを経験しているだけに、10代でWリーグの選手たちとともに戦う朝比奈の気持ちも十分にわかっていたのであろう。

 そういった仲間への思いやりや、さりげない気づかいの言葉も渡嘉敷ならでは。まだまだ本領発揮とまではいっていないが、仙台で行われた三井不動産カップは、ワールドカップへと挑む日本に『頼もしいエースが帰ってきた』ことを印象付ける2試合となった。

チームメートを活かすプレーも見られた [写真]=伊藤 大允

文=田島早苗

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