2022.10.04

世界の舞台で躍動した最年少の平下愛佳…前へと進み続ける日本の“ルー”

A代表として初の国際大会で貴重なシュートを決めた平下 [写真]=fiba.com
フリーライター

「初めてのフル代表の世界選手権(ワールドカップ)ということもあって、最初はすごく不安な気持ちもありました。でも、先輩たちが『思い切ってプレーして良いよ』と言ってくれて、そのおかげで思い切って自分のシュートも打てたと思うし、1勝4敗と悔しい結果でしたが、個人的にはすごく良い経験になったので、これからのバスケット人生に生かしていきたいです」

FIBA女子ワールドカップ2022」の初戦となるマリ戦でいきなり3ポイントシュート5本を含む17得点。トップの日本代表として、FIBAの公式大会ではデビュー戦となった試合で見事な活躍を見せたのが、チーム最年少の平下愛佳トヨタ自動車アンテロープス)だ。

「緊張というよりは、挑戦しようという気持ちで臨んでいました」という試合では、「全試合を通して、自分のタイミングでシュートは打てていたと思います。確率はあまり良くなかったかもしれませんが、世界を相手にもしっかりと自分のシュートは打ち切れたと思います」と振り返る。

 その得意とする3ポイントシュートをはじめ、大会ではディフェンスで前からプレッシャーをかけることも通用したと感じたようで「そこは私だけではなく、日本の強みなので、これからも努力を続けて、上達していければいいなと思います。元々、ディフェンスは得意な方ではなく、そこを課題としてやってきました。(今大会では)相手にターンオーバーをさせたり、スティールも何本かできたので、成長したところかなと思います」と言う。

平下はディフェンス面でもチームに貢献 [写真]=fiba.com


 だが、手応えと同時に、「ハーフコートバスケになったときに、もう少しピックの抜け方やオフボールのところのディフェンスをもう少しこれから磨いていければよかったです」と、次なる課題も見えてきたようだ。

 また、「シューターとして相手に見られることが多かったので、(大会の)最後の方はすごく3ポイントシュートをマークされてしまいました。今後は3ポイントシュートだけではなく、ドライブやジャンプシュートもできるようにしていければ良いなと感じました」と、平下。

 まだまだ取り組むことは多いが、それでも、トッププレーヤーが集い、国の威信を懸けた世界最高峰の戦いの場では得たものや刺激を受けたものも多く、それは今後の平下にとってかけがえのない財産となるだろう。

「(相手の)勝負強さ、24秒ギリギリでも絶対にシュートを決めるという気持ちの強さはすごいなと思いました。最後の最後まで強引にでも点を取ろうとする強さは、自分たちがもっと身につけていかなければならないことだと感じました」

 今回、大会が開催されたのはオーストラリア。そのオーストラリアの国章に描かれているのが、カンガルーとエミューで、どちらも後退することができず、前にしか進めない動物のため、「前進あるのみ」という意味があるという。オーストラリア代表のユニフォームにも国章が真ん中の上部に配置されているが、カンガルーは、Kangarooのrooから『ルー』と略して呼ばれ、親しまれているそうだ。

 偶然にも平下のコートネームは『ルー』。青い色が好きでBlue(ブルー)のルーということで由来こそ違うものの、平下もまだ、「前身あるのみ」の20歳。「自信になった」という大会を経て、新たな戦いに向かう日本のルーは、強い思いを言葉にした。

「オリンピックには出場したいし、そこが目標です。でも、もっと自分が成長しなければ代表に入れないなということが今大会で分かりました。(2024年開催予定の)パリオリンピックを目指しつつ、もっとWリーグで活躍をして、自分のプレーを周りに知らしめることができれば良いなと思っています」

取材・文=田島早苗

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