2025.09.17
9月16日、Bリーグ・島田慎二チェアマンのポッドキャスト番組『島田のマイク』の臨時配信が行われ、2026年1月に予定している新たな取り組み『B.LEAGUEドラフト2026』に関して、一部で生じた誤解や懸念に対して、詳細な説明と今後の改善への取り組みを語った。
今回の臨時配信は、大学バスケットボール関係者によるSNS投稿を発端とした、ドラフト制度に関する懸念の声を受けてのもの。島田チェアマンは冒頭で「誤解を解きたい」と切り出し、これまでの経緯を説明した。
「誤解がないように」と前置きし、これまでのBリーグの取り組みについて語る。「まず大前提として、我々が学生や、大学関係者を無視して(制度設計を)進めているということはまったくない」と強調。Bリーグはこれまで全日本大学バスケットボール連盟とは複数回にわたって意見交換を行い、大学連盟からの要望を受けて、傘下の大学の監督、コーチに向けた説明会も実施したという。
リーグとしてはていねいなコミュニケーションを図り、情報の共有を怠っていないにもかかわらず、なぜ大学の指導者から懸念の声が挙がったのか。リーグ側もこの事態を受け、すぐさま関係者と直接対話する機会を持ったという。
当該の投稿の真意がBリーグへの直接的な批判ではないことも確認できた。しかし単純な「言った、言わない」の問題ではなく、話はより本質的な部分へと進む。
今回のような“すれ違い”が生じてしまった背景について、島田チェアマンは、ドラフトという大きな変革期を迎えた今だからこその構造的な難しさがあると考える。
「(制度の)過渡期における、モヤモヤするものが大学バスケ界、かつ、そのドラフトにセレクションされそうなトップ選手を抱えるような監督にすれば、重要なこと」
特に、これまで選手たちが比較的自由に進路を選択できていた状況から、ドラフトという新たな制度がスタートするという変化への戸惑いは大きいと考えられる。有望な選手を預かり、その将来に責任を持つ大学の指導者たちが、情報に対してより一層敏感になるのは当然のことだろう。
さらに、この“モヤモヤ”の背景には、制度設計がまだ発展途上であることも関係している。そのひとつが「育成補償」の問題だ。大学在学中の選手がプロクラブと契約を結ぶ際、それまで選手を育成してきた大学に対して、何らかの補償をすべきではないかという議論は、以前から存在していた。
「そもそも、大学が選手を受け入れるにあたり、しっかりとしたコミュニケーションをとり、在学時にドラフトの対象となった場合にどうするかなど学生との間にミスマッチが起こらないような制度設計が必要。仮にミスマッチがあったとして、それを何で解決するかを考えたとき、やはり何らかの補償のようなものも(必要だろうということは)議論としてある」
しかし、この育成補償の具体的なルールや、プロ側と大学側が交渉する際のプロセスについては、まだ明確に定まっていないのが現状だ。島田チェアマンも、JBAや大学連盟との連携を含め、議論が停滞している部分があることを認め、改善を加速させていきたいと語る。
制度移行期の課題をさらに複雑にしているのが、ドラフト初年度ならではの「特例措置」の存在だ。本来、ドラフトの対象となる選手であっても、「2025-26シーズンの開幕までに2026年6月30日を含むBクラブとのプロ選手契約を開始していれば、ドラフトを経ずにB.PREMIERでプレーできる」というルールが設けられている。これは、ドラフト制度導入前からプロ入りを視野に入れていた選手たちのキャリアプランに配慮した措置だが、一方で新たな問題を生む可能性もはらんでいる。
「もし自分の意中のクラブがあって、そのクラブも声をかけてくれて、行くチャンスがあるとする。数ヶ月後のドラフトでは(加入は)叶わなくなるかもしれない、という状況が選手に迫り、学校内でのコミュニケーションを超越した意思決定が行われるようなことがあった時に、やはりコンフリクト(意見の不一致、利害の対立)が起きる」
自分の希望するクラブへ行ける保証がないドラフトを待つよりも、今のうちに契約を結んでしまおう、と考える選手が出てくるのは自然な流れかもしれないものの、それが大学側にとっては「寝耳に水」の事態となりかねない。チーム構想の根幹を揺るがす選手の突然の離脱は、大学の指導者にとって大きな痛手だ。
島田チェアマンは、こうした選手と大学側のミスマッチが起きないようにすることが重要だと強調する。
「大事なことは、リーグが一方的に物事を進めるのではなく、選手たちともコミュニケーションをとること。そして当然、大学連盟ともコミュニケーションをとることが本当に大事。ドラフトの影響を受けるのは大学界。そこに対してはきちんとコミュニケーションをとろうとやってきた」
この問題は、Bリーグだけで解決できるものではない。選手を育成する大学、日本のバスケットボール界全体を統括するJBA、そしてプロリーグであるBリーグ。三者がこれまで以上に密に連携し、情報共有の仕組みや、交渉のルールを整備していく必要がある。
「Bリーグだけでなく様々な団体が、試合の運営にとどまらず様々な物事を動かしていける団体に成長していくために、バスケット界全体としてどうやって底上げしていくか」と語り、業界全体として、組織のあり方や人材配置を見直す時期に来ているのかもしれないと、島田チェアマンは示唆する。
島田チェアマンはJBAの次期会長候補者となっている。両組織間の連携をこれまで以上にスムーズにし、課題解決のスピードを上げていきたいと考えている。
「(人的、金銭的なリソースを)サステナブルに回していくためにはちゃんとそれぞれの団体の中で価値を作って、少しずつ収入を得て回していくように変えていくことが、バスケットボール界全体の成長をさらに推し進めるためにはより重要なのだろうと思う。サポートは徹底的にしていきたい」
Bリーグにとって初の試みとなるドラフト制度。その導入は、まさに“産みの苦しみ”の真っ只中にある。今回の一件は、制度を前に進める上で避けては通れない課題を浮き彫りにしたとも言えそうだ。
しかし、それは決してネガティブなことばかりではない。現場の指導者の考え、選手の戸惑い、ファンの懸念。そうした一つひとつの声に真摯に耳を傾け、対話を重ねていくことで、バスケットボール界を建設的に発展させていく。
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