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タイのパタヤで行われている車いすバスケットボールの「アジアオセアニアチャンピオンシップス」。大会5日目の12月3日、男子日本代表は予選リーグ第4戦で韓国と対戦した。東アジア最大のライバルを相手に、スタートからビハインドを負い、苦戦を強いられた。後半に向けて勢いに乗る韓国に対し、日本は最後まで流れをつかむことができずに55-67で敗れ、今大会初黒星を喫した。
「韓国戦は、必ず厳しい試合になる」
前日、及川晋平ヘッドコーチはそう語り、警戒心を募らせていた。そして、その言葉どおり、“因縁のライバル”との試合は、相手の“日韓戦”にかける思いがそのままプレーに表れ、日本にとっては苦しい戦いとなった。
第1クォーターから2点のビハインドを負った日本は、第2クォーターで引き離され、25-32で試合を折り返した。しかし、こうした展開は、日韓戦ではそう珍しくはない。昨年のアジアパラ競技大会でも、第2クォーターを終えた時点で8点をリードしていたのは韓国だった。
ところが後半、地力の差が出て逆転劇が起こるのが、これまでの日韓戦だった。ほとんど固定されたメンバーを起用し続ける韓国は体力が消耗され、後半に入ると動きが鈍くなる。そのため、最も大事な最終クォーターでは主力が疲弊しきった状態の中、集中力を欠いた緩慢なプレーが目立ち始めるのだ。
一方の日本は、“全員バスケ”で主力を温存しながら戦うため、後半に向けてギアを上げていくことができた。こうした選手層の違いが、日韓間の実力差を生み、2015年のリオデジャネイロパラリンピック予選以降、日本は韓国に“不敗”を誇ってきた。
だが、この日の韓国のベンチワークは、それまでとは一変していた。第1クォーターから小刻みにメンバーを入れ替え、コート上の5人が常にフレッシュな状態に保たれていた。そして唯一、フル出場したエースのキム・ドンヒョンは今大会も好調だった。アジアトップクラスのシュート力で、次々と得点を重ね、チームをけん引。一人で30得点を叩き出したエースの奮闘もあり、韓国は後半に入っても勢いが衰えることはなかった。
一方、日本はそんな韓国に対しての打開策を見出すべく、様々なラインナップを投入しながら模索する時間帯が続いた。どのラインナップも、ディフェンスに高い意識を持ち、そのチェアスキルの高さは、やはり日本の方が上回っていた。前半を終えた時点でのパーソナル・ファウルが13を数えた韓国に対し、日本はわずか4という数字がそれを物語っている。
今大会で代表に復帰し、及川HCも警戒心を募らせていたベテランのキム・ホヨンに限っていえば、第1クォーターですでにファウルは3つを数え、第3クォーターで5ファウルとなり退場。12分間という短いプレータイムにとどまったことは、韓国にとっては誤算だったに違いない。
しかし、それでも韓国の勢いは最後までとどまるところを知らなかった。それは日韓戦というだけでなく、2000年シドニー大会以来となる悲願のパラリンピック出場にかける思いの強さだったのかもしれない。今大会、男子は開催国枠のある日本を除いて上位3チームに、2020年東京パラリンピックの出場権が与えられる。世界でも強豪のオーストラリア、イランに続く3チーム目には、韓国が最有力視されているのだ。
そんな韓国の勢いを、日本は最後まで止めることができず、今大会初黒星を喫した。
これで予選リーグを3勝1敗とした日本は、大会6日目の4日には、予選リーグ最終戦で昨年の世界選手権銅メダルのオーストラリアと対戦する。
「日本がワールドレベルにいけるかどうかが試される」と及川HC。もともとは高さで勝負していたオーストラリアも、最近では日本と同じようなトランジションバスケに移行しつつあるように見受けられる。だからこそ、ガチンコ勝負になることが予想されるが、指揮官は「日本としては望むところ。そういう展開にもっていきたい」と強気の姿勢を崩さない。
公式戦としては、55-68で敗れたリオデジャネイロパラリンピック以来、実に3年ぶりとなるオーストラリア戦。リオ以降、成長し続けてきた及川ジャパンの真価が問われる。
文・写真=斎藤寿子