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29日、女子日本代表がグループリーグ最終戦のドイツ戦で、残り5分の攻防に競り負ける形で逆転負けを喫した。しかし、3大会ぶりのパラリンピック出場となった日本が、16年リオパラリンピック銀メダル、18年世界選手権3位のドイツを十分に苦しめた試合だったことは間違いない。大健闘の裏には、チームの成長と高い修正能力があった。
日本が今ある力をすべて出し切り、最高のディフェンスを披露したのが、ドイツ戦だったのではなかっただろうか。公式戦、それも世界最高峰のパラリンピックという舞台で、強豪国ばかりとの連戦が続く中、実力を発揮することは、言葉で言うほどそう簡単なことではない。
それは、世界2位のイギリスを見れば一目瞭然だろう。リオ以降、オランダに続く強さを誇り続けてきたイギリスが、今大会はグループリーグで1勝3敗と不振に陥っていることからも明らかだ。
もちろん、負けたという事実は重く受け止めなければならない。40分間で勝ち切る術を知らなければならないことを改めて突き付けられた試合でもあった。残り1分で同点とされ、その後突き放されたのは、ドイツとの地力の差でもあっただろう。
「勝てる試合だった」
「勝たなければならなかった」
試合後、岩佐義明HCをはじめ、選手たちからはそんな言葉が飛び交い、悔しさを吐露する姿があった。しかしその半面、ある意味、達成感も得ていたに違いない。世界3位のドイツを50点台に抑えたのは、日本が世界トップレベルのディフェンス力を持っていることが証明されたからにほかならないからだ。
得意とするプレスディフェンスはもちろん、これまで課題としてきたハーフコートディフェンスにおいても、しっかりと機能していたことが、ドイツを苦しめた最大の要因だった。その証拠に、絶対的エースのマライケ・ミラーに21得点を許したものの、フィールドゴール成功率を32パーセントに抑えている。ミラーは、日本のディフェンスにかなり苦しめられたという印象があるはずだ。
さらにチームの成長を感じさせたのが、ビッグマンにジャンプアップした際、その隙を突いて狙われるローポインターのカットインを許さなかったことにある。これは5人の息の合ったローテーションに加えて、一人ひとりの瞬時の判断力、高度なチェアスキルがなければ成立しない。相当なトレーニングを必要とするものだ。そのディフェンスが、ほぼ完璧に決まっていた。
一方、オフェンスでもダブルスコアに近い差で敗れたカナダ戦から、しっかりと修正されてきていた。特に共同キャプテンの一人、藤井郁美が課題として挙げていたシュートを「打ち切る」ことが徹底されていた。だからこそ、試合序盤はリングに嫌われる時間帯があったものの、それでも積極的にゴールに向かう姿勢はまったく変わらなかった。それが中盤以降、得点を積み重ねられた最大の要因だったはずだ。
「シューターではない選手も含めて、全員が全員、チャンスがあれば迷うことなく打ち切っていたなと感じました。オフェンスの内容としても、自分たちのバスケができた試合だったと思います」と、もう一人の共同キャプテン、網本麻里も手応えを口にした。
最後の第4クォーター残り5分までは、最高の戦いだったと言っていい。しかし勝ち切るためには、その最後の5分が重要だということを突き付けられた試合でもあった。初戦から成長した姿を見せ続けている女子日本代表。さらにレベルの高い戦いが待ち受けている決勝トーナメントで、どこまで自分たちを引き上げていけるかに注目したい。
文=斎藤寿子