2022.08.08

車いすバスケ日本代表の古澤拓也と鳥海連志が著書発売記念トークイベントを開催

著書発売記念イベントで対談した古澤(左)と鳥海(右)
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 8月6日、東京パラリンピック車いすバスケットボール男子日本代表として銀メダルを獲得した古澤拓也鳥海連志のオンライントークイベント・合同記者会が行われた。

 今回のイベントは、古澤の著書『車いすでも、車いすじゃなくても、僕は最高にかっこいい。』(小学館)の刊行を記念したもので、先に『異なれ -東京パラリンピック車いすバスケ銀メダリストの限界を超える思考-』(ワニブックス)を刊行している鳥海とともに発売記念対談を行った。

 チームの在籍期間が長く、「お互いのいいところも悪いところも知り尽くしている」という古澤と鳥海。2人はプライベートでも交流があり、連志・拓ちゃんと呼び合うほどの仲だ。相手に直して欲しいところはあるかと聞かれ、鳥海は「メンタルトレーニングをしてきたから、ありのままを受け入れるようになった」と語りつつ、「拓ちゃんは運転をもっと優しくしてほしい」と暴露し、古澤が照れ笑いする一幕も。

 野球少年だった古澤は12歳で車いすユーザーに。野球ができなくなったことに絶望していたところ、車いすテニスの国枝慎吾氏のプレーを見て、「車いすでもかっこいいんだ!」と感激した経験があったという。「自分の姿やチームメートの姿をみて、かつての自分のように次の世代が『車椅子でもかっこよくなれる』と思ってもらえたらうれしい」と、著書の執筆のきっかけを明かした。

「『車いすでもかっこよくなれる』と思ってもらえたらうれしい」と語る古澤

 中学1年生のときに車いすバスケットボールを始めた鳥海は、「自分が幼少期から障害を乗り越えてきた経験は、きっと参考になる人がたくさんいるはず」という思いがあったそう。鳥海のルーツが詰まった著書について、「僕の本というより、僕を育てた母の本」と語った。

 鳥海の著書を発売前から予約していたという古澤は、「上昇志向に刺激を受け、アスリートとしても元気をもらえる本だった」と絶賛。「チャレンジをしなさい」という母のスタンスなど、鳥海家との意外な共通点が見つかったという。「2冊通して読んでもらうと、今壁にぶち当たってる人や子育て中のお父さんお母さんの参考になるのでは」と“2冊買い”を推奨した。

 一方、鳥海は古澤の著書を読んで「同じ競技をやっているけど、違う障害を持っているというのがパラスポーツならでは。とはいえ、日常にも違う個性を持った人がたくさんいる。それが自分たちの場合は障害というだけ。障害に対して自分は理解があるけど、ほかの部分では気づかない部分もあるかもしれない。自分の先入観や固定概念は打ち壊したほうがいいと拓ちゃんの本を読んで思ったし、そう思うきっかけになるんじゃないか」と語った。

自身の著書について「僕の本というより、僕を育てた母の本」と語る鳥海

 また、自分のプレー映像を見ることがあるのかという問いには「こそばゆくて見れない」と鳥海。分析のために見ることはあっても、オフではあまり見ないのだそう。古澤も「自分のプレーを実際の自分の目を通して見るのと、動画で見るのとでは乖離がある気がする」として、プライベートでは野球、サッカー、バスケの順に見ると意外な趣味を明かした。

 イベントの最後に、今後の展望を問われた2人。鳥海は選手でありながらも「大会を主催したい」と抱負を語り、古澤は「今後の車いすバスケットボール界の革新のため、発信力を高めていきたい」と語り、9月に鳥海や後輩世代が出場するU23の世界大会の優勝に期待を寄せた。

 会見後の囲み取材では、「パラスポーツという枠を超えて、車いすバスケットボールを1つのスポーツやエンタメとして、サッカーや野球のような存在に押し上げていきたい」(古澤)、「東京パラリンピックで競技性はアピールできたと思うので、音響や照明を盛り込んで演出部分でも楽しめるようになれば」(鳥海)とそれぞれが車いすバスケットボール界の未来を語った。

笑顔で会見を終えた鳥海(左)と古澤(右)

 それぞれの著書をどんな人に読んで欲しいかという質問に古澤は、「障がいのある子どもやその親御さんに向けて書きました。でも、今悩みを抱えている人にも現状を打破するきっかけを与えられる本になったと思います」と語ると、鳥海は「若い世代が自分たちの個性を認めあえる社会を作る手助けになるはず。これを読んで、子どもたちがもっと障害を個性の1つとしてフランクに捉えるようになってくれたら」とアピールした。

 2人の著書『車いすでも、車いすじゃなくても、僕は最高にかっこいい。』と『異なれ -東京パラリンピック車いすバスケ銀メダリストの限界を超える思考 -』は全国書店、オンラインブックストアで発売中だ。