2019.05.20

【FIBAワールドカップ対戦国情報】トルコ「W杯5大会連続出場。世界舞台で安定した成績を誇る欧州の強豪」

ワールドカップでは2010年に銀メダルを獲得した実績を持つトルコ [写真]=fiba.com
スポーツライター。『月刊バスケットボール』『HOOP』編集部を経て、2002年よりフリーランスの記者に。国内だけでなく、取材フィールドは海外もカバー。日本代表・Bリーグ・Wリーグ・大学生・高校生・中学生などジャンルを問わずバスケットボールの現場を駆け回る。

Bリーグが終了すると、いよいよ8月31日開幕するFIBAワールドカップ(以下W杯)に向けた準備が徐々に始まっていく。日本が13年ぶりに出場するW杯には32チームが出場。その中から日本が予選リーグで対戦するトルコ、チェコ、アメリカを対戦順に紹介していきたい。今回は近年世界の強豪に成長したトルコ(FIBAランキング17位)を紹介する。

文=小永吉陽子

実績を残した世代と若手との融合が順調に進行

NBAでも活躍するアーサン・イリヤソバは現在でもトルコ代表のゲームに出場する [写真]=fiba.com

 2002年大会から5回連続でW杯に出場。そのうち、初出場の2002年を除いて4大会連続でベスト8以上に進出し、2010年には銀メダルを獲得しているヨーロッパの強豪だ。W杯予選ではスペインに次ぐグループ2位(8勝4敗)となり、Window5終了時には出場権を獲得している。

 トルコを語るに欠かせないのは2010年に自国で開催したW杯だろう。決勝トーナメントではフランス、スロベニア、セルビアといったヨーロッパのライバルを次々に撃破して決勝に進出。アメリカとの決勝では、1万5000人を集めた大観衆の中で選手とファンが団結して国歌を大合唱した姿は、近代W杯史において忘れられないシーンだ。
同大会でトルコが準優勝へと躍進した理由は大型選手育成を軸とした長期強化が実ったから。特に、現在40歳の若さながらトルコ協会の会長に就任しているヒディヤット・ターコグル(元オーランド・マジックほか/208センチ)が全盛期を迎え、躍進を見せたことは印象深い。

 2010年の財産は今に受け継がれており、当時は若手だったアーサン・イリヤソバ(208センチ/31歳/ミルウォーキー・バックス)、ビッグマンのセミー・エルデン(210センチ/32歳/元NBA選手)らが主軸となり、大型で動ける選手の育成こそがトルコのスタイルを継続させている。

 今回のW杯予選でもオフシーズンのWindow3と4にはNBA選手が出場。イリヤソバ(2ゲーム)、ジェド・オスマン(200センチ/23歳/クリーブランド・キャバリアーズ/4ゲーム)、フルカン・コルクマズ(200センチ/21歳/フィラデルフィア・セブンティシクサーズ/4ゲーム)を招集し、3人とも攻防の主軸となって働いた。2017年のユーロバスケット(ヨーロッパ選手権)で初優勝を遂げたスロベニアとは予選で同組だったが、スロベニアがゴラン・ドラギッチ(マイアミ・ヒート)やルカ・ドンチッチ(ダラス・マーベリックス)らNBA選手を送り込まずに出場権を逃した状況を考えれば、NBAクラスの選手が代表チームと連携を取っていることが、トルコの強さの秘訣といえるだろう。

 ウフク・サリチャヘッドコーチは「私たちは若手の移行期ながら、W杯予選を通して若手が経験を積んだ」と手応えを語っている。その若手とは23歳のオスマン、21歳のコルクマズらのNBA組と、2018年にアメリカから帰化した得点力あるポイントガード、25歳のスコッティ・ウィルベキン(2018年ユーロカップでレギュラーシーズン&ファイナルMVP)らだ。代表歴の浅い彼らが主軸として浮上し、代表チームのシステムに慣れたことは収穫だろう。

またトルコといえば、ヨーロッパの中でもプロリーグが盛んなことも見逃せない要素だ。フェネルバフチェ、アナドル・エフェス、ガラタサライをはじめ、Bリーグの三遠と姉妹クラブ提携を結んだベシクタシュなどのビッグクラブが、ユーロリーグやユーロカップなどで競い合っている。こうしたヨーロッパ内で揉まれる環境により、経験値と厚い選手層を兼ね備えているのだ。

 なお、NBA選手のエネス・カンターは国籍剥奪問題のため代表ではプレーしておらず、オメール・アーシックは負傷を抱えて長期離脱中であることから、W杯本戦には出場しない見込みだ。  

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