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そのうちの一人が谷村里佳。トライアウトと同日に行われたドラフト(6月)では全体で1位指名を受けて新韓銀行S-birdsへと加入した。
谷村は筑波大学卒業後、シャンソン化粧品シャンソンVマジックに入団。その後、日立ハイテククーガーズ、そして再びシャンソンと計7シーズン、Wリーグでプレーした。
昨シーズンは活躍の場をドイツ(ブンデスリーガ)へと移したが、開幕前にヒザの大ケガを負い、リハビリに専念することに。そして復帰となる今シーズン、様々な選択肢の中からWKBLでの挑戦を決めた。
10月28日、新韓銀行の開幕戦(vs.ウリ銀行ウリWON)は、谷村にとっても公式戦での復帰初戦となったが、この試合でスターターとして出場を果たすと、16得点10リバウンド4アシストをマーク。プレータイムも26分30秒だった。
続くKBスターズとの一戦でも32分50秒の出場で22得点6リバウンドと奮起。3戦目のハナ銀行戦も28分9秒出場すると(7得点6リバウンド)、チームにとって待望のシーズン初勝利となった4戦目、サムソン生命ブルーミンクスとの試合では25分11秒の出場で9得点5リバウンド4アシストと、勝利に貢献した。
サムソン生命との試合後、「良かったです」と、初白星に安堵の表情を浮かべた谷村は、復帰戦となった開幕戦についてこのように振り返った。
「(開幕戦で)ダブルダブルの数字を残せるとは思っていませんでした。その試合では個人技で点を取ったというよりは、走りの中からやたまたまラッキーボールが来てといった形で点を重ねたので、ラッキーなところもあったと思います。でも、個人的には復帰明けの試合で初の韓国でのダブルダブルは、『体が戻ってきたらもっともっといけるな』とも感じたので、すごく自信になりました」
大ケガからの復帰ということでプレータイムに制限があり、第1ラウンド(最初の5試合)は1試合25分が目処だった。話を聞いたときは4試合を終えたところだったが、すでにどの試合も25分以上の出場で、接戦となったKB戦では30分越え。それだけに少し飛ばし過ぎなのではないかとも感じたが、谷村本人は「いや、(ヒザの)ケガをしてから1年以上開いていて、すごく時間をかけて復帰ができました。トレーニングなどリハビリの期間を結構もらえたことで問題なくできています」と、言う。
谷村はセンターというポジションもあり、「外でもらって1対1を仕掛けるというよりかは、ピックを使ってズレを作ってシュートといったように、ボールをもらってから自分でどうにかすること」を得意としている。そのため、谷村へのパスというのもポイントになってくるが、「私はパスが入ると思っていても出す側は難しいと判断するときもあるので、今後もそこはコミュニケーションを取りながら練習を重ねていきたいと思います」と、語る。
チームメートは初めて一緒に戦う選手たち。なおかつ谷村自身も実戦復帰から間もないのだから無理もないだろう。合わせのプレーやチームプレーの精度は、シーズンを戦いながら高めていくことになりそうだ。
新韓銀行はサムソン生命に勝利した日、試合前に健康上の理由によりグ・ナダン監督からコーチだったイ・シジュン氏が監督代理を務めることを発表された。そのため、シーズン初勝利の日は新指揮官の初陣の日でもあった。
「(イシジュン監督代理は)韓国のプロリーグで(選手として)やられた方。ポイントを分かっているというか、(前監督と同じく)意見も言いやすいです」と、谷村は言う。実際にサムソン生命戦でも試合終盤、メンバーチェンジのタイミングに疑問を持ったことで、谷村はその理由を聞きに行ったとそうだ。
「やっぱりそこはちゃんとコミュニケーションを取りながらやっていきたいです。『どうしてですか?』という問いのフィードバックはあって、理由もちゃんと教えてくれます。私自身も聞いた方が納得するので、言葉が通じなくても積極的に聞くようにしています」(谷村)
同じバスケットでも所変わればスタイルも変わる。ただ、試行錯誤の日々ではあるものの、この大きなチャレンジには「充実しています」と、谷村は笑顔を見せる。チームのチーフマネジャーで通訳を務める黄美憂(ファン・ミウ)さんは大学まで日本でプレーしており、そうした日本のバスケットも知るスタッフの存在も大きい。「チームの施設もいいし、異国ですが不自由なくやれていて、オフもリフレッシュしながらバスケットができています」と、語る。
6チームが6回総当たりで戦うレギュラーシーズン。出場した6試合で1試合平均で12.33得点4.8リバウンドをマークする谷村は、リーグ優勝7回を誇る名門チームの反撃に必要な選手だ。チームの、そして彼女の今後の巻き返しに期待したい。
文・写真=田島早苗