2024.09.12
全米大学体育協会(NCAA)の「ビッグテン」というハイメジャー・カンファレンスに所属するネブラスカ大学で、強豪相手に伸び伸びとプレーし、チームを勝利に導いていた富永啓生が、プロとして初の試合で大学時代と変わらぬ姿を見せた。
「久しぶりにこうやって、またバスケの試合をしてすごく楽しかった」
試合後、富永は、ほっとした様子で話した。
Gリーグの有望選手を集めた「NBA Gリーグ・ユナイテッド」とセルビアのメガMISとの『NBA Gリーグ・フォール・インビテーショナル』第1戦で、チームで唯一Gリーグの経験がない選手でありながら、3本のスリーポイント成功を含む14得点し、99-81で勝ったチームに貢献。
「シュートが決まったことはもちろん良かったですし、他のディフェンスのところでもアグレッシブにできたところが良かった」と富永は晴れやかな表情だった。
第2クォーターのスタートから出番を得ると、22-22の開始1分半に右ウィングから3ポイントを決め、プロ初得点。続いてバンクショット、同中盤には速攻から利き腕ではない右手でリバースレイアップを決め、「右手で打つことは、この夏ずっと練習してきました。それが功を成した」と胸を張った。
それだけでは止まらない。同終盤にはジャブステップから放った3ポイントが大きな弧を描いてリングを通り、2点リードが5点リードに広がった。「ドライブできるところも見せたので、僕がジャブステップをすると(ディフェンダーは)ステップバックしなければならず、スペースができる」と満足感を噛みしめた。
第2クオーターだけで8分16秒プレーし11得点した富永は、第4クオーターにもジャブステップでディフェンダーを後退させて3ポイントを成功し計14得点。ロングパスなど上手いパスを披露し、味方がリバウンドを奪うと先頭を切って走り、しっかりと足を使ってディフェンスに臨んだ。
“ルーキー”の果敢な戦いぶりに2022年のゴールデンステート・ウォリアーズ優勝メンバーでもあるホワン・トスカーノ・アンダーソンは、「啓生はアメージングだった。誇りに思う。彼は向上し続けるだけだ。ハイレベルでプレーできるから、これからも彼が上達するように後押しするよ」。そう話している途中で、次に会見を受ける選手として現れた富永に気づき、照れ臭そうに笑った。
約1カ月前は、3試合で8分の出場となったパリオリンピックを終えたところだった。だが、そんなオリンピックも「プレーイングタイムが少なかったとはいえ、ハイレベルなところを間近で見ることができましたし、すごくいい経験でした。やっぱりあの経験というのは大きく生かされていると思います」と改めて振り返った。
会場にはNBAのスカウトもつめかけていた。そういった場所でプロとして初めて迎えた試合も「すごく楽しみにしていた」と興奮しかなかった様子で、幸先の良いスタートを切れたことに「自信につながります」と言いながらも、「まだまだ成長できるところもたくさんありますし、成長しないといけないところもたくさんあります」と先を見据えた。
富永がメディア対応していると、チームメートが「ナンバーワン!」と叫びながら、通り過ぎていった。GリーグというNBAに一番近い場のレベルの高さや競争の激しさを身をもって知っているチームメートから富永に向けて発せられた言葉だ。
そして、「啓生のことが大好きだ」とつけ加え、目を細めた。
チームが集合して11日目。レンジャーカレッジでも、ネブラスカ大でもそうであったように、富永は「自分の武器」である3ポイントシュートを通して、すぐにチームメートからのリスペクトを得ている。
だが、活躍すれば、次に乗り越えなければならない壁が高くなることは、富永もわかっている。
「(今日は)ジャブステップとかでスペースをクリエイトすることができたので、そこは良かった部分だと思いますが、今度はスリーをもっと警戒してくると思うので、ドライブに行けたりしたら、またいい方向に行くと思っています」。
7日(現地時間6日)に行われる次戦に気持ちを切り替えた。
文=山脇明子
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